平成レトロブームも相まってか、コンパクトデジタルカメラや、数世代前のiPhoneの粗い画質をあえて楽しむカルチャー、1980年代後半〜2000年代初頭にかけて流行した青文字系や裏原系を引用したスタイリングを楽しむ若者など、当時を知る人にとっては懐かしさすらあるアイテムがトレンドになりつつある今、1980〜1990年代に発売された「コーチ(COACH)」のアメリカ製バッグ、通称「オールドコーチ」がじわりと人気を集めている。
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コーチは「セカンドストリート」における2024年上半期販売数量ランキングのラグジュアリーブランド部門で8年連続1位を獲得。なかでもバッグがよく動き、同期間における売上数量構成比ではバッグが最もシェア率が高く、33%を占めたという。セカンドストリートを運営する、ゲオホールディングスの担当者は、二次流通におけるコーチの人気の背景として「アウトレットを含む直営店を約180店舗展開していること」を挙げ「その流通量の多さからセカンドストリートでも豊富な在庫があること、ラグジュアリーブランドながらリユース品が約1万円から手に入るという比較的手に届きやすい価格帯で販売されていること」を人気の要因として分析。また、「ミニマルなデザインでブランドロゴの主張も控え目。どのようなスタイルにでも合わせられる汎用性の高さと耐久性の高い高品質なレザーでエイジングを楽しむ要素もあり、何より安価に購入できることが人気の理由なのでは」と言及した。
前述の通り、オールドコーチは手に届きやすい価格帯でありながらも、作りの良さが高く評価されている。多くのオールドコーチに使用されている「グラブタンレザー」は、野球グローブからインスパイアされて開発されたもので、牛革にクロムなめしを施した天然皮革を使用。ビジネスシーンでも長く愛用できるよう、耐久性に優れ、傷が目立ちにくい顔料染めで仕上げられており、頑丈なだけでなく、使い込むごとに美しい光沢が生まれてくるため経年変化(エイジング)を楽しむことができるのも魅力の一つだ。
オールドコーチの中でも、特に根強い人気があるのが、バケツ型の「ダッフルショルダーバッグ」と、曲線的なフォルムが特徴的な「エルゴ」だ。中でもエルゴは、1960年代に生まれ、90年代にアイコニックなスタイルとして復刻。2000年代からよりモダンにアレンジされたことで人気が再燃した背景を持つ。2023年に生まれたコーチの新ライン「コーチトピア」でも、アーカイヴバッグのシルエットを再解釈した新たなアイコンとして現行品が販売されており、新ラインでのエルゴの再フィーチャーをきっかけに、それ以前に発売されたエルゴにもスポットが当たった。「コーチトピア」はローンチから9ヶ月ながらも、ターゲットとしている「ファッションを楽しみながらサステナブルな活動もしたい」というZ世代の購入が多く、手応えを感じているとコーチの担当者は話す。
コーチは循環型のモノづくりとサステナブルな観点から、2023年から愛用されたコーチ製品を再生、再構築、再利用する循環型エコシステム「コーチ リラブド(COACH(Re)Loved)」を始動。過去の商品をクリーンアップしたヴィンテージほど古くない「リストア(restored)」、在庫商品を使用し、コースターなどの製品にアレンジした「リメイド(remade)」、顧客が愛用していたバッグを引き取り、熟練のクラフトマンの技術を駆使してリメイクした「アップクラフト(upcrafted)」など、オールドコーチに“アレンジ”を加えたアイテムを期間限定ストアとオンラインストアで展開している。中でもアップクラフトが人気で、若者だけではなく40〜60代の既存顧客からの人気も根強いという。
コーチは、「グローバルの方向性としても、アーカイヴシルエットから着想を得たアイテムを展開する予定」とし「オールドコーチの雰囲気を持ちながらも、現代のトレンドに合わてモダンにアップデートされた新アイテムをラインナップし、Z世代などの若年層に更にアピールしたい」と今後の戦略についてコメントした。
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