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ジェニーファックスやケイスケヨシダを傘下に、新会社「スリー トレジャーズ」目指すはアジアのLVMH?

坂部三樹郎、中島真

左)坂部三樹郎、右)中島真

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坂部三樹郎、中島真

左)坂部三樹郎、右)中島真

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ジェニーファックスやケイスケヨシダを傘下に、新会社「スリー トレジャーズ」目指すはアジアのLVMH?

坂部三樹郎、中島真

左)坂部三樹郎、右)中島真

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 「ミキオサカベ(MIKIO SAKABE)」のデザイナー坂部三樹郎と、CAMPFIREの取締役でファッションアワード「big design award」を主宰する会社bigの中島真 代表取締役が、持株会社「スリー トレジャーズ(THREE TREASURES)」を設立した。グループに入るのは、「ミキオサカベ」「ジェニーファックス(JennyFax)」「アキコアオキ(AKIKOAOKI)」「ピリングス(pillings)」「ケイスケヨシダ(KEISUKEYOSHIDA)」「パーミニット(PERMINUTE)」といったデザイナーズブランドと、ファッションの学校「me」。将来的にはアジア各地のブランドや企業をグループ化するコングロマリットとして、ワンストップでファッションクリエイションを世界に発信していくプラットフォームを目指すという。「クリエイティブ・ファースト」を掲げる同社設立の経緯について、両氏に話を聞いた。

ースリー トレジャーズはいつ設立されたんですか?

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坂部三樹郎(以下、坂部):会社は2020年3月3日に設立しました。業態は、端的に言えばファッションのコングロマリットです。

スリー トレジャーズのロゴ

コングロマリットというと、LVMHやケリング、OTBが有名ですが、そういったイメージでしょうか。

坂部:イメージとしては近いです。ファッションブランド、学校、そして将来的には縫製工場やリテールといった、デザイナーの育成から実際のビジネスまでワンストップで運営するシステムを、日本を越えてアジアで作りたいと思い設立に至りました。

中島真(以下、中島:bigで運営しているファッションデザインコンペティション「big design award」も設立の背景としてヨーロッパ偏重ではなく、アジアにデザイナーの登竜門があってもいいんじゃないかと考えたことがスタートだったんですよね。それはブランド経営でも同じで、受け皿になるような母体がアジアにはないため「インディペンデント or NOT」という状況になっている。加えて昨今の環境変化の中、ブランドをスケールさせるためにはファイナンスや共通化するケイパビリティも当然必要になってきますから、それならコングロマリットを作ったほうがいいのではと考えたんです。

ースリー トレジャーズが最初に取り組んだことは?

中島:ファイナンス面の基盤づくりとグループになるブランドとの中期的な方向性の話し合いですね。今後、グループブランドの株式をスリー トレジャーズが保有し、スリー トレジャーズの株式を各デザイナーに何%か持ってもらう予定です。

坂部:日本にもブランドを抱える持株会社はありますが、株式を持ち合う形態はほとんどない。傘下ブランドのことを尊重しながらも、スケールさせていくためには共同で踏み込まなきゃいけない部分があると感じたから株式持ち合いにしたんですよ。

坂部さんと中島さんそれぞれの役割は?

中島:それぞれのバックグラウンド、得意不得意があるので、坂部さんが経営はもちろんクリエイティブ面を見つつ、僕がファイナンスやデジタルなどをサポートします。

中島真

Image by: FASHIONSNAP.COM

具体的な事業内容は?

坂部:若いデザイナーが世界に羽ばたいていくための戦略を練っています。傘下に入っているアキコアオキやケイスケヨシダ、パーミニット、ピリングスについてですが、彼らのように2010年代に立ち上げたブランドは、大変な時代を過ごしてきたと思っていて。ミキオサカベは2007年にブランドを立ち上げたんですが、2000年代デビューのブランドはギリギリ時代の恩恵を受けることができたんです。卸を軸にした欧州型のファッションシステムをなぞってもブランドを維持できましたが、D2Cブランドの台頭や小売店の業績低下など環境変化に伴い、僕らより下の世代はブランドが軌道に乗る前の段階でつまずいてしまう。コロナもあって変化していかなければいけない時代なので、僕はその一つの解がコングロマリットだと考えているんです。

ー現状、グループに入っているのは4ブランドですか?

