インタビューに応じるZOZOの澤田宏太郎社長
Image by: FASHIONSNAP
「ゾゾタウン(ZOZOTOWN)」でラグジュアリーブランドの出店が続いている。「ロエベ」を皮切りに「ステラ マッカートニー」「マルニ」が出店し、9月には期間限定で「ブルガリ」が登場した。特にロエベは好調で、今後もブランド数を拡大していく方針だという。ゾゾ創業者の前澤友作氏から社長の座を引き継ぎ、2年目を迎えた澤田宏太郎氏が語るラグジュアリー戦略とは。
■今年ゾゾタウンに出店したラグジュアリーブランド
5月〜 ロエベ
6月〜 ステラ マッカートニー
7月〜 マルニ
9月 ブルガリ(1ヶ月限定出店)
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―今年はラグジュアリーブランドの出店が続いていますが、どのような戦略で取り組んでいるのでしょうか。
「ゾゾヴィラ(ZOZOVILLA)」というハイエンド向けのアパレルECを2010年から2014年まで運営していたのですが、そのイメージでゾゾタウン内で国内外のデザイナーズブランドを集めた「DESIGNERS BRAND ZONE」の充実化を目指していて、ラグジュアリーブランドとの取り組みは必須と考えていました。交渉自体は4〜5年前から続けていましたが、新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに出店が加速した形です。
―ブランド側はゾゾタウンへの出店にどのようなメリットを感じていますか?
我々が持つテクノロジーの技術です。ゾゾスーツやゾゾマットといった計測ツールがありますし、将来的にはその技術をオープン化して、ブランドの実店舗にゾゾマットを導入して応用できるようにする仕組みも考えていますので、そういった可能性にブランド側は魅力を感じていただいているようです。また、ゾゾタウンの顧客層は20代が多いので、若年層へのアプローチの場として期待されています。特にコロナ以降はリアル店舗での新規顧客の獲得が難しい状況が続いていますから。
―顧客がゾゾタウンから各ブランドの自社ECに流れる可能性もありそうですが。
仮にゾゾタウンの顧客がそのブランドのファンになってブランドの自社ECや実店舗に流れても、僕らとしては問題ないという考えで、ゾゾタウンをぜひ宣伝の場として活用していただきたいと思っています。
―ラグジュアリーブランドの売上は計画通り推移していますか?
具体的な金額や割合は開示できませんが、計画を上回っています。特に売上が良かったのはロエベですね。
―実際にどのような顧客層がロエベの商品を購入しているのでしょうか?
普段、低価格の商品を買っている方からの購入もあるので、富裕層とは限らないようです。ハイブランドとプチプラ商品を組み合わせるのが時代のトレンドというのもありますね。
―売上好調の要因は?
僕らは過去の購買データから購入の可能性があるお客様をピンポイントで見つけてプロモーションをかけるAI技術を持っています。ロエベはそのプロモーションが奏功しましたね。
―ロエベ以外のブランドの売上についてはいかがですか?
すべてがうまくいっているわけではありません。ただ、各ラグジュアリーブランドのゾゾタウンにおけるMDのノウハウを蓄積できたので、売上を伸ばしていけたらと思います。
―取り扱っている商品は基本的にバッグや小物が多いですね。
体型を問わず顧客側が購入しやすいという観点からバッグなどが中心となっていますが、今後は服も取り扱っていく計画です。
―ラグジュアリーブランドの販売手数料は他のブランドと同様ですか?
それは非公表になります。
―現在ラグジュアリーブランドへの出店交渉はどの程度進んでいるのでしょうか。
具体的な数字は言えませんが、かなり多くのブランドとお話していますよ。
―ラグジュアリーEC市場はアマゾンと楽天も参入し競争が加熱していますが、どのように差異化を図っていきますか?
競合他社もそれぞれ独自のテクノロジーを持っていますが、僕らはファッションに特化しているところが強み。例えば「ウェア(WEAR)」では髪型別でコーディネートを検索できるようになっていて、そういったマニアックなデータは他社にはないと思います。そのデータベースを活用しながらラグジュアリーブランドとの取り組みを含め、プラットフォームとしての価値を高めていきたいと思っています。
―軌道に乗れば、ゾゾタウン限定アイテムなども考えられるのではないでしょうか。
ぜひやりたいですね。僕らのD2Cブランドともコラボレーションできたら嬉しいです。
―社長就任2年目に突入しますが、振り返ってみてどんな1年でしたか?
想定外のことが多すぎて、ジェットコースターのような日々でした。特にコロナの感染拡大が始まった4月以降はブランド側から「ゾゾタウンで在庫を売ってなんとか現金化して、従業員に給料を払いたい」という依頼がたくさん寄せられました。物流倉庫「ゾゾベース(ZOZO BASE)」がパンク寸前まで在庫が膨れ上がった一方で、三密を防ぐためにゾゾベースのスタッフの稼働を縮小しなくてはいけない状況が続き、カスタマーセンターもセキュリティの面でリモートワークが難しかったので、乗り切るのが本当に大変でした。感染防止対策のアクリル板も当時はなかったので、最初はゾゾタウンのダンボールを使ったり(笑)。大変な状況下だからこそ、自分の思いを振り返る良い機会にもなりました。
―"思い"とはなんでしょう?
コロナをきっかけに、ゾゾタウンは業界のインフラとなったことを改めて認識しました。技術のオープン化も同様ですが、業界に資する形でビジネスを続け、業界全体を盛り上げないといけないと感じましたね。
―最後に、これからのゾゾの理想像は?
失敗を恐れず、いろいろなことに挑戦していく会社でありたいですね。その"ゾゾ・マインド"を社内で共有するために「ソウゾウのナナメウエ」という標語のようなものを設定しました。ゾゾタウンは「想像(SOZO)」と「創造(SOZO)」が由来です。人が考えていることの"ひとつ上"ではなく"斜め上"をいくことがゾゾらしさ。この言葉を社内に広めるとともに、発想を浸透させていきたいですね。
(聞き手:伊藤真帆)
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