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高田賢三と私の37年間 KENZO創設者の横顔 【第3回・最終回】

高田賢三と鈴木三月(筆者)、2019年7月 東京にて

Image by: Yayoi Suzuki

高田賢三と鈴木三月(筆者)、2019年7月 東京にて

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高田賢三と私の37年間 KENZO創設者の横顔 【第3回・最終回】

高田賢三と鈴木三月(筆者)、2019年7月 東京にて

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旅に欠かせなかったものがある。どこに行く時にも必ず持っていったのが、「エルメス(Hermes)」のトランプと、クロスワード系の本、それから手帳2冊。

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トランプは2組セットのもの。時間があるとダブルソリティアを楽しんでいた。上手く全てめくれると、まるで子どものような満面の笑みで「良い事あるかもね〜」と嬉しそう。上手くいかなかった時には「あ〜」としょんぼりして終了するか、「もう一回いい?」と再チャレンジ。そんな時は、私も一緒に盛り上げた。

手帳にはその日あったことや、思いついたものをメモしたり。日記のように書き記していた。

相棒のラゲージは「トゥミ(TUMI)」。今年の1月、私がパリから戻る際、ラゲージが壊れてしまって賢三さんのトゥミをお借りしたのだが、これがものすごく使いやすく、すぐに同じものを購入してしまったほど。お返しする時は、中に日本の食材を沢山詰めてパリに送った。

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賢三さんとの旅は、よく不思議な体験をした。

2019年、京都で神社仏閣巡りをした次の日に、天橋立に行く事になった。天にいらしたイザナギ様が地上のイザナミ様に会うために、天と地をつなぐ虹の橋をかけた地。その懸け橋を渡ってイザナギ様が降りてこられたという神話を聞いたことがある。

そんな話をしながら向かっていた道中、「僕が行くから、きっと虹が見れますよ」と話す賢三さん。同行していた皆が「まさか~っ」と笑っていた。現地に着いて神社にお参りし、天橋立が見下ろせる展望所に上がっていく時。ふいに、賢三さんの顔がパッと明るくなった。「ほらね、見て!」。振り返ると、本当に大きな虹が出ていたのだ。息を飲むような光景に、皆で歓声を上げた。

2019年、天橋立の虹(筆者提供)

思い返すと、富士山の方に行く時に二重の虹が掛かっていたりと、賢三さんの行く先々ではよく虹が出る。

令和元年に行なわれた天皇陛下の即位礼正殿の儀の際、雨が止んで青空が顔をのぞかせ、虹が現れたことは記憶に新しい。そんな、不思議だけど何かの運命のようなミラクルを何度も経験した私は、賢三さんは神の子だったのではないかと思っている。

コロナ禍で外出ができない時期には、YouTubeで昔の映画や日本の歴史など様々な映像を見て楽しんでいた賢三さん。最近ではブッダや神道に興味を持っていた。もう神の世界にお戻りになりなさいと、神様から呼ばれたのかもしれない。

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衣装デザインを手掛けた宮本亞門演出のオペラ「蝶々夫人」

2019年は、本当に心から思い出深い年になった。宮本亞門さん演出の舞台「蝶々夫人(マダム・バタフライ)」の衣装デザインを手掛けた賢三さんは、準備や調整のために毎月のように来日。そのたびに、日本各地を一緒に旅していた。今思い返すと、賢三さんと多くの時間を過ごす機会をくれた亞門さんには、心から感謝している。

(左から)柘植伊佐夫さん、高田賢三さん、宮本亞門さん、鈴木三月(筆者提供)

「蝶々夫人」衣装デザインの調整(筆者提供)

2月、パリの星付きレストラン「パヴィヨン・ルドワイヤン」を貸し切り、賢三さん80歳の傘寿を祝う盛大なパーティー。賢三さんをよく知る新旧たくさんのゲストが集まった。この日のために京都で購入した金色の帯で仕立てたスーツで美しく登場。世界中から駆けつけた友人たちとシャンパンを飲みながら、夜中まで楽しそうに踊る姿が忘れられない。クライマックスは、賢三さんの好きな蝶々を、なんと500匹も用意して会場で放った。実は私、蝶々がこの世で一番苦手。その時ばかりは側にいられず、内緒で——虫除けスプレー持参で——逃げ隠れてしまった。

2019年2月、高田賢三80歳を祝うパーティーの舞台裏にて(筆者提供)

同じ年の10月には、日本で私の会社の30周年パーティーを開いた。賢三さんあっての自分なので、お誘いしたら「もちろん出席しますよ」と。集まった皆が笑顔で、話が尽きないほど盛り上がった。2人でケーキカットをして、たくさん笑って。

2019年10月、C'est chouette 30周年パーティーにて一緒にケーキカット(筆者提供)

なんと、サプライズで賢三さんから素晴らしいプレゼントを頂いた。ひとつは、賢三さんが身につけていた中でも私が一番好きだった「カルティエ(Cartier)」の時計。一緒に時を重ねてきたという意味も込められた、本当に嬉しい贈り物だった。もうひとつは、以前から切望していた絵画。しかも、賢三さんと私のツーショット。後で聞いた話だが、何度も何度も描き直して完成させてくれたのだそうだ。

賢三さんから贈られた2ショットの絵(筆者提供)

あれから、まだ一年しか経っていない。なのに、もう会えないなんて本当に信じられない。形見となってしまった時計は、肌身離さずに毎日着けている。でも思い返せば、たくさんの人に会い、多くの旅をし、思い出を作ることができた奇跡のような一年だったのではないだろうか。とても慌ただしい日々だったが、振り返ると私にとっては素晴らしいギフトだった。

1994年の誕生日に賢三さんから頂いたお手紙は今でも大切にしている(筆者提供)

次のページは▶︎ 高田賢三との最後の会話

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