サプライチェーンの混乱がスニーカー事業に直撃
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ーサプライチェーンの混乱による影響が多方面で出ていますが、現在の御社の状況について教えてください。
中国と東南アジアが取引先として多く、一部商品の生産遅延が続いています。全社的な影響は軽微ではあるものの、「アンディフィーテッド(UNDEFEATED)」などの日本総代理店を務めるスタージョイナスが影響を大きく受けている状況です。
ースニーカー業界ではサプライチェーン混乱による供給不足が深刻化しています。
米国からのスニーカーの供給が大幅に遅延しているため、スタージョイナスの成長は停滞傾向にあります。スニーカーが主力商材ですが、現状はウェアなどのオリジナル商品を中心に計画を修正し、収益体制の改善に動いている状況です。とはいえ、やはり多くの顧客はスニーカーを求めて来店されるので、ウェアで売上を立てるのは難しい部分があるのが正直なところです。
ー全社的な影響が軽微で済んだ要因は?
日本国内に自社工場持っていますので、服に関しては国内生産である程度まかなえたことが効果的だったのではないでしょうか。
ー新疆綿の使用を中止されたとのことですが、現地で違反などが確認されたのでしょうか。
違反は確認されていません。トレーサビリティに関しては使用素材のリストを提出するよう定めることで、透明性向上に努めています。ただ、中国で栽培されていた綿のうち約80%がウイグル産のものが占めていたとなると、やはり生産には影響が出ている部分はあります。インドやアメリカなどで代替の生産地も模索しているところですね。
ー大手アパレル企業には経営とサステナビリティの両立が求められています。
SDGsは経営における大前提であり、サステナビリティを基軸として事業を計画していくべきなんです。今、サステナビリティについて我々が真剣に取り組まないと、私たちも、そして次世代の人々も困る。丁寧に進めていくべき事だと思って取り組んでいます。
ー2022年は中期改革プロジェクトにおいて「成長と飛躍の年」と位置付けています。
中期経営計画は4月以降に発表しますので、現時点で具体的なことは申し上げられませんが、我々が手掛ける50近いブランドを総ざらいでブラッシュアップしている段階です。そういった意味ではこれまでとは違った目でTSIを見てもらえるような新たな提案ができると思います。少なくとも新ブランドは3つほど控えていますし、イベントなど新しい試みも打ち出していく予定です。
ー2022年のアパレル業界についてどのように見据えていますか?
アパレル業界の未来を悲観的に見ている方もいますが、私はそこまで暗いイメージは持っていません。
ーオミクロン株の影響で感染者数が再び拡大しています。2022年は「ウィズコロナ」「アフターコロナ」のどちらの想定で事業を進めていく計画ですか?
どちらか一方に振り切った計画は立てていません。先行きも不透明ですし、人の気持ちや生活スタイルもまだまだ変わっていくと思いますし。社員には、既存のルーティンを壊し、未来に目を向けた面白い取り組みを考えるようには伝えています。
「販売員に対してアパレル業界は手を抜き過ぎた」
ーコロナ禍で実店舗のあり方が変化しつつあります。これからの販売員に求められるのはどのような人材ですか?
オンライン接客が当たり前になりつつあり、お客さまの買い方も変わってきました。一人ひとりが情報発信できる時代において、やはり専門性の高いスキルを持つ販売員の存在が益々必要になってくると思います。ただし、情報を発信する従業員が“ちゃんとしているかどうか"が非常に大事なところで。
ー「ちゃんとしている」というと?
自分が働くブランドとしっかり向き合えているか、といった部分ですね。ブランドのストーリーや商品の魅力をしっかり理解して、それをお客さまと向かい合った時に自信を持って訴えていけるか。一言で言えば「ものすごい勉強をしている人」が求められるのかなと。そして我々は販売員に対して大きなサポートをしていくべきだと思っています。
ー教育コストにも積極的に投資していく。
我々の商売は店頭で働く彼らのおかげで成り立っていると言っても過言ではないので、販売員のスキルアップをサポートしていく計画ですし、メンタル面のケアもしていきたいと考えています。スタッフ一人ひとりにロイヤリティを持って働いてもらうことが、お客さまのエンゲージメントを高めるために不可欠です。デジタル施策などへの投資ももちろん必要ですが、「ツール」よりもまずは「人」。ツールを使いこなすのも結局は人ですから。
ー下地社長は上野商会時代、社長就任後も店頭に立ち、セールやイベントでは自ら先頭を切って販売を行ったそうですね。
当時は月1回程度は店頭に立っていました。管理職の人間を店頭に立たせることを制度として導入しようと提案したら、猛反対されてしまいましたが(笑)。
ー従業員とのコミュニケーションを何よりも大事にされているんですね。
店頭に立つと気付きが多いんです。上野商会時代、総務部長や人事部長に対して、店頭に行って掃除をしてくるように言ったことがあります。彼らが店舗に行くと、最初のうちはスタッフの子たちも緊張したらしいのですが、気付けば休憩時間にお茶を飲みながら人生相談を受けるようになるほど打ち解けたそうで。店舗と社内の両方の空気が変わっていったのが印象的でした。やはり職種の垣根を超えて信頼関係を築くことが一番大事ですね。
ー今後、下地社長が店頭に立つこともあるのでしょうか?
昨年はコロナの影響などもあり行けませんでしたが、今年は時間を作って行きたいですね。現場で販売員の皆さんのことを常に気にかけることは、精神的なケアにもなりますし、店舗をトラブルのない健全な状態に保つことにも繋がる。本部がしっかり支えていくことで、店舗でのトラブルを未然に防ぐことができます。
ーアパレル販売員の働き方にもポジティブな変化が期待できそうです。
販売員の皆さんに対して、我々も含めてアパレル業界は手を抜きすぎたのかもしれません。アパレル業界では販売員の地位を軽んじる傾向がありますが、そうした勝手なヒエラルキーは無くしていかなければいけないとなと感じています。
(聞き手:長岡史織、伊藤真帆)
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