カルティエと日本が歩んできた50年の軌跡、『結 MUSUBI』展 完全ガイド

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カルティエと日本が歩んできた50年の軌跡、『結 MUSUBI』展 完全ガイド

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 「カルティエ(Cartier)」が日本に上陸して今年で50周年。アニバーサリーイヤーを記念して、「カルティエと日本 半世紀のあゆみ 『結 MUSUBI』展 ― 美と芸術をめぐる対話」が、上野の東京国立博物館・表慶館で7月28日まで開催されています。開かれた精神と好奇心、独創的なクリエイションで人々を魅了し続ける世界的ジュエラーと日本の知られざる結びつきから開幕を祝福したゲストの装いまで――。注目の展覧会の見どころを紹介します。 

Architecture:館の構造を活かした2部構成

Imaged by Cartier

 展覧会の会場となったのは100年以上の歴史を持つ表慶館。明治末期、建築家・片山東熊により建てられたネオバロック様式の歴史的建造物は、国の重要文化財にも指定されています。展覧会は館の特徴でもある左右対称の構造を活かし、建物右側に位置する第一部では、「カルティエと日本」、左側の第二部では「カルティエ現代美術財団と日本のアーティスト」を紐解く二部構成で、を紐解く2部構成で、メゾンと日本を結ぶさまざまなストーリーを多面的に伝えます。内装は世界中の美術館や展覧会のデザインを手掛けてきた「スタジオ アドリアン ガルデール(Studio Adrien Gardère)」が担当。日本文化と美学に対する敬意と、表慶館の伝統的な意匠への称賛を反映させ、セクションテーマに沿う素材選びやデザインで、一つ一つの展示作品を際立たせています。

Right Wing:日本がカルティエにもたらした影響

Room 1 

Imaged by FASHIONSNAP

 正面右のセクションでは「カルティエと日本」をテーマに、アーカイヴピースや文献を通して、伝統的な形状や紋様といった物質的なモチーフから、日本人に根付く精神性まで、日本がいかにカルティエのクリエイションに影響を与えてきたかを浮かび上がらせます。

 最初の部屋では1898年からメゾンの事業経営に参画し、美術品のコレクターとしての一面も持ち合わせていたルイ・カルティエが収集した200点以上に及ぶ日本美術のコレクションから着想を得て制作されたピースを展示。そのなかには神社の建築を想起させるミステリークロックをはじめ、印籠の形をしたヴァニティケース、結び目や染めに用いる際の型紙の波模様や鱗模様のブローチといった貴重なコレクションから、小紋柄をフェイス部分にあしらった今年発表されたばかりの新作ウォッチまで、100年以上前から日本の伝統的なモチーフがカルティエのクリエイションに影響をもたらし続けていることがわかります。

Image by FASHIONSNAP

Image by FASHIONSNAP

Room 2

 カルティエの重要なインスピレーション源の一つでもある動植物。メゾンが独自に生み出してきたフォルムの探究は、自然を賛美する日本の美学からの影響が大いにあるといいます。亀や鳥、トンボや蝶、そして日本古来の藤の花においてはメゾンのレパートリーとして繰り返し登場するモチーフです。ここでは杉本博司の「春日大社藤棚図屏風」(2022年)を囲うように、自然界から着想を得たジュエリーが展示されています。

Imaged by FASHIONSNAP

Image by FASHIONSNAP

Room 3 

 階段を上がった2階の部屋では、これまでカルティエが5度にわたり日本で開催してきた展覧会を遡りながら、メゾンと日本の関係性を掘り下げています。1988年、表参道のスパイラルホールで行われた展覧会を皮切りに、1995年の東京都庭園美術館、2004年の京都・醍醐寺に続き、2009年は同じく表慶館で「Story of... カルティエ クリエイション~めぐり逢う美の記憶」展が開催。さらには2019年、国立新美術館での「カルティエ、時の結晶」展も記憶に新しく、その時代に沿うコンセプトや展示方法で多くの人にメゾンの魅力を伝えてきました。ここでは、それぞれの展覧会を象徴する「カルティエ コレクション」所蔵の貴重なピースが日本に再集結しています。

