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【ネタバレ注意!】もっと、「グリード ファストファッション帝国の真実」の話
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ここからは、同い年編集部員である「フルカティ」と「マサミーヌ」による、ネタバレありきのゆるい座談会をお届け。「グリード ファストファッション帝国の真実」観劇後の余韻に浸りながらゆる〜くどうぞ。(本当にゆるいです!)
普段はアートやカルチャー関連のほか、東京のデザイナーズブランドなどを担当。7月末までのダイエット中。このダイエットが成功したら「クリスティン・"レディ・バード"・マクファーソン」になるべく髪をピンクにする野望あり。
普段はビューティやコスメ関連の記事を担当。オタク気質で、アイシャドウパレットを肴に酒が飲める。「今月はもうコスメ買わない!」って何回目?サマーコレクション祭りで月末のクレカ請求が恐ろしい今日この頃。
フルカティ:この映画の語り手は、リチャードの伝記執筆を依頼された冴えないライター ニック。伝記執筆のための調査を進めているうちにリチャードの下劣さに気づいてく。私はこのニックが1番ムカついた(笑)!
マサミーヌ:ニックが「これはリチャードさん、結構やばいのでは?」ということに気がつくまで結構時間がかかるよね。
フルカティ:そうだね。それに、最終的には長いものに巻かれてリチャードを英雄として語り継ぐ人になっている。本当のことを知っているのに、それを発信しなかったんだよね。
マサミーヌ:ニックの存在って、正直この映画にはあまり必要がないようにも感じたんだけどどう思う?
フルカティ:個人的な意見だし、意図とはずれているのかもしれないけど、メディアが不都合な真実を隠しがちであることの批判と皮肉なのかなって思いながらみてたかな……。
フルカティ:劇中でリチャードが諮問会に呼ばれて様々な悪事が詳らかにされていくわけだけど、モデルとなったグリーン氏も諮問会に呼ばれたのかな。
マサミーヌ:破産したということは、会社の状況とかを明らかにするためにやったはずだよ。
フルカティ:1番驚いたのは、リチャードが運営していた架空のブランド「モンダ」が、いかにして利益を出していたのか、というのが明らかになっていくシーン。
マサミーヌ:ニックと銀行員との掛け合いのシーンね。ビジネスにおける株の仕組みとか、難しい話になってきたときに「説明しよう!」みたいなシーンがあるのはありがたかったね。そういった点では、「マネー・ショート 華麗なる大逆転」(バットマンスーツがなくてもクリスチャン・ベールは最高!)を彷彿とした。
フルカティ:要はリチャードは、銀行から借りたお金で、9億円の価値がある「モンダ」を買収していたんだよね。
マサミーヌ:ちなみに、モンダ上層部に先に買収金額明示したりしてゆすりを掛けているのでほとんどグレー。
フルカティ:9億円のうち1000万だけリチャードの実費であとは全部銀行から借り入れたお金。だからモンダ買収のために実質、8億9000万円の負債を抱えることになった。じゃあどうやって、負債を返しつつ富を築いたのかというと、モンダの不動産を売って稼いでいたんだよね。
マサミーヌ:つまり、実態は「自分のお店を切り崩しているだけ」ということだったね。
フルカティ:そうそう。
マサミーヌ:アルカディアグループはコロナ禍で息切れして、破産に追い込まれたわけだけど、日本国内でも大なり小なり打撃があったわけで。その時に思ったのは「不動産って大事」。老舗のアパレル企業みたいなところは、結構不動産を持っているんだよね。
フルカティ:そうだね。モンダも不動産があったから利益を出せたわけだし……。悲しいけど、服を売るだけでアパレル企業が大きくなるのは無理なんだなって感じたよ。膨大な数を販売するだけでは富は築けないというのが、悲しいくらいわかってしまった。
マサミーヌ:この映画の象徴的な色として「フューシャピンク」があるけど、よく見てみるとメインヴィジュアルにも、エンドロールクレジットにも多用されていて。すごい皮肉を感じるよね。
フルカティ:リチャードが「女は所詮ピンクが好き」という、すごい解像度の低い理解で生きているのが露呈するシーン、本当にキツかった。
マサミーヌ:本作が描かれている時代から少し経った後に「ミレニアルピンク」って流行らなかった?
フルカティ:あったねー!
マサミーヌ:ミレニアルピンクのネーミングと台頭した背景って個人的には「『ピンク=女』という考えはやりすぎたよね」という気持ちと「いやいや、そもそも好きな色って自由に選んでいいものだよね?」みたいな気持ちがせめぎあって生まれたニューカラーなのかなと思っていて。リチャードの言動をみてそんなことを思い出していたよ。
フルカティ:「そもそも自由よ」という感覚がミレニアル世代へのイメージなのかな。
マサミーヌ:で、話を進めていくと、海外のファストファッションブランドのアイテムってヴィヴィッドカラーのイメージない?いまでこそ、ラグジュアリーブランドもネオンカラーを取り入れているけど、少し前の時代は「ヴィヴィッド=チープ」みたいなイメージがあった気がするんだよね。
フルカティ:ファストファッションブランドを築き上げてきた人たちの心の何処かには「服は、そもそも女のもの」という意識があって「女はピンクが好き」「若い女はヴィヴィッドカラーが好き」っていう認知だったのかな……。
マサミーヌ:暗い気持ちになってきたね……。これからの時代は誰もが好きな色を手にとれる時代になって欲しいよね、ほんと。
フルカティ:ラストシーン、死んだ父リチャードを嫌っていた息子のフィンの語りで幕を閉じるけど、悲しいことにリチャードの傲慢さは脈々と遺伝しているなーという印象だった。せめてラストシーンに希望を見出したかったけど、「もっと早く、もっと大量に」と宣誓している時点で、縫製工場で働く女性たちの賃金が上がることも、パワハラが落ち着くこともないんだなって。
マサミーヌ:「こいつ、父親の傲慢なところを嫌がってたんじゃないんかい!」って私も思ったよ(笑)。
フルカティ:息子が父親を嫌いだった理由は、好きな若い女の子ナオミがパパの彼女だからではなく?
マサミーヌ:そうだったのかな。私は、ただのパパへの当て付けだと思っていた。
フルカティ:なんか、ちょいちょいそんなシーンなかった?ナオミとフィンは年齢も近いだろうし、気になるのかなって個人的には思っていた。
マサミーヌ:フィンはリチャードの口巧者を受け継ぎ、劣悪な縫製工場で働き続けて亡くなった母を持つアマンダもまた、縫製工場で働くことを決意するんだよね。時代は巡るし、そう簡単には変わらないということを突きつけられるラストシーンだったね。
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