ケンゾー 2022-23年秋冬コレクション
Image by: KENZO
1970年に高田賢三が最初の店舗を構えショーを行った場所、パリのギャラリー・ヴィヴィエンヌで、アーティスティックディレクターに就任したNIGO(ニゴー)による新生「ケンゾー(KENZO)」がデビューした。ショーではメンズとウィメンズを合わせて60ルックを発表。創業デザイナーに敬意を表しアーカイヴを蘇らせると同時に、NIGOならではのアイデアを注入し、真のワードローブを意味する"REAL-TO-WEAR"を打ち出した。
■高田賢三とNIGO、イノベーターという共通点
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ケンゾーは、1999年に高田賢三がデザイナーを退任した後、ジル・ロズィエ(Gilles Rosier)とロイ・クライスベルグ(Roy Krejberg)、アントニオ・マラス(Antonio Marras)、ウンベルト・レオン(Humberto Leon)とキャロル・リム(Carol Lim)、そしてフェリペ・オリヴェイラ・バティスタ(Felipe Oliveira Baptista)がクリエイションを引き継いできた。
2021年9月に新たなアーティスティックディレクターに就任したNIGOは、高田と同じ日本人というだけではなく、不思議なつながりがある。高田がパリで自身の店舗「ジャングル・ジャップ」をオープンした1970年に、NIGOが誕生。同じ文化服装学院で学び、高田は70年代のパリからフォークロアファッションを、NIGOは90年代の東京からストリートファッションを世界に広め、それぞれ新たな時代を切り拓いてきたイノベーターだ。日本と西洋、ファッションと音楽といった文化の融合や、ライフスタイルと結びついたワードローブに対する哲学も、2人の共通点と言える。
パリファッションウィーク最終日の1月23日、新たなケンゾーの歴史が始まる舞台となったのは、ブランドにとってゆかりの地であるギャラリー・ヴィヴィエンヌ。歴史的なパッサージュで、高田のヘリテージとNIGOのヴィジョンが出会った。
■アーカイヴの花柄や和洋折衷のスーツスタイル
コレクションに一貫しているのは、古くて新しい、タイムレスなリアルクローズ。過去からの学びを得て、高田賢三のアーカイヴから抽出した要素を取り入れながら、NIGOならではのバランスで現代服にリミックスした。
高田を代表するポピーなどの花柄がドレスを鮮やかに彩り、抽象化した花のモチーフはストーンウォッシュのジャパニーズデニムやニットを飾った。グラデュエーションジャケット(卒業生が手書きメッセージなどを集める為の白いコート)には、高田が描いたスタイル画をプリント。また和テイストの柄は、NIGOの師匠である陶芸家・藤村州二による赤絵をアレンジした。NIGOのグラフィカルな感性は、タイガーのモチーフや、日本とフランスの地図の刺繍などにも反映されている。
アーカイヴを参考にしたプリンスオブウェールズのチェックとピンストライプのスーツは、ウォッシュドウールで再解釈。ヴィンテージウェアの収集家であるNIGOの知識は、3つボタンのジャケットといった英国のテーラリングや、80年代のシルエットのスタジャン、フェアアイルニットなどにも注入されている。
テーラリングと作業服を融合し、「非実用的な作業服」といったアイデアをコレクションに反映。作務衣を想起させる短丈の半纏や羽織、茶道の稽古用の前掛けなどを重ねた和洋折衷のスーツスタイルが注目を集めた。
■ポップなアクセサリーで装飾を
スタイリングのポイントは、アメリカンクラシックを日本の視点で解釈したというオーバーサイズのキャスケットやフィールドキャップ。また、アクセサリーとして高田がデザインした猫のぬいぐるみのスカーフを復活させた。
デザートブーツやワークブーツも花柄で装飾。バッグにはアーカイヴのポップブーケフラワープリントなどを用いている。
■音楽はリリース前の「I Know NIGO」
NIGOの音楽のルーツにならい、ショーのサウンドトラックにも着目。NIGOが約17年ぶりにリリースするアルバム「I Know NIGO」の楽曲が用いられた。アルバムには、A$AP Rocky、Kid Cudi、Pharrell Williams、Pusha T、Tyler, the Creator、Lil Uzi Vert、そしてNIGOもメンバーの一人であるテリヤキボーイズ(TERIYAKI BOYZ)が参加。3月に発売される予定で、今回のショーはそのプレビューとしての意味も込められていたようだ。
会場にはファレル・ウィリアムスやYE(カニエ・ウェスト)といった親交のあるゲストらが駆けつけ、NIGOは彼らと同じ視点で客席に座ってランウェイを見届けた。
Pharrell Williams
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