FASHIONSNAPが注目するクリエイターが、7つのルーツを紹介する連載がスタート。第1回は、タトゥーアーティストやグラフィックデザイナーとして活動するTAPPEIのバックボーンを深掘りする。
1.人生に影響を与えた番組
ダウンタウンのごっつええ感じ
親がダウンタウン好きで。僕はごっつの世代ではないんですが、親の影響から中学生くらいのときにTSUTAYAでごっつを借りて見るというのを何回も繰り返していました。YOUさんが子ども役で、食事中の親が目を離した隙に嫌いな豆を捨てると、部屋に豆の被り物を被ったダウンタウンの2人が現れる「豆」というコントは衝撃でした。ごっつのコントは面白さはもちろんなんですが、洒落の利かせ方とか、ヴィジュアルに格好良さもあるんですよ。昔、貯金箱が自分の頭を割る作品を作ったことがあるんですが、立場を逆転させたような考えはごっつからの影響が大きいです。
あと当時の画質だからというのもあると思うんですが、ごっつのコントはちょっとした怖さもあるんです。ほんのり恐怖を感じるというか。ホラー映画の撮影現場では、実は爆笑が起きやすいと聞いたことがありますが、恐怖とユニークって表裏一体なのではないかと。僕の作品でも怖さと可愛さ、面白さのバランス感は意識していますし、ごっつにはかなり影響を受けています。
2.人生に影響を与えた映画
メン・イン・ブラック(Men in Black)
メン・イン・ブラックは異星人のヴィジュアルがシンプルに可愛いのと、人間として日常を過ごしていて、しかもそれがユニークなところが好きですね。一見するとくだらないような面白さだと思いますが、遊び心を感じます。有名なシーンですが、2のラストでロッカーの中で生活している異星人を憐れんでいたら、実は自分達も一つのロッカーの狭い世界でしか生きていなかったということを伝えられる。洒落の利かせ方も、良いメッセージをサラッと流す感じも凄く格好良くて。シリーズ全作見ていますが、特に1と2が好きで、映画を見ながらであれば次に喋るセリフを言えるくらいには見ましたね。
3.人生に影響を与えたデザイン
サンタクルーズ ロブ・ロスコップ Target 1~5 ジム・フィリップス(Santa Cruz Rob Roskopp Target 1~5 Jim Phillips)
高校生のときにスケボーをしていて、スクリーミング・ハンド(SCREAMING HAND)からサンタクルーズを好きになりました。それから色々なシリーズを見ていたら、ロブ・ロスコップのTarget 1~5の5作品を見つけて。5枚のスケボーの板で、徐々に腕や体が出てくるストーリー性のある作品になっているんですが、スケボーの板を使ってこんなに面白いことができるんだ、と本当に衝撃的を受けました。スケボーとして実用できるものにストーリー性のあるアートを入れ込んだのが本当に格好良いなと。ちなみに、スケボー中に暑いから脱いで置いていたスクリーミング・ハンドのパーカを盗まれたことをきっかけにスケボーは辞めました(笑)。
4.人生に影響を与えたアーティスト
キース・ヘリング(Keith Haring)
物心ついた頃くらいから、家にキース・ヘリングのマスキングテープが貼ってあったんです。それを見ていたからか、本能的に可愛いなという感覚があって。それから、高校生くらいのときにニューヨークの地下鉄のグラフィティアートを見て、表現方法を変えることで絵が持つ意味が変わることを知りました。僕も絵を描くのが好きなんですが、当時から漠然と彫り師になりたいという思いがあって。今では当たり前になりましたが、当時はタトゥーとして自分の絵を彫るみたいな文化ってあまりなかったんですよ。ただ、キース・ヘリングのグラフィティアートを見たことで、タトゥーとして絵を彫るというのもやって良いんだ、彫り師としてちゃんと挑戦してみたいなと思えたきっかけになりました。
5.人生に影響を与えた漫画
こちら葛飾区亀有公園前派出所
見た目通りだと思いますけど、勉強が嫌いだったんです。公文に通っていたので、ある程度の授業にはついていけたんですが、漢字は覚えないといけないので全然好きじゃなかったんですよ。ただ、こち亀って色々な漢字が出てきて、ふりがなを振ってくれているのでこち亀のおかげで漢字を覚えていけたんですよね。あと作者の秋本治さんの知識量が凄くて、説明だけでページが埋まる箇所もあるんです。異常な情報量でありながら、40年間の週刊連載で一度も休んだことがないというのは本当に尊敬します。先見の明も凄くて、有名な話ですがタイムカプセルを埋める会でムシキングのカードを入れようとする本田に対して、10年後に値が上がっているからと遊戯王のカードを入れる両さんが描かれていたり。話数が多いので、偶然当たった一つのネタなのかもしれませんが、各回に熱量を持って取り組んでいるのが伝わってきます。
