若林恵氏/「週刊だえん問答 コロナの迷宮」
Image by: FASHIONSNAP
コロナで都市はどう変わる?
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― 久しぶりに家を出て渋谷や原宿を歩くと、空き物件がずらりと並んでいて驚きます。コロナによって街はどのように変化していくと思いますか?
飲食をやっている知り合いと話すと、「大きな店を持つことは、リスクでしかないことは明らかになった」という話はやっぱり出ますね。ある程度資本力があるところでも、大箱を構えること自体を考えづらくなっていくのかな、という気はします。そういう意味で言うと、今後はオルタナティブなスモールビジネスやポップアップのようなものが、どんどん優勢になってくるのかなと思ったりはします。
― ネットショッピングも普及し、ショールーミング店舗のようなものであれば広くなくても大丈夫ですから、大きい店を構える必要性は以前ほどないのかもしれません。
所謂スモールビジネスをどれだけたくさん作り出せるのか、というのがこれからの都市マネジメントにおいてはすごく重要な気がします。小さい隙間にどんどん入っていけるプレーヤーが山程いないといけないので、小さいプレーヤーをどうやって増やしていくかというスキームが、これからの経済政策において極めて重要なように思います。「古本屋を始めたい」とか「友達のミュージシャンがライブできるようにライブハウスやりたい」とか何でもいいと思うんですよ。飲食やショップであればフードトラックのようなポップアップ形式のものなども、どんどん後押ししたほうがいいと思うんですよね。
― 期間限定での店舗営業ということですね。
最近読んだニュースだと、海外では裁判所もモバイル化していて、ポップアップで潰れた映画館でやることなんかもあるみたいです。コロナで明らかになったことの一つは、病院のサービスですらポップアップ化できる、ということなんです。少なくともPCR検査レベルであれば、お客さんに店のほうに来てもらうということではなく、サービスをお客さんのほうにもっていくことができるわけですね。
― 確かに、仕事がリモートワークへと切り替わったことをはじめ、あらゆる物事が実は移動可能だったことに気がつきました。
そうですよね。美容師さんなんかもそうだと思います。つい最近読んだ記事ですが、日本の美容学校の生徒は女性が多いのに、現役で働いている美容師は男性の方が多いそうで、その背景には、一度出産や子育てなどで現場を離れると、女性の美容師さんが復帰しにくい状況があるそうなんですね。というのも、復帰しようと思ったらどこかにスタッフとして雇われるか自分で店を構えるかの二択しかなく、そうなると子育て中の方は、かなりの確率で断念してしまうことになると。そこで、個々人の事情に寄り添ったかたちで、もう少し柔軟なやり方で復帰できる方法として、フリーランスの美容師として、美容院の空席を貸してもらってポップアップ的に営業するようなやり方も出てきているそうなんです。そうすると、不動産を構えている美容室も稼働率をあげられるかもしれませんから、お客さんにとっても事業者にとっても選択肢が広がる可能性がありますよね。これからは、こうしたアイデアはますます増えていくような気がしますし、増えて行かないといけないと思います。
― フィジカルな隙間を埋めるスモールビジネスが充実していくと、それはそれで面白そうです。
怖いのは、政府がそういう絵図を描いていなさそうなことなんですけどね。大手だけ残れば経済が回るみたいな考えでいると「残るのはコンビニとファストフードだけ」みたいな話になってしまい、そんな都市、なんの魅力もないですよね。いかにダイバースなものを作るかが大事なんですよね。メガなものからマイクロなものまでが、綺麗なグラデーションで存在する事が都市の豊かさだと思うので。
― なるほど。今日はお時間を頂きありがとうございました!
(聞き手:谷桃子)
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