東京の街を舞台に、どこか既視感がある日常ながらも物憂げで時には思わずクスッと笑ってしまうスナップ写真を撮るオカダキサラ。そんなオカダによる連載「歳時キサラ」。独自の観察眼で切り取られたその季節ならではの4枚の写真を、それぞれに付随するタイトル&テキストと共にお届け。オカダがついついシャッターを切りたくなったのはどんな瞬間?
さいじ‐き【歳時記】
1,一年12ヵ月、または季節に分かち折々の自然・人事などを記した書物。
2,俳句の季語を集めて分類・整理し、解説や例句を載せた書物。
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1988年東京生まれ。武蔵野美術大学映像学科卒業。大学在学中に東京をテーマにストリートスナップを撮り始める。忘れられてしまうばかりの瞬間には、毎日の見方を変える不思議な仕掛けが隠されているのではないか。そんな思いで街にレンズを向け続けている。第4回1_WALLファイナリスト、2015年度ユーナ21入選、2016年度コニカミノルタフォトプレミオ入選。
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朝の光の手
布団のぬくもりの心地よさに、まぶたがなかなか開かない季節になってきた。
私の部屋は北側で、一日中薄暗く余計に朝を感じにくい。
なんとか起き上がり活動を始めるが頭はボーとしたままだ。
玄関のドアを開け歩いていくうちに、ようやっと眠気から開放されていく。
朝の巡回をしている警備員に、光がそっと挨拶しているような光景に出会う。
私も気づかないうちに「起きなさい」と、朝に頭をなでられていたのかもしれない。
ドッペるゲンガる
街のなかには、同じポーズをしている人がたまたま近くにいることがある。
例えば携帯電話を見ている姿、新聞を読む格好、かばんの中を探している仕草…。
人だけでなく、街を飾る広告ともフォームが重なる瞬間がある。
普段は気にも留めないポスターも、人と動きが重なると意思を持った街の住人のように見えてしまう。
彼らもまた労働者の1人になる。
川を水で洗う
高圧噴水で渋谷川が洗浄されていた。
渋谷川は新宿御苑に水源を持つ川で、支流である河骨川は童謡「春の小川」の舞台でもあった。
渋谷がのどかな田園地帯だった頃は、渋谷川を洗うのは清流だったのだろう。
今は人の手で定期的に汚濁を流さなくてはならないところに、「現代の渋谷」らしさを感じてしまう。
飛沫が作る模様や軌跡が、一瞬で消える不思議な水墨画のように見えた。
ワイン色の空
ブドウの収穫を手伝うために勝沼を訪れた。
作業が終わった後、ワイナリーに立ち寄りワインを堪能しているうちにすっかり酔ってしまった。
帰りの電車を逃さないよう丘の頂上にある駅を必死に目指すが、ワイン漬けの身に坂道はかなりキツイ。
息を切らしながらようやく坂を登り切ると、空もワインに浸かっていた。
美しい景色にうっとりしたが、客待ちのタクシードライバーは無関心のようだった。
彼らがワインに染まれる時間は、まだ先だ。
■オカダキサラ 写真展「TOKY∞VER」
会期:2022年11月1日(火)〜2022年11月6日(日)
営業時間:11:00~18:00 ※最終日 17:00
会場:京都写真美術館 ギャラリー・ジャパネスク
公式サイト
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