坂部:ミキオサカベとジェニーファックスも入っています。あとブランドではないですが、ファッションスクールの「me」も。他にも話を進めているブランドはいくつかあります。

ーグループブランドに対してスリー トレジャーズは今どのようなサポートをしているんですか?

坂部:ファイナンス面はもちろんですが、例えばパーミニットに関しては「アウトランド(OUTLAND)」というバッグのブランドを一緒に立ち上げました。

<span class="text-small">PERMINUTEのショーで披露したOUTLANDのバックパック</span>

OUTLAND バックパック

Image by: FASHIONSNAP.COM

OUTLAND バックパック

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ーパーミニットのバッグは前回のショーで発表されたものですね。

坂部:パーミニットのデザインを今以上に売るためにはどうすればいいかを考え、具体的に形になったものですね。展示会でオーダーを受け付けただけで実売はまだですがかなり好評みたいで、半澤(パーミニット デザイナー半澤慶樹)がデザインしたものの中でもトップクラスの売れ行きです。

中島:ただ売り上げが上がれば良いのではなく、クリエイティビティをちゃんと担保しながらビジネスのベースを底上げするのがスリー トレジャーズのやるべきことだと思っていて。アウトランドも単純に売れるものを作ろうと始まったわけではなく、ブランディングを毀損させずむしろより発展させるために攻めた結果なんです。売るためだったら、クリエイティブは二の次でマーケティング偏重で良いというのは通用しません。でも才能溢れるデザイナーを世界に出していくという目標のもと、売ることを考えながらもブレずに「クリエイティブ・ファースト」でないと世界の市場は難しいと思っています。

ブランドビジネスを成長させるために、クリエイティブを重視するということですね。

中島:将来的にはグループブランドのデザイナーが、経理など多岐にわたる経営のためのタスクをやらなくてすむような体制を整えていきたい。ただデザイナーがビジネスに関与しなくなってしまうのは良くないと思うので、経営には引き続き携わってもらう予定です。

坂部:不得意な部分をサポートするのがスリー トレジャーズの主な役目なので、ビジネスが得意な人にビジネス面のサポートはしなくてもいいと思っています。

ーグループブランドの中にビジネスが得意な人もいるんですか?

中島:意識しているわけではないと思うのですが、吉田さん(ケイスケヨシダ デザイナー吉田圭佑)は得意なんじゃないかと思います。

坂部:意外と何でもやっていけるタイプ。ケイスケヨシダにはいわゆるZ世代と呼ばれる若い層のファンが多く、熱量をとても感じます。

<span class="text-small">「ケイスケヨシダ(KEISUKEYOSHIDA)」の2021年春夏コレクション</span>

KEISUKEYOSHIDA 2021年春夏コレクション

2021SS collection

Image by: FASHIONSNAP.COM

KEISUKEYOSHIDA 2021年春夏コレクション

2021SS collection

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ケイスケヨシダに根強いファンが多いのには理由があるのでしょうか。

坂部:従来のクールで多くを語らないデザイナー像とはまた違う、今の時代に即したカリスマ性を徐々に持ちはじめているのかなと。彼はファッションの学校「me」でも面倒見が良いため生徒からとても人気で。彼自身は野暮ったい感じでクールでは全然ないですが、デザイナーとして下の世代から支持を集められる、それはつまりファンを作れていることだと思うんです。今後もその強みを伸ばしていけばいいのではないかと考えています。

デザイナー自身のアイデンティティを尊重して伸ばしていく、ということでしょうか。

中島:そうですね。成功フォーマットに重ねるだけでは今の時代うまくいかないので、それぞれのブランドに応じた戦略、目標を設定していく必要があると考えています。

ー現状、傘下にはここのがっこう卒業生など坂部さんと元々親交のあるデザイナーが多いですね。

坂部:最初はそうなんですがただ内輪なノリではなく、海外含め新規のデザイナーとも話は進めています。

ー今後は日本だけではなく海外のブランドも傘下に?

