東京の街を舞台に、どこか既視感がある日常ながらも物憂げで時には思わずクスッと笑ってしまうスナップ写真を撮るオカダキサラ。そんなオカダによる連載「歳時キサラ」。独自の観察眼で切り取られたその季節ならではの4枚の写真を、それぞれに付随するタイトル&テキストと共にお届け。ぐずついた天気が続く6月の東京。オカダがついついシャッターを切りたくなったのはどんな瞬間?
さいじ‐き【歳時記】
1,一年12ヵ月、または季節に分かち折々の自然・人事などを記した書物。
2,俳句の季語を集めて分類・整理し、解説や例句を載せた書物
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雨に唄えれば
雨の公園は人通りがなくとても静かだ。
こんな時、歌があれば散歩はより楽しくなるのだろうけど、普段から音楽を聴かないから、口ずさめる曲が思いつかない。
傘の中、やけに大きく響く雨音に混じって、かすかな歌声が聴こえてきた。
長唄だった。
公園のベンチで、ご老人が唄の練習をしていた。
内容は分からなかったけど、雨の日に長唄の調べはよく似合うように思えた。
昼寝の達人
皇居の周辺はゆったり時間が流れている。
晴れた日には松の木の下で憩いを楽しむ人も多い。
都会のど真ん中で優雅に過ごす彼らが羨ましくなり、私も適当な木陰を見つけて寝転んだ。
途端に背中に鋭い痛みが走る。
すぐに飛び起きた。
よく見ると、松の葉が地面にいっぱいに落ちている。これが刺さったのだ。
ここで安眠を得られる人たちは、昼寝スポットを見極められる昼寝の達人なのだと知った。
お家に帰れない
全力疾走している青年たちを見かけた。
彼らはフットボールの選手で、7月から行われる全国大会に向けて特訓をしていたところだという。
練習は会社の終業時間後から始まり、走り込みを何往復か繰り返したら、次は筋トレが待っているらしい。内容のハードさに目眩がした。
「一緒にやってみますか?」と冗談で誘ってもらったが、1セットで帰宅困難になりそうで、本気で断ってしまった。
なみのりびより
風が強い日の海辺は、高波が次から次へと押し寄せる。
サーファーたちにとっては絶好の波乗り日だろう。
同じ浜辺で潮干狩りをしている人たちがいた。
波をかぶりながら一生懸命に砂を探っている。
その様子は潮干狩りというより、波遊びのようだった。
砂浜で少し散歩するだけだったはずが、私も波を避けきれず濡れてしまった。
海水は冷たく、太陽の暑さを忘れるのに十分だった。もう少しで本格的な夏が来る。
1988年東京生まれ。武蔵野美術大学映像学科卒業。大学在学中に東京をテーマにストリートスナップを撮り始める。忘れられてしまうばかりの瞬間には、毎日の見方を変える不思議な仕掛けが隠されているのではないか。そんな思いで街にレンズを向け続けている。第4回1_WALLファイナリスト、2015年度ユーナ21入選、2016年度コニカミノルタフォトプレミオ入選。
公式オンラインストア
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■オカダキサラのZINE発売を記念したリリースイベントを開催。
会場:Dig a hole zine
所在地:東京都杉並区高円寺北3-8-12 4F
日時:2023年7月1日(土)
営業時間:13:00〜20:00
公式サイト
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