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インドネシアのユーズド市場、レコード人気はシティポップからシブヤ系に|コラム-ジャラン ジャラン アジア

Image by: 横堀良男

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インドネシアのユーズド市場、レコード人気はシティポップからシブヤ系に|コラム-ジャラン ジャラン アジア

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東南アジアの最新情報を綴るコラム「ジャラン ジャラン アジア」。1年間の3分の2以上を東南アジア諸国で過ごし、契約バイヤーのほか、ポップアップショップ、展示会出展、ファッションショーの代理店などを行う横堀良男氏が現地の情報をレポートします。

(文・横堀良男)

 バリから戻りまして、ジャカルタにおります。バリに行く前に偶然ジャカルタのレストランで、有名なレコード屋「レイドバックレコーズ(Laidback records)」のオーナーのサムスンに会いました。サムスンはとても気の良い男性で、もう知り合ってかれこれ4、5年になります。

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レイドバックレコーズ:公式インスタグラム

 「バリから戻ったらお店に行くね」と約束していたので彼のレコード屋に行ってきました。彼は野菜とか生活雑貨を売っているマーケットがある建物に、中古レコードのお店を構えています。

1990年代の下北沢や西新宿にこういうレコード屋さんあったなと思い出します。

1990年代の下北沢や西新宿にこういうレコード屋さんあったなと思い出します。

 彼のレコード屋は、ジャカルタのレコード好きで知らない人はいないほど有名です。彼のお店をきっかけに、この建物は若者たちの中で大きなブームとなり1990年代の下北沢や高円寺のようなカルチャースポットとなりました。

 現在も彼はそこにお店を構えていますが、他の若者たちが経営していたほとんどのお店は別の建物に引っ越してしまいました。ここの大家さんが調子に乗って、家賃を値上げしまくって失敗したという話は有名です。

 彼はジャカルタのレコード市場にとても詳しいのでいくつか質問をしてみました。

Q.レコード屋を始めたきっかけは?

 もともと古いレコードが好きで個人的に集めていたんだ。人を介してレコード持ってる人に会って、売ってもらってたり。そんなことを続けていたら、「サムスンはレコード好きな人」という認知になって友人やその知り合いなどから相談を受けるようになった。これは商売になるかな、と思って2013年にレコード屋を始めたんだよ。

Q.レコードはどうやって仕入れている?

 最初はインドネシア国内にいるレコードコレクターに会いに行って売ってもらったり、いろいろやっていた。それから、コロナ前は日本に行ってレコード屋さんを回って掘り出したりしていたよ。日本からレコードを仕入れるようになったのもやっぱり友人からの紹介だったかな。日本人のレコードコレクターを紹介してもらって、それで会いに行ったりしたね。

オーナーのサムスン

Q.今のジャカルタではレコードを買うお客さんがたくさんいる?

 僕がお店を始めた2013年頃は買う人はまだまだ少なかった。コロナ前の2019年頃だってまだ市場が大きいとは言えないくらいだったよ。お客さんはDJやコアなレコードファンがほとんどだったかな。コロナ禍でレコードファンはすごく増えたね。コロナになって家に籠ることが多くなり、音楽をじっくり楽しみたい人が増えたんだと思う。今はすごくレコードが流行っているよ。10年前から見たら市場がすごく大きくなったと思う。

Q.日本人アーティストや日本のレコードって売れるの?

 シティポップが人気だと思うでしょ?シティポップのレコードはむしろ一時期より落ち着いてきているよ。2014〜2015年くらいが一番売れていたかなあ。今はもっといろいろなジャンルが売れているよ。

Q. 最近人気のある日本人ミュージシャンや日本のレコードがあったら教えて?

 Nujabesはずっと人気がある。あと最近またシブヤ系が売れているよ。ピチカート・ファイヴ(PIZZICATO V)は今すごく人気がある。あと砂原良徳のレコードはとても人気があって、とても高い価格で売れるんだよ。特にこのアルバム、「THE SOUND OF´70s」なんて1万2000円とかでみんなが買う名作だよ。

THE SOUND OF´70s

THE SOUND OF´70s

アーティスト: 砂原良徳 その他: BRYANBURTONLEWIS
ブランド: Ki/oon Sony キューン ソニー
メーカー: キューンミュージック
発売日: 1998/11/11
価格: ¥4,258(2022/10/12現在)

よく見ると知ってる日本のレコードが結構ある。

マーケットの中にたたずむレコード屋。

 彼から話を聞けて良かったです。もう現地のコアなレコード好きの間ではシティポップは6〜7年も前から落ち着き始めていたんですね。とはいえ、シティポップはそれほど認知されている存在になったんだという驚きも感じています。

 ジャカルタで友人の車に乗せてもらうと、私が日本人ということもあるのでしょうが日本の曲をかけてくれることがあります。ほとんどの場合、それはシティポップです。音楽に詳しい方でなくとも、日本のシティポップが海外で流行っていることは聞いたことがあるかもしれません。海外で音楽好きな人に会うと大抵下記の曲を知っています。反対に教えてもらって、検索するくらいですね。

「プラスティック・ラヴ」(1984年)竹内まりや 

「真夜中のドア 〜stay with me」(1979年)松原みき

「SPARKLE」(1982年)山下達郎

「君は天然色」(1981年)/大瀧詠一

「DOWN TOWN」(1975年)シュガー・ベイブ

 シティポップブームとレコードブームはどちらが先なのかはわからないですが、相関性があることは間違いないでしょう。この前、松田聖子のレコードを何枚かメルカリで買って、インドネシアの若者にプレゼントしたら恐ろしいほどに感謝されました。今後は日本のレコードがパワー系お土産になるのかもしれません。

 レコードは新譜を見ることはほとんどなく、中古レコードのみが流通しています。では「中古のファッション=古着」はインドネシアでは支持されているのでしょうか?

