SODA inc. CEO 内山 雄太
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韓国NAVER傘下のクリーム(KREAM)による「スニーカーダンク(SNKRDUNK)」の一部買収。運営会社SODA(ソーダ)は今後、クリームの連結子会社となり支援を受けながら国内でのスイングバイIPOを目指すという。今回のディールに至った経緯や今後スニダンが目指す未来をSODA代表取締役の内山雄太氏に聞いた。
2021年には始まっていた?クリームとのM&A構想
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─まず初めに今回クリームとの連携について聞かせてください。この話はいつぐらいから始まったんですか?
ここまでハッキリと描いていてはいなかったのですが、おそらく2021年だと思います。当時、クリームが単体で日本に進出しようとしていたんです。その時に今も我々の株主になっている、SVA(ソフトバンクベンチャーズアジア)がクリームに出資をしていて、「日本にはスニダンがあるから話してみたら」と繋げてくれたんですよね。そこで単体で乗り込んでくるよりも、僕らに出資して日本の市場はスニダン、韓国の市場はクリームと専念したほうがお互いにとって良い結果を生むということになりSVAとクリームでプライベートファンドを組成して出資してもらうことに決まりました。振り返るとそこが始まりだと思います。
─それから2年が経ち今回のM&Aに繋がりました。
当時は、お互い自国でNo.1を獲得しようと話していたんですが、去年頃には両者とも実現することができたんです。そこで日本・韓国から飛び出して本格的にアジア圏・USのシェアを獲得していこうとなったときに一緒に攻めて行ったほうがよりスケールの大きいことができるよね、と去年の中盤くらいから話していたんです。スニダンもクリームもB2C領域の展開を進めていくことや、C2C部分もスニーカーだけではなくファッション・コレクティブ領域へ拡大していくこともあり、一緒になることでそのシナジーも大きく生まれるのではないかというのが決め手でした。
─前回は380億円という巨額のポストバリエーションでしたが、今回はさらに増えて530億円となっています。ダウンラウンドが多い厳しい環境と言われていますが、影響は特になかったのですか?
あまり感じませんでしたね。株式市場がダウンしている状況で「1、2年後にIPOをしたとしても今以上の価値を出せるかわからないよね」みたいな雰囲気は確かにありました。ただ、今回は足元の業績とGMVの伸び、シナジーなどを見て我々の未来予想図を判断してもらえたのが良かったです。現状の市場感をベースに、クリーム(KREAM)とのシナジーを効かせたスイングバイIPOならより大きなバリュエーションを目指せる、という期待感もあると思います。
─今後はスイングバイIPOを目指すとのことですが、先日ZOZOグループの株式会社yutoriもスイングIPOで上場承認が下りましたね。
そうですね。KDDIのソラコムが一度延期して再度上場申請を出すなどもありましたが、新しい形として日本でも根付くといいと思います。やはり、IPOの一番大きな理由は資金調達ですから。ミッション実現に向けて加速していくためには、100億、200億円なり今よりももっと大きな資金をプロダクト開発やマーケティングの優秀な人材採用に投資していかなければいけないと思いますし。我々も、監査法人を入れましたし主幹事もそろそろ決める段階にきています。
─既にB2C領域では、両社で獲得したブランドの共有を始めています。それ以外で連携する施策はありますか?
やはり真贋鑑定の連携です。鑑定においてはかなりのクオリティに達していると自負していて、国内では流通量が一番多いスニダンが最も多くのデータ保有や優秀な鑑定士が所属していると思っています。正規品・偽造品の見極めはデータをどれだけ保持・活用しているかと鑑定士がどれだけ多くの正規品・偽造品を見ているかが非常に重要なんです。国内では最もスニダンが精度の高い真贋鑑定を実現できていると思いますし、KREAMにも優れた真贋データが蓄積されています。両社が蓄積している正規品・偽造品のデータベース、鑑定士の知見を共有することで世界で最も精度の高い真贋鑑定が実現できると考えています。他にもレコメンドエンジンや画像認識技術の共同開発や、ロジスティクス、マーケティング、プロダクトなど考えていますが、目白押しですね(笑)。
─2021年に競合のモノカブを買収しましたが、シナジーなどはありましたか?
