これからのファッションシーンを担うデザイナーが、自身のルーツを5つのキーワードから紐解いていく新連載「私のマインドマップ」。
第4回は、3DCGを用いた作品で新たな人物像を提案するosumi。マロニエファッションデザイン専門学校とここのがっこうプライマリーコースでデザインの基礎を学び、「ミキオサカベ(MIKIO SAKABE)」のデザイナー坂部三樹郎が運営するファッション学校「me」に進学。2020年からファッションブランド「ウォーターブルー(Water Blue)」をスタートし、3DCGの世界観を体感できるプロダクト制作にも注力している。
No.4 osumi(Water Blueデザイナー)
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Image by: osumi
「osumi」のクリエイションを紐解くマインドマップ
1:アトピー性皮膚炎
幼少期に感じていた周りからの"視線"と、抱いていた"女性像"
デザイナーとしての原点を振り返る時、小さな頃から抱えているアトピー性皮膚炎が大きく影響しています。ずっと人の視線を気にしながら生活をしていたので、なるべく自分をよく見せたいという思いもあり、そこからファッションに興味を持つようになったのだと思います。
作品から女性らしさを感じるとよく言われますが、自分自身に欠落していると思う"身体的女性らしさ"への憧れや思いから影響を受けているのだと思います。周りの女性との身体の違いから、"自分の身体はただの入れ物で中身だけが女性"という感覚を持っています。その感覚をネガティブに捉えている訳ではなく、自身のコンプレックスも交え新たな人物像を提案したいという思いで作品を制作しています。
ストレスから逃げるように"空想世界"へ
皮膚炎による身体的ストレスが大きかったこともあり、少し前まで現実逃避のように空想にふけることがよくありました。見えている空間は現実世界ですが、脳だけ別の所にありふわっと靄がかかっている感覚です。この"ふわっとした状態"が私のデフォルトだったのですが、時折ハッっとリアルな空間を感じることがあり、その瞬間がいつも怖かったことを覚えています。
様々な人との出会いの中で現実と向き合う大切さを学び、現実逃避することも少なくなっていきました。今ではその時感じた空気や匂いを辿り、作品の要素として落とし込んでいます。
2:自然
"山・川"溢れる風景とデジタル機器のギャップに感じた"中途半端さ"
実家は近くに山と川があったりと、自然に溢れた場所でした。豊かな景色とは対照的に、私の父は新しいもの好きだったので、家の中はゲーム機やパソコンなどの最新のものが揃っていて。田舎なのに家の中がデジタルで、その環境をずっと中途半端に感じていました 。ただ、そういう環境があったからこそ、デジタルとアナログのどちらにも惹かれるんだろうなと思っています。
デジタルキッズが憧れた"都会"
父のお陰で小学生の頃からパソコンを触っていて、今振り返るとかなりデジタルキッズだったなと(笑)。YouTubeやブログで新しいことを知る度に、都会への憧れがとても強くなっていったことを覚えています。中学生の時に初めて東京に行ったんですが、田舎にはない雰囲気を体感できたことと、憧れの竹下通りに行けたことがとても嬉しくて、今でも記憶に残っていますね。
3:The Sims3
人間の生活を"神視点"で眺めていた中学3年生
中学3年生の時、「ザ シムズ3(The Sims3)」というパソコンゲームにかなりハマっていました。このゲームは、プレイヤーが人間の姿をした「シム」たちを作り、彼らの人生模様を"神視点"で眺めて楽しむシミュレーションゲームです。
フル3Dで描かれたグラフィックが特徴で、シムの顔のパーツや性格だけではなく、建物や家具といった細かな部分まで自分で設定できる面白さがありました。また、予想もしていない動きやオーバーリアクションが楽しくて、とにかくこのゲームに時間を費やしていましたね。周りの友達は誰もやっていなかったので、一人で黙々と楽しんでいました(笑)。
今の作品に繋がる"人間生成"と"MOD"
ふと思い返すと、今の作品制作では「ザ シムズ」と同じようにキャラメイクしているので、制作の基盤をゲームで体験していたんだなと。また、「ザ シムズ」ではMOD※を使用ながら自分の世界を構築していたのですが、自分の作品でも制作が難しい背景やパーツは、素材を外部から取り込み作品に反映しています。
