【選書】ここだけで知れる、福永さんだから選べる3冊
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仕事を辞めたい、転職したい人に読んでほしい本
「働くことの人類学」松村 圭一郎、コクヨ野外学習センター
会社とか自営業にこだわらず、どんな働き方の人も面白く読めるんじゃないでしょうか。「人類学」と聞くと、堅苦しく感じるかもしれないけど大丈夫。というのも、文化人類学の学者さんはみなさんフィールドワークで、民族の暮らしに入り込み、それらを通して価値観やお金のシステム、人間関係などを詳らかにしていくんですが「日本の慣習とは全く異なった生き方をしている民族の生活を体験してきた人たちが対談している本」だと思ってください。元々ポッドキャストだったものが書籍化されているので読みやすいですよ。
私はこれを読んで「本屋さん、未経験だけどできるかな?」という不安を払拭できました。本の中で、狩猟採集、農耕で生活し、常に拠点を移動しながら生活している民族が出てくるのですが「将来がどうなるかわからない不確実性が高い社会で生きているからこそ、⚪︎⚪︎のために働くと言う考え方をしない・できない」という話に発展していきます。日本ではよく「老後のため」とか言いますが、未来が想像できない彼らは、今「いいことがありそう」と思うことをやってみる。いまやっている仕事そのものを報酬だと思える生き方をするためには、「いつでもそれをやめていいと思える状態を保つことが大切」という話に至ります。それは「諦め」とは呼ばず、「なんとか食っていける」という状況を常に作っておくことこそが、今に着眼して生きる生き方のセーフティーネットになり得る、と。自分が本屋さんになろうと決めた時、これを読んで「自分が食べていけるだけ」を想像したら、案外できそうだなと思えました。
日本では、義務教育を受け、大学を卒業し、就活することが定石ですが「単線的な時間観で右肩上がりの直線を目指すのが人生だ」と無意識に思い込んでいたなとハッとしました。「こういう40代になるぞ」といった、未来の目的に対して今の在り方を決めるような生き方ではなく、今働いていることそれ自体を目的とするという考え方もあるんだと思います。そういう生き方をしている人たちが実在している、という説得力がこの本のミソですね。今思えば、私が就活を頑張れなかったのも「大学最後の半年を就活に捧げるのは、なんかちょっと勿体無い気がする。今しかできない楽しいことを、将来のために捧げたくない」と考えていたからなのかもしれません。
本を読むことが苦手な人に向けた素敵な読書体験
「わたしとあなた 小さな光のための対話集」
私の個人的な感覚ですが、本が読めない時って集中力が持たなくて本に入り込めないことがほとんどだと思うんです。そういう時、私はノンフィクションで、且つぶつ切りで読める日記や対談集を手に取ることが多いです。これも対談集なのですが、一人一人の対談が長くないので、ラジオを聴いている感覚で読めるし、興味があるところだけ読めばいいと思います。
私のおすすめは、武田砂鉄さんとのページ。社会におけるコミュニケーション能力についてなのですが、武田さん節が炸裂していて、何度も頷きながら読みました。
ここでの「コミュニケーション能力」とは、その場の最適解を出すことになっていて、そこに自分の意見や意思はあるのか?という指摘です。たしかに、社会に出ると、結論から話すようなテクニックばっかりが身について、その人の頭の中で本当に考えていることや、まだもやもやしていることを蔑ろにしてしまった経験がありませんか?話しているけど一人一人の正直な気持ちには蓋をしてボケやツッコミなどの役割に徹して、その場の空気を円滑にすることをみんなの目標にするような行為。それってもう「会話」ではなく「プレイですよね」ということが書かれています。
30歳を迎える人に読んでほしい本
「ダイアローグ」 ヴァージル・アブロー
せっかくなのでファッション視点の本を。正直、8割くらい何を言っているのかわからなかった(笑)。でも、読み終えた時に「彼が41歳で亡くなった」という事実が押し寄せてきて、グッとくるものがありました。というのも、私は知らなかったのですが、バージルは10代や20代の若者たちに、自分がやってきたことなどのノウハウを惜しみなく明け渡している人なんですよね。そう言うことのために、お金も時間も費やしている。「やっぱり、人のために動いていたり、考えていたりすると、実は自分自身の悩みってなくなるんじゃないか?」と思いました。
そもそも、自分自身のことや将来のことで悩むのは、自分がめちゃくちゃ長生きすると思っているからなのでは、と。実際、本の中でバージルも「10年後にどうなっているかわからないけど、もう今にしか興味ない」的なことを綴っているんですよね。
話は少し脱線するんですが、私の父は地元で農業をやっていて、60歳を迎える彼は最近「今は、農業をする若い子達とか世の中に何かを残せたらいいなと思って農業をやっている」と言います。私自身は今、「だれかのためになるようなことが出来ているのか?」と思ってしまうし、「人のため」って少し綺麗事にも聞こえてしまうけど、年齢によって働く理由が変わったと真面目に話す父を見たことや、この本でヴァージルの言葉を読んだことで、「そうなっていくものなのかもしれない」と思えるようになりました。
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