若林恵氏/「週刊だえん問答 コロナの迷宮」
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昨年末に発売された、編集者 若林恵氏による新刊「週刊だえん問答 コロナの迷宮」。クォーツ・ジャパン(Quartz Japan)での連載をまとめた一冊で、Black Lives Matterから医療崩壊、メンタルヘルス、大麻まで様々なトピックスを取り扱う「ニューノーマルなニュース時評」となっている。
本書がユニークなのは、聞き手も話し手も若林氏が務める「仮想対談」という形式を採っている点。それによって筆者一人の主観ではなく、2つの焦点から「だえん」的に世の中のイシューと向き合うことができる。何が正しく、何が間違っているのかわからない情報洪水の世の中で、「あーでもない、こーでもない」と縦横無尽に考えを巡らせる時間の大切さを、現代に生きる我々に問いかけるように。
本書では触れられなかったファッション・メディア業界のイシューから、発売後に起こった大事件についてまで、若林氏にインタビュー。洞察力に富んだ編集者が語る、現下に再考すべき「雑誌」の機能とその可能性とは?
【若林恵 -Kei Wakabayashi-】
1971年生まれ。編集者。ロンドン、ニューヨークで幼少期を過ごす。早稲田大学第一文学部フランス文学科卒業後、平凡社入社、「月刊太陽」編集部所属。2000年にフリー編集者として独立。以後、雑誌、書籍、展覧会の図録などの編集を多数手がける。音楽ジャーナリストとしても活動。2012年に「WIRED」日本版編集長就任、2017年退任。2018年、黒鳥社(blkswn publishers)設立。
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目次
仮想対談であやふやになる「主観」
― タイトルの「週刊だえん問答 コロナの迷宮」にはどのような意味が?
タイトルは、知人の横石崇君(Tokyo Work Design Weekオーガナイザー)とクォーツでの連載がどんな内容なのかと与太話をしている中で生まれたもので、実際そんなに深い意味はないのですが、「週刊だえん問答」って、うっかりすると「週刊ダイヤモンド」に聞き間違えるのが面白いなとか(笑)。あと、ひらがなの「だえん」という字面がドラえもんっぽくてこれも良いかなと。ちなみに「コロナの迷宮」っていうのは、「ドラえもん のび太とブリキの迷宮」から来ています。
― 「ブリキの迷宮」といえば、ロボットや道具に頼りすぎた人間の末路を描いた作品ですよね。後半にはウイルス的な話も出てきます。
イラストを手掛けて頂いた宮崎夏次系先生にもドラえもんがモチーフというのは伝えていて。「ブリキの迷宮見ました!めっちゃやばかったです」と仰ってはいたものの、絵にはそこまで反映されてない気もします(笑)。造本や段組のデザインは、月刊文藝春秋のオマージュになっています。
― 本書は仮想対談という形式もユニークです。筆者の主観があやふやになり、上下左右、ひいては斜め裏まで様々な角度からイシューを見つめることができました。
「主観性」みたいなことから離れていくことは、今の時代、大切なことなのではないかと考えていて。今って「主観性を持つことが大事」とされがちですが、主観性みたいなものを追求していくうちに、それがどんどん自分から離れていってしまっているような気もしませんか? 主観や客観といった対立を、どうにか緩和できないかなと思ったりするんですね。
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