 インドネシアには、日本のような古着カルチャーはありません。ここでいう古着カルチャーとは、アメリカ古着やヨーロッパ古着で古いものが格好良いと感じることであったり、昔のメーカーの物を掘り出すのが楽しいと思うファッションカルチャーのことです。

 インドネシアには、スリフトショップと呼ばれるお店があります。日本で言うとリサイクルショップのような業態です。そこで洋服を買うのは筋金入りの古着好きか、収入が高くない若者です。

Laidback recordsのある市場の中にあるスリフトショップ(古着屋)。90’s感がありますね!

Laidback recordsのある市場の中にあるスリフトショップ(古着屋)。90’s感がありますね!

Laidback recordsのある市場の中にあるスリフトショップ(古着屋)。90’s感がありますね!

 その理由はインドネシアの比較的裕福な人が、「古着を着ている人は貧しい」という先入観を持っているからではないかと思っています。ファッションは今もステータスを表すものであり、古着を着ること=新品の服が買えない、と思ってしまっている人が多いのではないかと感じることが多いです。

 実際にインドネシア人の若者に「なんで古着ミックスとかしないの?」と聞いてみました。

 「それはブランド志向が強すぎるから。インドネシアの人はヨーロッパみたいに古着を着るのが格好良いと思ったりせず、ブランドロゴが入ってるようなわかりやすいブランド商品を好む傾向があると思いますね。あ、僕は古着好きですよ」とのこと。

 古着屋さんに行って、お気に入りになるようなTシャツを見つけるのとか楽しいんですけどね!いつかこの感覚を味わってもらいたいです。

 ではデザイナーズ古着が人気かというとそうでもありません。日本でいうラグタグのようなブランド古着屋で有名なお店が南ジャカルタに1軒ありますが、ブランド古着屋は私の知る限り増えていません。

 店舗が増えていないだけで、CtoCなどで取引されているのでは?と思った人もいると思います。日本のメルカリのようなアプリとして、インドネシアにも「カスクス」というアプリがあります。ただ、今は誰も使わなくなってしまったそうです。理由は、商品の発送が保証されておらず、お金を払った後に発送されないケースが多発したり、偽物が大量に出回ったため。日本の運営は対応が凄くちゃんとしてるのだなあ、と改めて実感しました。

 そのため、オンラインで取り引きをしたい人は、インスタグラム(Instagram)のストーリーズに写真をアップして「誰か欲しい人いる?」と聞いているのをよく見かけます。他にもフェイスブック(Facebook)やツイッター(Twitter)を使っている人もいるみたいです。中古品の売買のサービスやアプリも他にあるそうですが、ファッションは主流ではなくほとんどがスマホだったり、バイクだったり。

 個人的には古着のリメイクブランドなら売れるのかなと思いましたが、前にご紹介したチタヤム ファッションウィーク(Citayam Fashion week)の例を見ると、彼らが自分でリメイクしてしまう気がします。そうなると、富裕層は古着のリメイク製品にはステータスを感じないのではないかと危惧します。この意識の転換が始まれば、おしゃれ古着も市場に浸透するのでしょう。

 先ほどのレコード屋のオーナーのサムスンに「中古のレコードは今売れているけれど、インドネシアで古着も売れるようになるかな?」と聞いてみました。「売れるようになるよ。この国は常に変化している。もうすぐそういう時代になるよ」と言われました。

 インドネシアでのオシャレ古着市場が拡張するのはいつなのかはわかりませんが、Z世代の中には古着も着ている人が増えた印象があります。おそらく海外旅行で日本や欧州で買ったのでしょう。それかSNSでそれっぽい雰囲気を真似していたりするのでしょう。平均年齢がとても若いインドネシアですから、あと10年以内に何か大きな古着ブームが起きるのかもしれません。

横堀良男

Yokobori Yoshio

東京都江東区出身。高校在学中からアパレル業界で働き始め、 その後、アッシュ・ペー・フランス株式会社に入社。27歳で若手ブランドの営業代行業、showroom SIDEを設立、代表に就任。 32歳で海外進出、現在は1年間の3分の2以上を東南アジア諸国で過ごし、契約バイヤーとして活動。 日本からアジア・アジアから日本のポップアップショップ、展示会出展、ファッションショーの代理店も行う。

■コラム「ジャラン ジャラン アジア」バックナンバー

・vol.1:そうだ、東南アジアで生きていこう。借金抱えて自分探しの旅

・vol.2:高級モールは世代交代?ジャカルタのアシュタはなぜ成功したのか

・vol.3:なぜ東南アジアでは合同展示会が少ないのか

・vol.4:イスラム教徒のファッションは?人気の新興3ブランドも紹介

・vol.5:シンガポールのストリート事情、人気のブランド紹介

・vol.6:業界人はここに行くべき!シンガポールのおすすめスポット

・vol.7:実は進んでる?フィリピン マニラのファッション事情

・vol.8:夏休みに東南アジアに行く方法

・vol.9:インドネシアの三越?最も歴史のある百貨店がリニューアルしたので行ってみた

・vol.10:海外進出のヒント?インドネシアで寿司を食べてみた

・vol.11:ECで稼ぐならインドネシア?

・vol.12:インドネシアのECを後押ししたスーパーアプリとは?

・vol.13:4日間で8万人が来場、インドネシアのポップアップショップについて

・vol.14:ジャカルタは全盛期の裏原宿?主催者なしのファッションウィーク

・vol.15:3年ぶりのシンガポール、コロナと円安で感じた変化

・vol.16:メイドインジャパンは強みじゃない

・vol.17:お酒やDJも 行政法人主催のイベントに参加してみた

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