中島:そうですね。特にアジアを拠点とするブランドについてはグループ親和性が高いと思っていて、いくつか調整している段階です。

ーワンストップでということは、スリー トレジャーズでは縫製工場など共通のチャネルを持つということですか?

坂部:そうですね。国内はもとより、既に発注先工場のリストは中国やインドネシアにまで広げていて、グループブランドにも共有しています。もちろん、スリー トレジャーズが契約した工場以外で生産しても全く問題はありません。

差別化を考えると、同じ工場を嫌がるデザイナーも出てくるのでは?

坂部:その通りで、縫製や生地といったディティールがブランドの根幹になるため嫌がるデザイナーは多いと思います。だからこそ、工場を取り合う必要がない状態が理想だなと思うんです。真似さえしなければ工場は共有してもいい、というのが僕の考えです。

中島:生産背景を共有した方が費用はやはり抑えられることもありますし、一定の規模で対話することも工場との持続的な関係をつくる上で大切だと思っています。

坂部:今、グループブランドに共通する課題として、小ロットで服を量産しているため利益率が低いということがあります。もう少し数を作れるようになるとグッと利益が増えるわけですが、若い世代のデザイナーたちにとっては中々越えられない壁なんですよ。在庫を積むには予算をどう捻出するか、検品も大変になるとか、色々な課題がありますが、スリー トレジャーズがそこを助けてあげる。そういう意味ではパーミニットの「アウトランド」のバッグは、ロット数の問題で彼らだけではできなかったけど、スリー トレジャーズが先行投資すればロット数を増やせ、適切な市場性のある価格で販売できるようになるわけです。要はクリエイティブの機会損失を無くしていきたいということです。

若手デザイナーズブランドはデジタル施策が弱いという課題もありますね。

中島:その通りで、デジタルを強化することで他ブランドとの差別化にも繋がると思っています。まず最初の取り組みとしてスリー トレジャーズのECページを開設しました。インフルエンサーマーケティングのようなものはしませんが、インスタグラムの運営や多言語対応したECシステムだったり、まずは基本的なところから構築していく予定です。

スリー トレジャーズの売り上げ目標は?

中島:3年で年50億円規模にまで成長させたいです。

将来的にはどういったコングロマリットを思い描いていますか?

坂部:ファッションアワードで発掘、スクールで育成し、ブランドをデビューさせ、スリー トレジャーズでブランドを成長させていく。中島さんの助けもあって、僕が考えてきた構想というか、アイデアの最終段階という感じです。

 僕はこれまでずっと、クリエイションとビジネスがイコールなゾーンを増やす方法を模索してきました。結局シンプルな服が売れるため、デザインが均質化してしまうというのがファッションクリエイションの問題点だと思っているんですが、「クリエイションの追求=ビジネスの追求」が成立するシステムを、ちょっとずつでもいいから広げていきたい。世界を見渡してもまだ誰も見つけられていないと思うので、先に見つけたいなと考えているんです。

■THREE TREASURES

坂部三樹郎
成蹊大学理工学部卒業後、渡欧。イギリス・セントマーチンを経て、2006年、ベルギー・アントワープ王立芸術アカデミーファッション科を首席で卒業。2007年、台湾出身のシュエ・ジェンファン氏とともに「MIKIO SAKABE」設立。

中島真
アクセンチュア、DeNA、リブセンスなどを経て、現在CAMPFIRE取締役。2019年にファッションデザインコンペティション「big design award」を運営するbig株式会社代表取締役就任。ギフティ社外取締役、STiLy社外取締役。

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