やはり一番はクーポン合戦含めマーケティングコストを抑えることができたことが大きいです。両者とも限界まで突っ込んでいたので、そのコストを鑑定やロジスティクス、カスタマーサポートの体制強化に使えるようになったのはM&Aで一緒になって良かったと感じます。当時いたチームが今でも多く在籍してくれていますし、裏側の強化に繋がりました。
─その反面、結果的にモノカブをクローズすることになりました。
当初はスニーカーやファッション領域はスニダン、トレカやゲーム等コレクティブ領域はモノカブと2つのアプリで領域を分けてグロースさせていく構想を描いていました。モノカブの名称をトイカブに変えることも話し合っていたんです。カテゴリが違えばプロダクトの最適解も違うし、ターゲット層を効率的に獲得していくためにスニダンとトイカブで独立したマーケティングをしていくのが効率的だと思っていたんですね。ただ、開発のリソース問題や海外の競合動向を考えると、1つのプロダクトにリソースも資金も集中したほうがよりスピード感をもって判断できるという結論でクローズを決めました。結果的に最善の判断だったと思います。
GMVは三桁後半に伸長 カギは海外戦略
─現在のGMVはどれくらいですか?
ハッキリと数字は出せませんが、3桁億円後半です。5~900億円のどこかという感じです。シンガポールに拠点を作って海外事業に本腰を入れたのが1年ちょっと前ぐらいですがこちらはまだ3桁にはいっていない状況ですね。そのため、ここの伸びがどれぐらいあるかで今後変わってくるのかなと思います。
─日本90%で海外10%となっています。カテゴリを見るとスニーカーが60%になっていますね。
はい、残りはトレカが30%で他カテゴリで10%程度という感じです。「スニダンはスニーカーだけじゃない」と1年前頃からトレカにも注力し始めました。日本語ポケカはUS含め海外でも需要は高く日本がもっとも多くの供給量を持っている。これと似たような「アジアでは供給が多く、USでは供給が少ない」かつ「需要が多い商品群」をどれだけ見つけることができるかを重要視しています。スニーカーで培った鑑定付きフリマという認知やロジスティクスとの連動、プロダクト、ユーザープールをうまく使って、HYPEなファッション・コレクティブアイテムが売買できるというイメージに大きく変えていくのが次の一手ですね。
─2021年8月に「アトモス(atmos)」がフットロッカーに買収された時をピークに、その後スニーカー市場が冷え込んだように感じます。
スニダンは二次流通が中心のサービスなので一次流通がどう動いているかを鮮明に把握はできないですが、バブル終焉と一括りにするのには輪郭がぼやけすぎているのかなと思っています。市場に参加している消費者にはスニーカーやファッションが好きで購入している層と、投機的な意味で購入している層に分けられます。確かに、上値を狙う投機的な買いは落ち着いたと感じますがシンプルにスニーカーやファッションが好きという人の数や熱狂度が下がったということはないんじゃないのかなと個人的には思っています。
─なるほど、スニダン自体はあまり影響がないということでしょうか?
実績値としてスニーカーカテゴリーだけを見ると急激な成長角度は2021年中盤あたりをピークに落ち着いてはいます。ただ、バブル崩壊のようなキャッチーな言葉かと言われるとそうでもないというか。取引されるスニーカーの平均単価もサービス開始時から大きく変わらず2万5000円前後で推移していますし。一部のプレ値狙いのアイテムやブランドを追うというよりも、これまで着目してこなかったブランドやアイテムなどに分散しているのかと思います。なので、投機筋以外のスニーカーファンの総数や熱量が落ちたとは思えないですね。
─キモとなる海外戦略ですが、シンガポールに拠点を作って1年と少し経ちました。
そうですね、この1年で海外用アプリのリリースとシンガポールに拠点を設けて海外戦略の足元を固めました。アプリでは対応している国を17ヶ国に増やして、シンガポール、オーストラリア、米国を集中的に意識しています。シンガポールには実店舗を去年末にオープンし、ちょうど最近ロジスティクスセンターの構築も大枠完了して攻める足元は固まったと思います。数字でいうとまだ年間GMVが100億円にも届いてないのでまだまだこれからというのが現状ですが。
─海外マーケットプレイス「GOAT」や「StockX」の動きは気になりますか?
