「資生堂」「ロレアルグループ」「PROYA」「后」のWeiboより
中国の年間最大のEC商戦、ダブルイレブン(W11、独身の日)が今年も開催された。今年はTmall(天猫)、JD.com(京東)など大手ECプラットフォームが流通取扱総額(GMV)を公表しなかったことで、例年より静かにセール期間を終えた。
GMV非公開でも前年超え? ライブコマースは1人で推定3800億円以上を売る猛者も
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Tmallを運営するアリババは「昨年に引けをとらない流通総額を達成した」と発表するにとどめ、JD.comは「業界の成長率を上回り、新記録を樹立した」としたものの具体的な数字は控えた。中国の調査会社・星図データの調査によると、今年のダブルイレブン期間に総合ECプラットフォーム(Tmall、JD.com、拼多多を含む)の総GMVは前年比2.9%増の9340億元(約18兆3246億円)だったという。また中国版TikTokの抖音(Douyin)もGMVこそ明かさなかったが、セールに参加する店舗は前年比86%増、ライブコマースでは7667の配信アカウントが100万元(約1900万円)の売り上げを達成した。
李佳琦の10月24日ダブルイレブン先行販売タオバオライブより
ライブコマースの勢いは衰えず、星図データの同調査によると抖音、快手(Kuaishou)、点淘を含むライブコマースプラットフォームの合計GMVは1814億元(約3兆4466億円)で、前年比146%増となった。中国トップのライブコマースプラットフォームであるタオバオライブでは“口紅王子”の愛称で知られる李佳琦(Austin Li)が一強状態で、最終推定売上高は200億元(約3800億円)を超え、総視聴者は4億5000万人に達し、昨年のほぼ倍の結果を残した。
またTmallと淘宝(Taobao)はダブルイレブン期間にバーチャルストアをオープン。バーチャル空間には多数の3Dブランドスペースや広告スクリーンが設置され、ユーザーはさまざまな角度から商品を見たり、ライブコマースに移動したりといった没入型の買い物を体験した。他にもアバターによるライブコマース配信やAR/VRを活用したライブコマース、バーチャルアイドルの広告起用なども盛んだった。
売上ランキングは? 「ロレアル パリ」「ヤーマン」「資生堂」…欧米日ブランドが健闘
Tmall美妆洗护WeChat公式アカウントより
星図データによると、今年のダブルイレブンの美容化粧品GMVは822億元(約1兆5618億円)に達し、取引規模はカテゴリーリスト4位にランクインした。Tmallの美容店舗売り上げランキングでは「ロレアル パリ(L'Oreal Paris)」が首位に立ち、「エスティ ローダー(Estee Lauder)」「ランコム(Lancome)」と続いた。中国ブランドトップはスキンケアを展開する「珀莱雅(PROYA)」(総合5位)で、同ブランドはJD.comと抖音でも国産美容品1位だった。日本ブランドは10位「SHISEIDO」、14位「ヤーマン(YAMAN)」、15位「クレ・ド ポー ボーテ(Cle de Peau Beaute)」と健闘した。
出典:「ヤーマン」リリースより
「SHISEIDO」は昨年の4位からランクを落としたものの、「バイタルパーフェクション ホワイトRV」のセットが人気を博し、Tmallの美容売れ筋商品の2位を獲得。「ヤーマン」はRF技術に特化した美顔器「Bloom5」が売り上げをけん牽引し、Tmallでの1日販売実績1億元(約19億円)を5年連続で達成した。
抖音ECではTmallとは異なる傾向が見られた。抖音美容では2年連続で1位になった韓国スキンケア「后(The History of Whoo)」は、Tmallでは昨年まで2年連続で美容ランキング4位に入っていたが、今年はTOP20から姿を消した。また、抖音美容のランキング3位に「ロレアル パリ」、4位に「ドゥ・ラ・メール(De La Mer)」が入るなど、抖音ダブルイレブンでは初めて上位に外資ブランドが登場。グローバルブランドが中国ECでさらなる拡大を続けることが見てとれた。
注目の中国ブランド“ダークホース”は?
ランキング上位こそ欧米、日本のブランドが占めたが、中国の新興ブランドも存在感を現した。その中でも中国で“ダークホース”と注目される3ブランドを紹介する。
「blank me半分一」
「blank me半分一」のWeiboより
中国ユーザーに適した色味や質感を展開するベースメイク専門ブランド「blank me半分一」は、Tmall美粧によるとメイクアップブランドの成績リストで13位に入った。ヒット作のクッションファンデーションは異なる肌質別の2種を展開。乾燥肌向けの「小黒箱」は5つのエッセンシャルオイルが肌の内側に潤いを与えて透明感のあるツヤ肌を演出するとともに、メイク持ちを高める。購入時に全色のテスターが付属し、開封前の返品が可能であるなどサービスの良さも人気の要因に。
「TIMAGE彩棠」
「TIMAGE彩棠」のWeiboより
「TIMAGE彩棠」は数多くの中国スターを担当し、SNSでも人気の高いヘアメイクアップアーティストの唐毅(Tang Yi)が設立したメイクアップブランド。作り込まれているのに自然なメイクアップを叶える実用的なアイテムが揃う。ECデータ調査会社の商指針によると、Tmallのメイクアップカテゴリーで11位、抖音の同カテゴリーでは7位に入った。代表製品の「3色シェーディングパレット」は中国女子がこだわる“立体感メイク”のマストアイテムとなっている。
「Spes诗裴丝」
「Spes诗裴丝」のWeiboより
中国女性のニーズを捉えた機能性ヘアケアを展開する「Spes诗裴丝」は「無洗ボリュームスプレー(免洗蓬松喷雾)」が話題になり、Tmallの美容ヘアケア業界トップ10の中で唯一の国内ブランドになった。皮脂抑制とボリュームアップに焦点を当てたアイテムで、汗や皮脂でへたった髪に振りかけるとふわふわの髪に戻ると抖音などのショートビデオアプリで拡散され、これまでに2000万本以上を売り上げた。
青山学院大学文学部卒業。産経新聞社サンケイスポーツ編集局記者職を経て、「WWD BEAUTY」記者として中国や欧米などの海外美容市場やビューティテック、スタートアップなどを中心に取材。2020年4月に独立し、現在は美容業界情報を中心に若者トレンドや中国市場に関する記事を執筆。
(編集:平原麻菜実)
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