「ブラン(BLANC)」のデザイナー 渡辺利幸
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「メゾン ミハラヤスヒロ(Maison MIHARA YASUHIRO)」などで経験を積んだデザイナー渡辺利幸が、2012年に設立したアイウェアブランド「ブラン(BLANC)」。設立10年目を迎える今年、ブランド初の直営店をオープンし、伊勢丹新宿店メンズ館にもショップがオープンするなど注目を集めている。そんなブランが提案するのは「それぞれのファッションを格上げする名脇役としてのアイウェア」。「ニュートラル」というコンセプトに込められた真意とは?
ブラン デザイナー 渡辺利幸
1976年生まれ。福井県出身。
「メゾン ミハラヤスヒロ(Maison MIHARA YASUHIRO)」に立ち上げメンバーとして参加した後、同社の別事業といてスタートしたセレクトショップのバイヤーや店長として従事。2012年にアイウェアブランド「ブラン(BLANC)」を設立した。
ーそもそも、なぜアイウェアブランドを立ち上げようと考えたのでしょうか?
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2012年頃、勤めていた会社を辞めたタイミングで1度自分のキャリアを見直したことがきっかけです。18年間務めたアパレル業界を離れようかとも考えたのですが、やはり自分が培ってきたものを1番活かせるのはこの業界だなと。でも販売やバイイングといったこれまで経験してきた業務ではなく、新しいことに挑戦したいという思いがあり、それでブランド立ち上げに至りました。長年店頭でお客様と関わる中で、アイウェアに関してユーザーとブランドでゴールに乖離があると感じ、それを解決するアイウェアを作ろうと考えたんです。
ー乖離というのは?
販売員やバイヤー時代、アイウェアの魅力をお客様に説明する際、フレームの作りや素材の良さなどをよく語っていました。もちろんそれらも大事な要素ですが、商品を購入する方が気にしているはもっと単純なところで、「これって私に似合っていますか」「これってオシャレですか」という部分なんです。アイウェアは、特に日本では腕時計や万年筆みたいにステータス性が高い小物としての側面が強く、コレクター欲を満たすものが多いですよね。でもアイウェア選びにはもっとファッション的な思考が必要で、簡単に言えば身に付けることでおしゃれな雰囲気になれるかどうかなんです。
ーデザイナーとしての経験がない状態からのブランド設立は容易なことではなかったと思います。
ほとんど知識がない状態で始めたため、当初は学ぶ事ばかりで。アイウェア業界にいる知り合いに、アイウェアの作り方だったりブランド運営のノウハウなどを教えてもらいながらここまでやってこれました。それ以前に三原さん(メゾン ミハラヤスヒロデザイナー三原康裕)の影響は大きいですね。メゾン ミハラヤスヒロは元々靴のブランドでしたが、そこから海外でファッションショーを開催するような日本を代表するブランドに成長した。その様子を立ち上げの時から間近で見てきたというのはとても貴重なものだったと今でも思いますし、ブランを運営していく中でも役に立ちましたね。
ーブランで表現したいこととは?
ブランでは、ユーザーそれぞれのファッションを邪魔せずに、おしゃれに格上げしてくれるような”名脇役”なアイウェアを目指しています。モード、カジュアル、フェミニン、ストリートなど様々なファッションの中間地点である「ニュートラル」がブランドコンセプトです。服装全体に馴染み、ファッション性を感じるアイウェアを作りたいというのが根底にあります。
ーブランのアイウェアは、ニュアンスカラーのレンズやフレーム、程よくデザイン性のあるシルエットが特徴的です。
日本人って、メガネには「真面目で堅い」、サングラスには「キザで少し怖い」という印象を持っている方が多いんじゃないかと思うんです。でも僕はその中間を提案したくて、ブランド立ち上げ当初から目がうっすら透けて怖い印象にならないカラーレンズを積極的に採用しています。また、日本人の骨格に合うようなシルエットを意識していたり、着用した時だけでなく外して置いた時の佇まいも美しくなるように考えていたりします。買い物をするのってもちろん自己満足もあると思いますが、人から褒めてもらったり、どこのブランドか聞かれたりするとやっぱり嬉しいじゃないですか。ブランでもそういう体験をしてもらいたくて、日々デザインしています。
ー各モデルそれぞれに着想源はあるんですか?
着想源は日常の中でふと気づいたものが意外と多くて。例えばコンビニのアイスのパッケージや、グラスを通して見たコーヒー、天気の良い日のガラス窓の色など、身近なものからヒントを得ています。あとは”インドア派でゲームが好きな女の子”や”ヴィンテージ古着が好きで音楽をやっている男の子”など、具体的な人物像をイメージして作ったりもしますね。
ブランのアイウェア
Image by: FASHIONSNAP
ーブランド設立10周年というタイミングで直営店をオープン。
お取引先や卸先でブランのアイテムを購入してくれた方から、アイウェアのメンテナンスや修理はどうすれば良いかという問い合わせが多く、それに対応できる場として直営店が必要だと感じ、お店を出すことにしました。
ー直営店の内装デザインは二俣公一氏率いるデザイン事務所「ケース・リアル」が担当。こだわりのポイントは?
1つは大きな鏡を導入した点です。その人のファッションを格上げするアイウェアを提案するにはこの大きな鏡が必須です。自分だけでなく他の人や物が映り込む鏡でアイウェアをかけた自分を客観的に見ることで、似合っているのかということを確認してもらうためですね。もう1つは空間を広く取ったことです。来店してくれる方には伸び伸びと商品を見て選んで欲しいので、スタッフやお客様同士の距離を保てるようにスペースを確保しました。逆にそれ以外の内装はほぼお任せで。実は二俣君とは20年来の友人で、いつか自分の店を持ったらその時はデザインをお願いしたいと決めていたんです。ブランドのコンセプトであるニュートラルを体現したグレーが基調の内装ですが、天井のライトを取り付ける動線が黒になっていて、入り口から見るとこのライニングが目に付く。ニュートラルな中にもファッション性を持たせたブランの雰囲気をうまく表現してくれました。
「ライト(LHITE)」の内観
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ー6月から伊勢丹新宿店メンズ館ショップがオープンしました。
以前メンズ館で開催したポップアップが好評で、常設店のお話を頂きました。元々本館リスタイルで取り扱いがあり、そこで購入したお客様がショップでレンズ交換が出来るなど、ようやく本来のサービスを提供できるようになりました。
ー最後に、今後の展望を教えて下さい。
2020年から展開しているグローバルライン「817 BLANC LNT」の展開も徐々に増えてきていて、今後より注力していきたいと考えています。そして、7月末にはサングラスケースが一体になったバッグなどレザーアイテムを発売する予定です。アイウェアブランドという枠に囚われず、バイヤーとしての経験を活かして自分が良いなと感じたものを作っていく、そんなアプローチがブランらしいかなと考えています。
(聞き手:志摩将人)
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