2023年のビューティを振り返る。最後となる第3回はコスメデコルテの好調をけん引した“大谷効果”や、M&A、話題のブランドの日本上陸について。さらにメンズコスメの潜在ニーズにアプローチする動きや大手企業のサステナブルの進捗をピックアップする。
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“大谷効果”
2023年の大きな話題の1つは、大谷翔平選手の活躍だろう。その“大谷効果”はビューティ業界にも及んだ。コーセーは大谷選手とグローバル広告契約を締結し、元旦に全国紙および地方紙で広告を公開。雪肌精では大谷選手が紫外線対策を呼びかけた日焼け止めの広告ヴィジュアルやテレビCMを展開した。コスメデコルテは、大谷選手を起用した人気保湿美容液「リポソーム アドバンスト リペアセラム」のテレビCMの放映などで発信を強めた。時期を同じくして「ワールドベースボールクラシック2023」で大谷選手の活躍もあり、日本が優勝すると、その翌日の百貨店の新規購入数が通常時の3.6倍を記録。公式オンラインブティックでの販売個数は通常時の約20倍という飛躍的な数字を叩き出した。また主要百貨店での男性購入者が通常の7.5倍に伸長するなど、大谷選手を起用したことで新客および男性からの注目が高まった。
コスメデコルテの広告ヴィジュアル
M&A
仏ロレアルの「イソップ(Aēsop)」のM&Aは業界で大きな注目を集めた。この買収には複数の企業が関心を示し、海外メディアの報道によるとプーチ(PUIG)やLVMH モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン、クラランス(CLARINS)などが浮上していた。今回の買収額25億2500万ドル(約3352億3000万円)は、昨年のエスティ ローダー カンパニーズ(ESTEE LAUDER COMPANIES)による「トム フォード(TOM FORD)」の買収額に次ぐ高額の評価だった。
またケリング ボーテ(KERING BEAUTE)が、高級フレグランス「クリード(CREED)」を傘下に収め、これにより世界的な販売網を活用することで、フレグランスカテゴリーにおけるフランチャイズの発展に向けた基盤を構築し、中国とトラベルリテール展開を加速するという。日本では、川辺がクリードの日本における独占輸入販売権を取得。伊勢丹新宿店にショップをオープンしたのを皮切りに拡大を図っている。さらにドイツの投資グループ アウレリウス(AURELIUS)が「ザボディショップ(THE BODY SHOP)」の買収を発表した。
クリード
またグローバルではスキンケアやダーマコスメブランドなどがM&Aの対象に。資生堂は資生堂アメリカズCorp.を通じて、DDG Skincare Holdings LLC(米国・ニューヨーク州)を買収し、皮膚科学をベースとしたプレステージスキンケアブランド「Dr. Dennis Gross Skincare」を取得すると発表。花王は子会社の花王USAと花王オーストラリアとともに、プレミアムスキンケアブランドを有するオーストラリアのボンダイサンズ社を買収した。ロレアル(L'OREAL)はデンマーク・コペンハーゲンを拠点とするプロバイオティクスおよびマイクロバイオーム研究の大手ラクトビオ社(Lactobio)を傘下にした。
海外ブランドの日本展開
2023年も多くの海外ブランドが日本に上陸した。「ビューティ振り返り第2回」でも紹介した、「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」のビューティラインの日本での販売が始まったほか、2024年2月に発売する「プラダ ビューティ(PRADA BEAUTY)」のメイクアップアイテムや、日本展開未定の「ラバンヌ(Rabanne)」のメイクアップコレクションは販売が待たれるブランドだ。
また若年層を中心に人気の韓国ブランドの日本展開も相次いだ。大手化粧品メーカーアモーレパシフィックは、ラグジュアリーコスメブランドでBLACKPINKのジェニーをグローバルブランドアンバサダーに起用する「ヘラ(HERA)」やスキンケアブランド「エストラ(AESTURA)」が日本での展開を開始した。そのほかセブンティーン(SEVENTEEN)」のリーダー・エスクプス(S.COUPS)がブランドアンバサダーを務める「サムバイミー(SOME BY MI)」や、スキンケアブランド「クオカ(kuoca)」が上陸。コスメブランド「トニーモリー(TONYMOLY)」と、メイクアップブランド「ミュード(mude.)」は、日本市場での拡大を目指し伊藤忠商事が日本における独占輸入販売権を取得した。
ヘラ
一方で日本での事業を終了するブランドも。エスティ ローダー カンパニーズのメイクアップブランド「トゥーフェイスド(TOO FACED)」は日本撤退を決めた。またポーラ・オルビスホールディングスは、化粧品事業におけるブランドポートフォリオの改革の一環で、子会社ACROで展開する「アンプリチュード(Amplitude)」と「イトリン(ITRIM)」を終了した。
メンズコスメが潜在ニーズにアプローチ
2023年はコロナ禍から引き続き、メンズコスメに注目が集まった年だった。スキンケアはもちろん、K-POPアイドルへの憧れから若年層を中心にカラーアイテムを購入する男性も増加した。富士経済によるとメンズコスメ市場は、2022年に1583億円となり、2024年には1655億円まで拡大する見通しだという。三越伊勢丹は、化粧品オンラインストア「ミーコ(meeco)」内にメンズコスメサイトを立ち上げ、阪急メンズ大阪はメンズビューティ売り場の改装オープンに伴い売り場面積を約1.4倍に増床しするなど、大手百貨店も高まる需要に期待を寄せる。
そんな中で2023年は、大手化粧品メーカーが男性コスメの潜在ニーズにアプローチする動きも見られた。カネボウ化粧品のグローバルメイクアップブランド「ケイト(KATE)」は、メイクを通じて自分らしさを学ぶ授業「ケイト スクール」を開講し、東京都江東区の嘉悦学園 かえつ有明中・高等学校と、愛知県立愛知商業高等学校で実施した。女性学生だけでなく男性生徒も参加し、積極的に化粧をする姿が見られたという。また資生堂は、企業・学校・地方自治体などに向けたメンズメイクセミナーを新設。自身の魅力や好感度を高める"自己プロデュース"の手段の一つとして「メンズメイク」の方法やその効果を伝えることを目的とし、千葉県柏市の高校生など13人を対象に実施した。
ケイト スクール第2回
サステナビリティ活動の進捗
化粧品業界でも原料の見直しや製品用機のリニュアルなど、サステナブルな取り組みが広がる中、2023年も大手企業が協力し合う動きが見られた。資生堂は、プラスチック製容器の新たな循環型プロジェクト「ビューリング(BeauRing)」を2月に立ち上げ、ポーラ・オルビスホールディングスの「ポーラ(POLA)」ブランドが参画。収集した使用済みプラスチック製容器を再生資源としてリサイクル処理を行い、新たなプラスチック製容器を再生する。将来的には収集から再生までの一連のスキームのプラットフォーム化を目指す。コーセーは花王と新たな活動をスタート。両社の役目を終えたメイクアップ化粧品(アイシャドウなどの色のついた粉体のメイクアップ化粧品) を、アップサイクルした絵具などの色材を製造・販売するモーンガータとの協業により、水性ボールペン「スミンクアートペン(SminkArtペン ※仮称)」に生まれ変わらせた。2024年以降、コーセーと花王が実施するイベントへの提供を予定している。
ビューリング(BeauRing)で回収する製品容器
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