他にも作中で特に好きなセリフがあって。両さんがいじめられている子どもに対して「今に見ておれ、お金持ちや有名人になって見返すのだ」という気持ちを忘れるなといったシーンで。本当は、両さんは部長の前で良い格好をしようとしているだけなんですが、僕はそのセリフが凄く刺さったんですよ。左腕には「今に見ておれ」とタトゥーで入れていて、ムカつくことがあっても「今に見ておれ」っていう気持ちを大事にしています。
6.人生に影響を与えた音楽
RCサクセション
僕の名前の由来でもあるんですが、忌野清志郎さんの息子さんと同じ竜平を名付けるくらい親がRCサクセションを好きだったんです。家でずっと曲が流れていたので、普通だったら嫌いになるレベルで小さい頃から聴いていました。一時期はあまり聴かない時期もあったんですが、高校を卒業して親離れをしてから改めて聴くとやっぱり格好良いなと。印象に残っているエピソードがあって、小さい頃、父親に連れられて清志郎さんのライブに行った時に、開演間近でトイレに行きたくなってしまい......。ライブを少しでも見たいであろう父親が付き添ってくれながらトイレに行ったんですが、トイレから出たら偶然にも目の前の通路を清志郎さんたちが歩いていたんです。信じられないくらい近い距離だったので、「本当にありがとう」と父親に感謝されたことが凄く印象に残っています。
あと渋谷パルコで開催した初の個展に父親が来てくれて。Instagramに個展で録った動画を投稿してくれたんですが、動画のBGMがTHE TIMERSの「タッペイくん」だったのはめちゃめちゃ嬉しかったです。
7.人生に影響を与えたもの
ぬいぐるみ、フィギュア
人形遊びって基本的に小学校低学年くらいまでだと思うんですが、僕は小学生の頃に友達がいなかったこともあって中学校に入学するまで遊んでいたんです。デパートで売っているウルトラマンのフィギュアとか、チップ&デールのぬいぐるみとか。怪獣の人形も戦闘するんじゃなくて、平和な日常を送るキャラクターとして使っていました。でも、そこで人形たちによるシナリオを考えるようになったから、作品に込めるストーリーとかも考えられるようになったのかなと。フィギュアは今も集めていますし、ぬいぐるみは同い年くらいの友達とかに子どもが出来始めている時期なので最近作り始めていて、友達の子どもが育った時に「昔遊んでいたのはタトゥーの人のぬいぐるみだったんだ」とかで僕のことを知ってくれたら面白いなと思っています。
plus 1.近々の活動について
7月中旬に秋田のセレクトショップ「ウォンツ アンド フリー(WANTS AND FREE)」でポップアップを開催して、初のクッキーとコーヒーを販売します。8月には「ビームス(BEAMS)」の「FUTURE ARCHIVE」との第3弾コラボレーションアイテムとして、個展で置いていた天使のぬいぐるみのスモールバージョンや、時計の新色、Tシャツなどを発売します。8月の末は、前回号から雑誌EYESCREAMの誌面でスタートしたセリフなしの4コマ漫画の連載に紐づいた個展を開きます。4コマ漫画は書籍化もされるので楽しみです。
Photography:Suguru Tanaka
Creative Direction:Kohei Suda(Peeps)
Text&Edit:Shinya Hayashi(FASHIONSNAP)
Sponsorship:THE CAP
■TAPPEI
タトゥーアーティスト/グラフィックデザイナー
1993年生まれ、大阪府出身。幼少期より絵と刺青に興味をもち、彫り師を志す。神戸芸術工科大学アート・クラフト学科を退学し、タトゥーアーティストとして活動を開始。
2014年から拠点を東京に移し、原宿のセレクトショップCANNABISでのスタッフを経てグラフィックアーティストとしても活動する。その後、中目黒にタトゥースタジオ兼オフィスTAPPEI ROOMを設立。2022年にはNIKEやUNDERCOVER、BEAMSなどとのコラボレーションも行う。
2023年には初の海外でのタトゥーゲストワークや、EYESCREAM誌面での4コマ漫画連載も開始。ジャンルレスに活動を行う。
SNS:Instagram/Twitter
■ザ キャップ(THE CAP)
国内で展開する「ニューエラ(New Era®)」を厳選し、いまのトレンドから定番まで展開するコンセプトショップ。店内は全てニューエラで構成されており、またTHE CAP別注モデルを数多く揃える。5月11日に都内初の路面店を渋谷・宇田川町にオープンした。
■THE CAP TOKYO
所在地:東京都渋谷区宇田川町36-1 1階
公式サイト
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