デムナ(Demna)が手掛ける「バレンシアガ(BALENCIAGA)」から届いたショーの招待状は、テーラードジャケットの伝統的な組み立て方の指南書だった。裏表紙には「重要なのは着ているジャケットではなく、それを着て過ごす人生」とフランス語で綴られている。コレクションには服作りへの敬意が込められ、また「ファッションとは何か」をパーソナルな形で表現するショーとなった。
ショーの招待状 Video by FASHIOSNAP
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真紅に染まったバレンシアガ劇場へ
会場はナポレオンの墓所として知られる、アンヴァリッドのドーム教会の中庭。特設会場の外壁には、存在をカモフラージュするように教会の外観が描かれている。会場内は床から天井、カーテンに至るまで赤一色。ゲストには劇場風のシートが用意されていた。
イザベル・ユペールの朗読が響き渡る
まず特徴的だったのは、ブランドアンバサダーであるイザベル・ユペール(Isabelle Huppert)の声をサンプリングしたオリジナルのサウンドトラックだ。これはデムナの夫でもあるBFRNDによって作成され、「ミラバルステュディオ(Miraval Studios)」の共同創設者であるダミアン・クインタード(Damien Quintard)によってプロデュースされた。ユペールが朗読していたのは招待状にもなった書籍。このサウンドトラックを収録したBFRNDのEP「Zone Interdite」が、ショーの翌日にリリースされた。
アップサイクルで第二の命を吹き込む
コレクションのテーマは、前回から継続する「服作りへの敬意」と「パーソナルな表現」。ファーストルックをはじめ、ヴィンテージの製品を解体して再構築するアップサイクルの手法を多く用いて、衣服に第二の命を吹き込んだ。先シーズンから継続しているアプローチとして、前回はスラックスの脚が4本付いていたが、今回は腕が4本。前がセットインスリーブで後がラグランスリーブといった、複雑なパターンが取り入れられた。また、2Dの平面的な肩の構造も特徴だ。
ヴィンテージのテーブルクロスで作られたドレスや、イタリアのスポーツメーカー「アルパインスターズ(alpinestars)」との協業でデッドストックのレーシングギアを用いて制作されたジャケットも。ラストルックでBFRNDが着用したウェディングドレスには、2000年以前の7着のヴィンテージドレスが使われたという。
ウェディングドレスを纏ったBFRND
Image by: Courtesy of Balenciaga
サステナビリティの観点では、代替レザー「ルナフォーム(LUNAFORM)」がマキシ丈のコートに使用された。ナノセルロースを発酵させたもので、今回が初登場。バレンシアガ独自の素材となっている。
デムナの母親や恩師、右腕もランウェイに登場
モデルとして登場したのはデムナの夫だけではない。ファーストルックを着用していたのはデムナの母親であるエラ・ヴァザリア(Ella Gvasalia)。ほかにアントワープ王立アカデミーで彼の元教師だったリンダ・ロッパ(Linda Loppa)とイヴォンヌ・デコック(Yvonne Dekok)、長年のアシスタントであり、チーフ・クリエイティブ・オフィサーであるマルチナ・ティーフェンターラー(Martina Tiefenthaler)、ブランドのグローバルPRディレクターのロビン・ミーソン(Robin Meason)など、パーソナルな繋がりのある人々を起用した。
エラ・ヴァザリア
Image by: Courtesy of Balenciaga
ファッション評論家のキャシー・ホリン(Cathy Hryn)やファッションブロガーのダイアン・ペルネ(Diane Pernet)、パフォーマンスアーティストのアマンダ・ルポール(Amanda Lepore)などもモデルとして登場し、総勢87名のうち本業のモデルは3分の1ほどだったという。
目を疑うようなデザインのアクセサリー
また、アクセサリーにもバレンシアガらしいツイストが感じられた。パスポートと航空券がくっついたように作られたレザー製ウォレットや、靴そのものを持ち歩いているように見えるクラッチバッグが登場。チャームをたくさんぶら下げた新作バッグ「ロデオ」やマーケットバッグ風の「アントワープ」にも遊び心を感じさせる。
Image by: Courtesy of Balenciaga
新作スニーカー「カーゴ」はショー後に限定1000足をオンライン販売して人気を集めた。ショーではメンズモデルもハイヒールを着用していたが、実際にシューズ類は男女の幅広いサイズで展開が予定されているという。
世界中からトップセレブリティが集合
会場にはナオミ・キャンベル(Naomi Campbell)やパリス&ニッキー・ヒルトン(Paris & Nicky Hilton)、エリカ・バドゥ(Eryka Badu)、アッシャー(Usher)、クリス・ジェンナー(Kris Jenner)といった、豪華な顔ぶれも。日本からはemmaやkemio、仲里依紗がショーに駆けつけた。
ナオミ・キャンベル
Image by: German Larkin
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