タカヒロミヤシタザソロイスト. 2022年春夏コレクション
Image by: FASHIONSNAP
「タカヒロミヤシタザソロイスト.(TAKAHIROMIYASHITATheSoloist.)」2022年春夏コレクションのテーマは「PAUSE≒PLAY」。ファッションを走り続けていた宮下貴裕が、あえて一度立ち止まり「PAUSE(一時停止)」することで「PLAY(再生)」が生まれるという逆転の発想により、自身の心情を反映させた。「己の存在を振り返り、全てを見つめ直して創り上げた」という、宮下の心の解放となったランウェイショー。
3シーズンぶりの「再生」ランウェイ
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ソロイストによる「再生」の舞台はホームである東京。コロナが本格化する前に開催された2020年1月のパリ以来3シーズンぶりのランウェイで、東京では2017年10月以来4年ぶりのショーとなった。新木場の大型スタジオ「GARDEN 新木場FACTORY」に、50メートル以上の長い直線ランウェイを用意。その脇にクラシカルな黒い椅子が間を空けて並び、業界の重鎮達が押し寄せた。
複雑な構造のスーツと5本指ブーツ
スロー再生のようにゆっくりと歩くモデルたち。ファーストルックはショールカラーのベストで、裾や襟の一部が折り返されていたり裏地が身頃から大きくはみ出していたりと、ソロイストらしい難解なストラクチャーに視線が惑わされる。首元はニットとシャツとタートルネックを重ね、ベストの裾の下にはMA-1のディテールを取り入れるなど、既存の枠にはまらないギミックが満載だ。スラックスは膝の切れ込みから脚を出し、ハーフパンツのようにスタイリング。頭には「Listen To The Soloist」と書かれた紙袋が被され、アノニマスな雰囲気を醸し出している。
序盤の3体はそれぞれが複雑さを極めた構造となっているが、ベースとなっているのはグレーのスーツ。ソロイストならではの正装といったところだろうか。足元で目を引いた5本指ブーツは、ソロイストと「スイコック(SUICOKE)」 、そして「ヴィブラム(Vibram)」のトリプルコラボだという。
象徴的な「PLAY/PAUSE」ボタン
続くルックも、デストロイド加工が施されたニットポロがダウンベストとドッキングしていたり、一度仕立てた服を再び縫い合わせるといったアップサイクルのアプローチ、抽象的なグラフィックやレースの大きな付け襟、脚入れの方法によって数通りのデザインになるパンツなど——特定のジャンルには属さない独特なスタイルが続く。
今回のテーマを象徴する「PLAY/PAUSEの」ボタンをグラフィックで配したアイテムも、中盤で1体のみ登場。フィナーレは一転し、再生と開放をより強く感じさせるスピーディーなウォーキングのモデルたちが印象に残った。
一時停止して見つめ直したのは宮下自身
ソロイストがスタートしたのは2010年。宮下が当時のインタビューで語った「変わらずしても、変わっても、ほんの少し後ずさりしても、やっぱりこれは"宮下の服"といえるものがデザイン」という言葉は、10年以上が経った今も色褪せない。宮下が一時停止して見つめ直したもの。それは常に"ソロイスト(独奏者)"である宮下貴裕そのもの。ストイックに極限まで突き詰める宮下の今の服作りは、立ち上げ初期の狂気ともいえる熱量さえも今なお超え続けている。
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