品川エリアの航空写真が印刷された招待状を手に、京急線品川駅の高輪口改札へ。案内に沿ってホームに向かうと、行先表示器に「貸切」と記された4両編成の赤い電車が止まっていた。指定された席に着くと、ほどなくしてドアが閉まり出発。ここから阿部潤一が手掛ける「カラー(kolor)」2022年春夏コレクションのショーが始まった。
■行先不明、「さあ、楽しもう」
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車内の広告はすべてカラーがジャック。窓上ポスターには「僕たちはどこへ????」「さあ、楽しもう」「行き19分」「帰り36分」「ここから始まる」といった文字が踊り、招待客らは行き先がわからないまま電車に揺られる。
停車したのは京急蒲田駅。ドアが開き、スピーカーからドレミファインバータ(京急電鉄で親しまれてきた発車時の磁励音)、そして音楽が流れ始めた。するとホームにモデルたちが現れ、電車に乗り込んで車内でのウォーキングを開始した。
■再定義するミニマリズム
座席の目の前を足早に通っていくモデルたち。ファーストルックは一見するとベーシックなテーラードジャケットだが、ラペルやポケットのフラップに透明シートを乗せることで、芯地やステッチといった内蔵物が露出している。ブルゾンやシャツの一部にニットが重なっていたり、ドレスの一部がカットアウトされていたり、異なるテクスチャーの素材をドッキングしたスタイルも。
オーセンティックなデザインの基本はそのままに、分解して一部を改変、再定義したのはカラーならではのミニマリズム。「違和感・不安感がありながらも、思わず美しいと受け入れてしまう」というギリギリの境界線とバランスが、巧みに表現されたコレクション。
■日常に心地よい違和感を
ショーが終わると駅弁風の軽食が配られ、電車は再び品川駅にリターン。電車という日常風景に、ランウェイという非日常が混じり合う約1時間の旅。ショー全体で具現化されたのも心地よい違和感そのもので、カラーのクリエイションの根源を垣間見ることができる。
通常はパリで発表しているカラーが東京でショーを開催したのは、先シーズンに続き2回目。今回は駅のホームに設けた観覧スペースに学生を招待していた。彼らはファッションの新しい表現を、どのように受け取ったのか。フィジカルならではの高揚、体験することの価値、コレクションの原点のようで捻られた演出にカラーのクリエイションが光った。
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