※MOD:外部の人が制作した家具や服のデータ
4:ファッション学校「me」
"仲間"のお陰で実感できた"成長"
「ミキオサカベ(MIKIO SAKABE)」の坂部三樹郎さんが運営するファッション学校「me」では、授業毎に生徒間で作品をプレゼンする時間がありました。人前に出ることが苦手だったので最初は思う様に話ができなかったのですが、仲間たちの助けもあり次第に環境に慣れることができました。Thinkコースの修了生による作品展では副リーダーを務めていたのですが、展示会終了後にサプライズケーキをみんなが用意してくれて。大変な事も多々ありましたが、みんなから感謝の言葉をもらい、自分の成長を感じることが出来ました。
また、制作においてもmeのみんなからたくさんの刺激を受けています。特に、中林さん(中林花香)の作品は、毎回心動かされます。彼女にしか制作できない独特な空気感で、作る服もかっこいい。何気ない日常の中に見えるもうひとつの新しい世界を感じられます。知れば知るほど、彼女の世界に浸っていけるのが心地よいです。
"先生"からの助言で始めた3DCG制作
ファッションを学んでいく中で、今まで通りブランドを立ち上げて服を作るという流れには違和感があり、自分らしい表現を模索していました。その頃に三樹郎さんから頂いた「バーチャルで作品を作ることが向いてそう」というアドバイスがきっかけとなり、CGやVRを1年ほど独学。また、吉田さん(KEISUKEYOSHIDAデザイナーの吉田圭佑)をはじめとする先生方も、作品の意図を汲み取りながら様々なアドバイスをくれます。それのアドバイスがあったからこそ、今のテイストに辿り着くことができたと思っています。
ただ、バーチャルだけでの表現では物足りなさも感じていて。現在はバーチャルな世界観を感じられるようなプロダクトを提案したいと思い、3Dプリンタを使用した靴作りを進めています。
5:80〜90's アニメーション
"うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー"のメタ的視点
80年代〜90年代のアニメを大人になってから観るようになりました。作者の物事の考え方や視点などは、作品の参考にすることも多いのですが、中でも「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」は、主人公たちの日常から垣間見えるふとした不思議なシーン作りや、時間がループしていることに登場人物が気付く視点などが面白くて。日常とファンタジーの境界線で感じられる"ふわっとした感覚"が、見ていて心地良いんです。
自分で制作したものを見返すと、3DCGにも関わらず現実世界での撮影風景を想起する作品があり、アニメを見ている時の"ふわっとした感覚"に近いものを感じます。こういった作品の持つ不思議な感覚を、見ている人にも伝えられるような作品を作っていきたいと思っています。
Graundsとのコラボレーション作品 Video by osumi
"セル画"の魅力に触れた、"イクニ監督"の「美少女戦士セーラームーン」
meのプレゼンで初期の「美少女戦士セーラームーン」の画像を見せた時、三樹郎さんから「なぜこれが良いと思ったのか、しっかりと考えた方が良い」というアドバイスを頂きました。自分なりに色々と考えた結果、当時のセル画アニメーションの雰囲気が好きだということに気がつき、そこから自分でもアニメーション制作に取り組むようになりました。
セル画アニメーションは透明フィルムに絵を描き、それを撮影してアニメーションを作っているので、数秒の作品でも時間がかかり大変なのですが、デジタルとはまた違う味わいが出せることがとても魅力だと感じます。まだ色々と試している段階ですが、デジタルとアナログを融合させながら自分の表現を追求していきたいです。
これまでグループ展などには参加してきましたが、今後は個展で作品を発表できるよう活動に励んで行きたいと思います。お仕事や展示などあれば是非誘って下さい!
osumiが制作したアニメーション作品 Video by osumi
Water Blue >>Instagram
osumi >>Instagram
■次世代デザイナー連載「私のマインドマップ」
>>No.1 : 向祐平(Munited Kingdomai YUHEIデザイナー)
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