どちらも鑑定付きフリマの先駆者なのでプロダクトや戦略を中心に参考させてもらっています。この2社以外にも中国の得物(POIZON)も非常によくできていると思います。ただ、StockXは投機的な意味合いが強いC2Cで、GOATはB2Cも混じったファッションコマースに向かっていて、2社の目指している方向性はかなり違うなという印象もある。スニダンは、彼らがまだ構築しきれていないアジア圏を中心に戦略を組み立てています。実は、同じスニーカーでも二次流通相場はUSに比べアジア圏のほうが安い状態なんです。なので、アジアから供給を集めてどれだけ早く関税含めて低いコストでUSに届けられるかが勝負になるんじゃないのかと思っています。
─実際「Nike Air Force 1 Low '07 “White"」は、新品定価が1万5400円ですが、スニダンでの新品取引価格は1万2000円前後になっていますね。
定価は上がっていきますが、当時買った値段で出している人も多くて同じ新品でもスニダンのほうが安いこともありますね。「欲しいモノを買うときに一次流通か二次流通かを意識していますか?」と調査したところ、過半数以上は「意識していない」との回答があったのですが、買う側にとってはリーズナブルに手に入るなら一次流通と二次流通の境界線が曖昧になってきているなと感じています。
─最近では新宿にHYPEDROPをオープンさせました。
今年頭からHYPE DROPを開始して、現状は120のブランド様の商品を取り扱いをさせてもらっています。現状は取り扱いブランドの拡充やSKUを増やすことを重要していて、一次流通の体制の構築に焦点を当てています。短期戦ではなく、中長期戦を描いているため着実に成長させていきたいです。とはいえ、マーケティング面での攻めもしなくてはいけないので、来年の春SS、AW頃にはこちらの強化も計画しています。
一次と二次を繋げる高次元マーケットプレイスへ
─中長期的な戦略としてはC2Cのカテゴリ拡大、B2C(HYPE DROP)モデル、海外市場の獲得の3つを掲げています。
はい、C2Cは、ファッション領域やトレカやゲーム、フィギュアなどのコレクティブ領域の拡大に主眼を置いています。この部分はまだ偽造品が多く流通しているのが現状で、スニダンの鑑定力を使って偽造品を撲滅していきたいと思っています。またスニダンでは真贋鑑定とロジスティクスとカスタマーサポートの3つが一つに繋がっているのが大きな優位性です。鑑定付きだけど手元に届くまで早い、何か不安等があった場合にも商品知識を持ったサポート体制を受けることができる。このあたりの優位性をきちんと活用して高単価商品群において個人間売買をより安心してできるサービスにしていきたいです。
─B2Cは?
B2Cは、HYPE DROPをまずは軌道に乗せていきたいと思っています。やはり二次流通と一次流通は商慣習が全然違います。へんに狙って変化をつけるというよりは、「HYPEなモノが欲しい、買いたい」というユーザーのニーズに応えられるように王道のやり方で勝負していきたいです。これは海外戦略にも繋がっていて、スニダンが海外市場をきちんと獲得していくことで、国内ブランドの海外展開の支援もできるんじゃないかと思っています。スニダン・HYPE DROPでプッシュした日本発ブランドが世界的に有名になった、という事例をつくれたらすごく嬉しいですね。
─C2CとB2C、海外市場が繋がった戦略ということですね。
この3つを連携させながら進めていくことで、「世界中が熱狂する次のマーケットプレイスをつくる」というミッションをブレイクダウンさせて、世界中の人が次のマーケットプレイスのピースである「偽造品の心配がない、C2CとB2Cが混じり合っている、国境を超えた売買ができる」が実現できると思います。ミッション達成への道は長いですが、少しは近づくことができると思っています。
そのためには、「スニダンはスニーカーだけじゃなく、HYPEなファッション・コレクティブアイテムを買ったり売ったりできる」という認知に変えていくことがスタートなので、そこを重要視していきます。「イケてる商品が揃っている、人気の商品が分かる、欲しい商品に出会える」というような状態ですね。
─一次流通と二次流通を両面から支え繋げるマーケットプレイスでビジネスを行うのは難易度がかなり高いと感じます。
そうですね、ただSODAのミッションである「世界中が熱狂する次のマーケットプレイスをつくる」を実現する上で、次のマーケットプレイスの形を作るのが必要です。そのためにもブランド公式の一次流通商品と個人が出品する二次流通商品が混じり合っている、かつキチンと鑑定もされて安心して買えるプラットフォームの構築に挑戦しなければならないと思っています。「売ってしまったら終わり」ではなく二次流通で商品が取引されたらブランド側にもきちんと還元される仕組みなども実装したいです。そうすれば、ブランドも出品者も落札者も全員がハッピーになれる高次元のマーケットプレイスになると信じてますし、そういう場としてスニダンはあるべきだとも思いますし。そう簡単な道ではないと思いますが、今回のディールをきっかけにさらにアクセルを踏んでいきます。
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