漆黒の空間に刺す無数の光——「ジバンシィ(GIVENCHY)」のミステリアスなランウェイを彷彿とさせる演出で、2021年秋冬コレクションを日本で初披露する展示会が東京都内で開かれました。初日に訪れた、日本のアンバサダー片寄涼太さんとともに、気になる新作をチェックしていきます。
■漆黒のショーをイメージした展示会場
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ジバンシィの2021年秋冬コレクションは、クリエイティブ・ディレクターにマシュー・M・ウィリアムズ(Matthew M Williams)氏が就任して以来、初めてショー形式で発表。今年3月のパリコレ期間中にオンラインで配信され、巨大なスタジアムのような舞台に登場したメンズとウィメンズのフルコレクションが注目を浴びました。
8月の店頭展開に先駆けて開催された展示会は、ショーのムードがそのまま持ち込まれ、黒を基調とした空間にコレクションピースがずらり。今シーズンはハイクオリティなウェアやジュエリーから、カジュアルなアイテムや機能的なバッグ、ユニークなシューズまで、幅広く展開されます。
■ショーミュージックがコレクションの鍵に
会場に入った片寄さんがまず足を止めたのは、中央に鎮座した白い人型のモニュメントの前。イギリス出身のアーティスト ユアン・マクファーレンが手掛けた彫刻作品で、最新コレクションを身にまとったユニークなポージングが目を引きます。
奥の壁には、迫力のコレクションムービーが流れています。「何か起こりそうな、ドキドキする音楽ですよね」。アーティストとして活動している片寄さんが最初に興味を持ったのは、やはりショーミュージックについて。テクノ界の重鎮ロバート・フッド氏が制作したオリジナルで、没入感のある演出とともに、今回のコレクションで音楽が重要な役割を果たしていることを示していました。
■バッグやアクセサリー:機能とデザインが融合
今シーズンの注目は、シグネチャーバッグ「4G」の新作。片寄さんが手にしたのは、スペシャルエディションとして登場するパテッドレザーのバッグです。バイカーのボンバージャケットやカーシートからインスパイアされ、持った時のフィット感が特徴のデザイン。透き通るようなホワイトやライラックカラーがスポットライトを浴びて輝きます。
メンズでは、より機能的なバッグが登場。バックパックはセパレートで使えたり、ボトルホルダーを付けられたり、自由な持ち方が楽しめそう。新生ジバンシィのシンボルであるハードウェアは、今シーズンの新作としてマットブラックが仲間入り。南京錠(パドロック)型のアクセサリーをはじめ、ジャケットの留め具としてもあしらわれています。
■ウィメンズ:様々な表情、不完全な美しさ
2021年秋冬コレクションは、伝統を重んじることと斬新であること、実用性と贅沢さ、マクロとミクロといった、相反する要素をひとつのスタイルに融合。切って繋げる「カットアップ」といった音楽制作に由来するテクニックを、マシュー氏ならではの手法で取り入れています。
目を引くのは、ボリュームのある短丈のファーブルゾンに、タイトなボディースーツや繊細なビジューが装飾されたスカートを合わせるなど、意外な組み合わせ。ショー映像で全モデルが履いていたラバーシューズも展示会に並びました(日本では黒のみ一部店舗で展開予定)。
カラーはブラックやブラウンをはじめ、ライラックやレッドを差し色に。異素材の組み合わせやアシンメトリーヘムなど、一着の中に様々な表情を持ち合わせ、それらが不完全な美しさとして存在しています。
■メンズ:テーラリングと意外なレイヤード
メンズコレクションも同様のコンセプトで、美しいテーラリングをベースとしながらも、あえて目出し帽やラバーシューズを合わせるなどコントラストが際立ちます。レザーやファー、ダウンといった、存在感のあるボリュームアウターが多く提案されました。
今シーズンは「保護する」というアプローチから重ね着のスタイルが多く、またフードやグローブなど肌を隠すディテールが特徴。日本の技術で数百時間をかけて作られたという刺繍とダメージ加工のパーカといった、一見するとカジュアルなデザインでも繊細な手仕事が施されています。
■ファッションと音楽の密接な関係
片寄さんは最後に、メンズコレクションの中から2ルックを全身で試着。ホワイトのスタイルは、ソフトなファーパーカとかっちりとしたロングジャケットの重ね着がポイントに。
一方でブラックのスタイルは、カットワークが施されたTシャツにダウンベスト、ファーキャップにニットの目出し帽を重ねて。それぞれワントーンルックの中に異なるテクスチャーがミックスされ、全く違った印象のスタイルとなりました。
「潔い色使いとか、あえてかけ離れたものを組み合わせていたり、新しいものを受け入れることへのメッセージにも受け取れました。それから、マシューのバックグラウンドとも繋がる音楽のエネルギーを感じたというか、音が聞こえてくるようなアイテムがたくさんあるなと感じました」(片寄涼太)
マシュー氏は今回のコレクションノートで、ファッションについて「身に纏うことのできる音楽のようなもの」または「自身の在り方」とも捉えています。ファッションと音楽の密接な関係を鍵に、今を生きる人の存在感を強めるような2021年秋冬コレクション。混沌とした時代からの脱却を示唆する、ポジティブな提案が込められていました。
■GIVENCHY:公式サイト
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