ヴァレンティノ 2021年春夏オートクチュールコレクション フィナーレ
Image by: VALENTINO
デジタルで開催されたパリのオートクチュールウィークに参加した「ヴァレンティノ(VALENTINO)」が、2021年春夏オートクチュールコレクションを2つの映像作品で公開した。クリエイティブ ディレクター、ピエール パオロ・ピッチョーリ(Pierpaolo Piccioli)は今回、マッシヴ・アタック(MASSIVE ATTACK)の3Dことロバート・デル・ナジャ(Robert Del Naja)とのコラボレーションプロジェクトを実現している。
(文・辻 富由子)
1月25日に公開されたショー形式のコレクション映像では、ロバートがサウンドトラックを担当。 続いて1月29日に、ロバートとアーティストのマリオ・クリンゲマン(Mario Klingemann)とのコラボレーションによるオーディオビジュアルアート作品が公開された。
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ショーはローマに位置するコロンナ美術館、サラ・グランデ(Sala Grande)にて開催。「CODE TEMPORAL」と題されたショーフィルムは約18分。左右の壁に絵画やシャンデリア、彫刻などが装飾されたサロンの中をモデルたちが闊歩する。男性モデルも混じり、クチュールコレクションでメンズがフィーチャーされるのは今回がブランド初となった。
公開されたムードモードには、ルーチョ・フォンタナ(Lucio Fontana)の切り裂かれたキャンバスの作品や、アルベルト・ジャコメッティ(Alberto Giacometti)の彫刻作品のイメージなどが並ぶ。前シーズンは白昼夢のようなファンタジックな世界観が注目を集めたが、今回はクラシックの要素をモダンに昇華したタイムレスなスタイルが提案された。
特にアイコニックだったのが、仮面のようなゴールドのフェイスメイクアップと、驚くほどの高さのハイヒール。全体的に縦のラインが強調されたシャープなシルエットと、ニュートラルカラーにレイヤードされたピンクやグリーンなどのブライトカラーが印象的だ。
後半に登場する立体的なデコレーションは、クチュールならではの精巧な作り。フィナーレの後には白衣のクチュリエたちが全員マスク姿で登場し、「これは人間を称えるコレクションだ」というメゾンのステートメントを思い出させた。
マリオ・クリンゲマンが手がけたオーディオビジュアルアート作品では、アトリエでの制作プロセスも公開。マリオはアルゴリズムやニューラルネットワークを活用した作品を得意とするアーティストであり、今回は3ヶ月間、人工知能にヴァレンティノのオートクチュールについて学習させて映像を制作したという。
画面には、詩人・画家であるウィリアム・ブレイク(William Blake)や小説家のメアリー・シェリー(Mary Shelly)など、あらゆる芸術家の名言が映し出され、コレクションとの繋がりをほのめかせる。時間の流れをコード化し、過去と現代をつなげる試みは芸術史・ファッション史においても、つねに大きな命題であり続けるのかもしれない。
文・辻 富由子
セントラル・セント・マーティンズ出身。モード誌の編集者、通信社のニュース記者を経て、フリーランスのファッションエディター/ライターとして独立。ファッション以外では、現代アートやフィギュアスケートについての記事執筆もこなす。
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