Imaged by FASHIONSNAP

Image by FASHIONSNAP

Room 4

 右セクション最後の部屋では、原宿のパレ・フランスに日本初のブティックをオープンした1974年から、カルティエの日本での歩みを当時の出版物やキーパーソンへのインタビュー動画、メゾンのアイコンジュエリーやウォッチを題材にした日本人アーティストたちとの協業作品、日本独自のプロジェクトを振り返ります。なかには、2017年にタンク ウォッチ100周年記念で香取慎吾が描き下ろしたアート作品や、2022年に「サカイ(sacai)」の阿部千登勢によって新たに解釈された「トリニティ」コレクションなども見ることができます。

Image by FASHIONSNAP

Left Wing:カルティエ財団により広がるアーティストコミュニティの輪

Rotunda 2F

 2階の右側と左側を繋ぐブリッヂ部分には、画家の横尾忠則が日本人アーティストを中心に描いた20点のポートレートシリーズが展示。カルティエ現代美術財団(以下、カルティエ財団)が長年にわたりコラボレーションしてきたアーティストたちを横尾独自の視点で描き上げています。2014年から続くプロジェクトに今回新たに3点の作品が加わり、カルティエ財団が日本人アーティストと築いてきた"コミュニティ"の広がりそのものを表しています。

 1984年に非営利団体として設立されたカルティエ財団は、アーティストの発掘・再発見を目的にこれまで数々の日本人アーティストの発表の場と機会を提供してきました。駆け出し時や国外で活動したことのないアーティストの作品、すでに名の知れたアーティストの新たな一面を紹介し、展覧会の支援、コミッションワークの制作依頼、作品の購入といった、アートとアーティストの価値を高め、社会と繋げるプラットフォームとしての役割を担ってきました。

Image by FASHIONSNAP

Room 5

Imaged by FASHIONSNAP

 カルティエ財団が考える芸術分野は多岐にわたり、写真、絵画、建築、彫刻、映像といった作品のほか、ファッションの領域にも広がりを見せます。1998年にカルティエ財団によりパリで開催されたデザイナー三宅一生の「Making Things」展では、衣服のフォルムがいかに刷新・再発明されるかという視点を提示し、脚光を浴びました。ここでは「一枚の布」という「イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)」の服づくりのコンセプトを表現したインスタレーションや、「プリーツ プリーズ イッセイ ミヤケ(PLEATS PLEASE ISSEY MIYAKE)」のデビューシーズンとなった1994年春夏コレクションのピースが並びます。

Image by FASHIONSNAP

Room 6

 写真にフィーチャーした部屋では、カルティエ財団と継続的な関係を築いてきた日本写真界の巨匠である荒木経惟、森山大道、杉本博司の3名の作品をはじめ、川内倫子の232枚の写真を組み合わせたスライドショーや巨匠 ウィリアム・エグルストンが切り取った京都の風景などの写真作品が展示。1階と2階を繋ぐ左右の階段にはそれぞれ、現代美術家 束芋によるビデオインスタレーションが映し出されています。

Image by FASHIONSNAP

Room 7

 北野武もカルティエ財団と縁の深い現代アーティストの一人。自由な概念により生み出されるカラフルで独創的な作品からは、芸人や映画監督など多彩な分野で活躍してきた北野武のアーティストとしての一面を垣間見ることができます。ここでは新作を含む2018年から2023年に制作された絵画が展示。

 また、左右の小部屋では、1から9の数字が回転しながら暗闇の中に浮かび上がり時間と無限空間を表現した宮島達男のインスタレーションや、森山大道のモノクロ作品を2冊の本に見立てたスライドショーが没入感のある展示方法で公開されています。

