ヴァレンティノ 2021年秋冬コレクション
IMAGE by: VALENTINO
「ヴァレンティノ(VALENTINO)」2021-22年秋冬コレクションショーがミラノのピッコロ・テアトロ劇場で行われた。白と黒のモノクロのカラーパレットを中心に構成されたコレクションでは、フリルやリボン、スパングルやビーズ、カットアウトやフェザー、オーガンザなど、素材や技巧によって異なる質感がスポットライトを浴びて鮮明に浮かび上がった。
■今、劇場でショーを行うということ
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発表スケジュールはパリのファッションウィークだが、今回のショー会場となったピッコロ・テアトロは、ヴァレンティノが拠点とするミラノの文化を生み出しているシンボル的な劇場。本コレクションを「芸術活動が否定されるこの時期における、集合と共有への招待」とし、昨年のロックダウン以降まだ再開できずにいるこの場所でショーを行うことをクリエイティブディレクターのピエールパオロ・ピッチョーリ(Pierpaolo Piccioli)は「パンクなジェスチャー」と言い切る。コレクションを「ヴァレンティノ アクト コレクション(VALENTINO ACT COLLECTION)」と命名したことからも、動的なニュアンスが漂う。
人影がなくがらんとした観客席。静けさの中、ミラノ・ジュゼッペ・ヴェルディ交響楽団の五重奏の生演奏が始まり、イギリス人シンガーのコジマ(COSIMA)がしっとりと歌い上げる「Nothing Compares 2 U」と共にショーがスタートした。本来は失恋ソングだが「It's been so lonely without you here (あなたがここにいなくてとても寂しい)」という歌詞が現実と重なり、空虚な会場に響き渡る。
■圧倒的な白と黒
目が冴えるような赤やショッキングピンクはヴァレンティノを象徴する色だが、ショーでは鮮やかな色が一切排除された。アイボリーやゴールドが数ルック登場しただけで、大半を占めるのは白と黒のモノクロカラー。色が制限されることでテクスチャーとシルエットが際立ち、オーガンザやフェザー、スパングル、刺繍などの素材とディテールが新鮮に映る。
■ケープとスカートの丈が意味すること
今シーズンのキーアイテムに挙げられる「ケープ」。冒頭のブラックのショート丈のコートやジャケットから始まり、チェックやホワイト、Vの幾何学パターン、ロングコート、ナイロン素材、ラメ素材といった様々なデザインで登場する。マントのような重厚感のあるケープだが、ウィメンズではミニ丈のスカートで素足を見せるスタイリングが多く、ボリュームの面でもコントラストが顕著に現れている。
丈の短さは意図的なもので、デザイナー曰く「躊躇のない強引なまでのジェスチャーはある種のパンク的な行動」だという。丈の短さはスカートだけではなく、メンズのパンツ丈にも見ることができる。そしてバッグやシューズにはメゾンのシグネチャーであるスタッズがあしらわれ、パンクの印象をダイレクトに伝える。
アウターの外側に出したシャツ襟も印象的。鎖骨に沿うほど水平に鋭く伸びた大きめの白襟はスタイリングにシャープな洗練さを添えている。
■ネットのタートルネック
もう一つ、コレクションでキーモチーフとして多様されているのが「ネット(網目)」。菱形に切り刻むようにカットアウトされたニットやミニドレス、体にぴったり沿う網状のタートルネックは効果的に使われている。そしてよく見るといずれも平面的なものではなく、波状の帯を縫い合わせたり、編み上げによる立体的な網目であることに気づかされる。これはバッグの一部のデザインにも連動している。
網目のデザインを用いた上から覆い隠すようで実際は露出させるという視覚的な手法はコレクション全体にパンクかつセンシュアルなムードをまとわせた。
舞台袖からはけることなくステージ上に留まったモデルたちはまっすぐと正面を見つめ、背面のミラーカーテンが上がり白いスクリーンがモデルたちのシルエットを映し出す。エンディングはピエールパオロが舞台の中央に立った瞬間、スクリーンが真っ赤に染まるというドラマチックな演出。モデルを従えて舞台上に立つピエールパオロの堂々たる表情と佇まいはショーフィナーレではなく、新たな幕開けにも見えた。
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