Image by FASHIONSNAP

Room 8

 幅広い芸術表現を持つ北野武の創作対象は絵画だけに留まらず、彫刻オブジェや、分野を越え、数学ゲームを考案するといったユニークなアイデアまで広がります。その多くがカルティエ財団とのプロジェクトの中で生み出された作品であり、創作の自由を提供するカルティエ財団とその機会を忌憚なく活用する芸術家が育んできた絆の深さを物語っているかのよう。

 カルティエ財団では北野武のほか、現代アーティストの村上隆や松井えり菜、建築家 石上純也の個展開催や、書籍の出版といった芸術家に必要な活動を支援してきました。展示棚に並べられた作品や書籍は、カルティエ財団とアーティストとの尽きることないクリエイティブな対話がこれからも継続的に続いていくことを示唆しています。

Image by FASHIONSNAP

Rotunda 1F

 展覧会の入り口でもあり、出口でもある左右を繋ぐ円形広間の一面に展示されているのは、本展のために制作された現代アーティスト澁谷翔の作品「日本五十空景」。彼もまたカルティエ財団のコミュニティに今回新たに加わったアーティストの一人。カルティエ財団との出会いのきっかけはインスタグラムだったという澁谷は、今回の制作にあたり、歌川広重の「東海道五十三次之内」を着想源に、変わりゆく時代のなかで今も昔も共通する「空の景色」に着目します。広間を飾る50点からなる一連の作品は、約1か月にわたって訪れた47都道府県の空の景色を描き出したもの。それを1点ずつ各地方新聞の一面に掲出するという壮大なプロジェクトは、朝昼晩と過ぎゆく時間の移ろいを儚い色彩で描き出し、過去、現在、未来といった展覧会のテーマにも通づる連続性を表現。本展を構成する2つの並行するストーリーを「結ぶ」役割を果たしています。

Imaged by Cartier

ここでしか手に入らない限定グッズも

 ミュージアムショップでは、展覧会を記念した特別グッズが登場。澁谷翔による淡いピンクとブルーのグラデーションをバックに、グラフィックデザイナー野間真吾が手掛けた「結」のタイポグラフフィーがモダンにデザインされた展覧会のメインヴィジュアルがプリントされたトートバッグ(3960円)をはじめ、ノートブック(1650円)やポストカード(220円)、図録(5000円/いずれも税込)などが販売され、展覧会の余韻に浸ることができます。

 

Image by FASHIONSNAP

 そして会期中、入り口付近では祝休日限定で「カルティエ ワゴン」が登場。「YOUR STORY with Cartier」の取り組みのひとつとして、ご自身とカルティエにまつわるエピソードを投稿すると、絆の証をして花が贈呈される特別なイベントを開催しています。

カルティエの輝きに身を包んだ豪華ゲストたち

 約1ヶ月にわたる展覧会の開幕に先立ち、6月10日にオープニングイベントが開催されました。会場には北野武、松嶋菜々子、香取慎吾、鈴木保奈美、江口洋介、戸田恵梨香、賀来賢人といったカルティエと縁のあるセレブリティや参加アーティストなどが、華やかなメゾンのウォッチやジュエリーをまとって来場。展覧会の開催を祝いました。

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左から北野武、カルティエ現代美術財団インターナショナル ディレクター エルベ・シャンデス(Hervé Chandès)

Image by Cartier

◾️カルティエと日本 半世紀のあゆみ 『結 MUSUBI』展 ― 美と芸術をめぐる対話
会期:2024年6月12日(水)〜7月28日(日)
休館日:毎週月曜日、7月16日(火) *7月15日(月・祝)は開館
開館時間:9:30〜17:00、金・土曜日は〜19:00(入館は閉館の30分前まで)
会場:東京国立博物館 表慶館
所在地:東京都台東区上野公園 13-9
主催:東京国立博物館、カルティエ
特別協力:カルティエ現代美術財団
後援:在日フランス大使館、アンスティチュ・フランセ日本
会場デザイン&構成:スタジオ アドリアン ガルデール
観覧料:一般 1500円、大学生 1200円(オンラインチケット
*高校生以下、障がい者とその介護者1名は無料。入館の際に学生証、障がい者手帳等を提示。
問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)

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