Image by: 横堀良男
東南アジアの最新情報を綴るコラム「ジャラン ジャラン アジア」。1年間の3分の2以上を東南アジア諸国で過ごし、契約バイヤーのほか、ポップアップショップ、展示会出展、ファッションショーの代理店などを行う横堀良男氏が現地の情報をレポートします。
(文・横堀良男)
ついに私もコロナ陽性になりました。シンガポールに出張に行く予定があり、念のためにPCR検査を受けたら陽性でした。無症状だったことは不幸中の幸いですが、現在はインドネシアの自宅で隔離中です。
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ひとりぼっちで家の中にずーーーーっと籠っているとストレスを感じてしまいますね。日本人がいないので、ビタミン剤1つ取り寄せるのも「これで合っているのか?」と不安になります。結果、友人たちが助けてくれて、食料やビタミン剤を届けてくれました。これまたバイク便で届けてくれるんです。
それにしても、このもらったビタミン剤......メントスみたいですね。水に溶かして飲むそうなんですが、知らずに普通に舐めてしまいました(笑)。
◇ ◇ ◇
前回は、インドネシアのEC市場が成長し続けている、というお話をしました。インドネシアは平均年齢が若いこともありスマホの普及率が高いです。人口が2.7億人と多く、経済も上を向いているため、インドネシアのEC市場はどんどん成長しています。
インドネシアについて話をする際に避けて通れないアプリがあります。それはゴジェック(Gojek)という、インドネシアの配車アプリです。あまり馴染みがないという人も多いかと思いますが、日本と比較するとLINEよりも普及率の高いアプリです。配車アプリと銘打っていますが、簡単に説明すると「なんでも入っているスーパーアプリ」です。
・バイクタクシー
・カーシェア・タクシー
・バイク便
・フードデリバリー(Uber eatsみたい)
・電子マネー(PayPayみたい)
・ネットスーパー・コンビニ配送
・スマホのインターネットチャージ
・薬の通販
・映画のチケット予約
まだまだ他にも機能がたくさんあります。このアプリは社会インフラそのものになっているため、Gojekを使うためにスマホを持っていると言っても過言ではありません。
なぜ、Gojekがここまでのアプリに発展したのでしょうか。
■交渉が面倒
もともとバイクタクシーは、その辺にいるバイクを持ってるおじさんの商売でした。毎度交渉しなければならず、「XXまで行きたい」→「□□ルピアだよ」→「高いよ」という風に交渉をしなければなりませんでした。おじさんによって価格が違ったりして、とにかく面倒。しかし、アプリでは距離が自動で測られて、価格も一発で出ます。ルートも自動で出るので遠回りもできません。
■お釣りが必要ない
バイクタクシーのおじさんも、屋台のおばさんもお釣りを持っていないことがありました。アプリで決済できれば小銭は不要です。これに関しては、日本でもコンビニなどで電子マネーを使う感覚と似ています。
■安いスマホが普及
日本円で1万円くらいの安いスマホが普及しました。日本のようにiPhoneを持っている人はお金持ちです(なのでよく盗まれます、気をつけてください)。安いスマホだと、アプリをたくさん入れてしまうと重くなって動きません。そこで一つのアプリに機能を集約する必要がありました。
◇ ◇ ◇
このアプリが登場したことによって大きく変わったことがあります。それは物流です。
バイクタクシーのお兄さんが、アプリのオーダーによってバイク便にもなるし、フードデリバリーにもなります。人を運ぶか、食事を運ぶか、ショッピング袋を運ぶかの違いです。このバイク便機能を使うことで、ECで買ったものも当日配送ができます。日本でも当日配送や翌日配送が定着してきていますが、ジャカルタではほとんど当日配送です。このスーパーアプリが、都市部のEC利用を後押ししています。この原稿を書いている間にも、友人からGojekで蜂蜜が届きました。冒頭で紹介したビタミン剤もGojekで配送してもらいました。
ジャカルタ市内はGojekドライバーだらけなので、街が渋滞しているとこんな感じです。グリーンの上着のバイクドライバーはバイクタクシーです。
Gojekは社会インフラそのものです。Gojekによって、EC市場が一気にブレイクしたことは間違いありません。インスタを見ていて、「おっ、良いな!」と思ったTシャツが30分後にはバイク便で手元に届いています。ジャカルタでECをやらない理由がありません。
◇ ◇ ◇
日本でも「ストアーズ・ドット・ジェーピー(STORES.jp)」や「ベイス(BASE)」の登場によって、ECを始めることのハードルが下がりましたよね。インドネシアの場合、そのハードルはさらにもっと低いです。商品は何でも良くて、自分で作るパイでも、アリババで買う韓国ファッションでもOK。商品を決めたらとりあえずインスタグラムのアカウントを作ります。前回の記事にも書きましたが、インドネシアの商魂逞しい人たちは、ECがなくてもインスタのDMで物を売ってしまいます。
もしそれで売れたら、その時に初めて人を雇用したりECをオープンします。売れなかったら、静かにそのインスタアカウントを削除すれば良いだけです。中にはすごいことを考える人がいるもので、とんでもないものを売っている人を見たことが何度もあります。
・転売(自社もやられたことがあります)
・偽物の化粧品
・Netflixのアカウント(プレミアムのアクセス権)
なんとめちゃくちゃな!と思いつつも、規制を進めながらインドネシアのEC市場は成長しています。「なんでも売れる!」は言い過ぎかもですが、ものすごくビジネスチャンスが転がっていることは間違いありません。
◇ ◇ ◇
では日本の企業がインドネシアのECで販売する方法はあるのでしょうか?
あります。インドネシアのEC出店を代行してくれる業者さんがあるそうで、SNSなどで検索すると出てきます。高単価なアパレルや雑貨の場合はSNSや越境ECではなく、まずは現地でのイベントに参加することをオススメします。
SNSを見て、名も知らないブランドで高単価の場合は、最初のファンが付きにくいです。そこで現地でポップアップショップや展示会に参加して、熱いファンを獲得するところから始めると体感値も相まってスタートしやすいでしょう。ポップアップショップなどで商品がたくさん売れると、テンションが上がりまくりますよ。ポップアップショップについては、またの機会にこちらで紹介させていただきます。
東京都江東区出身。高校在学中からアパレル業界で働き始め、 その後、アッシュ・ペー・フランス株式会社に入社。27歳で若手ブランドの営業代行業、showroom SIDEを設立、代表に就任。 32歳で海外進出、現在は1年間の3分の2以上を東南アジア諸国で過ごし、契約バイヤーとして活動。 日本からアジア・アジアから日本のポップアップショップ、展示会出展、ファッションショーの代理店も行う。
■コラム「ジャラン ジャラン アジア」バックナンバー
・vol.1:そうだ、東南アジアで生きていこう。借金抱えて自分探しの旅
・vol.2:高級モールは世代交代?ジャカルタのアシュタはなぜ成功したのか
・vol.3:なぜ東南アジアでは合同展示会が少ないのか
・vol.4:イスラム教徒のファッションは?人気の新興3ブランドも紹介
・vol.5:シンガポールのストリート事情、人気のブランド紹介
・vol.6:業界人はここに行くべき!シンガポールのおすすめスポット
・vol.7:実は進んでる?フィリピン マニラのファッション事情
・vol.8:夏休みに東南アジアに行く方法
・vol.9:インドネシアの三越?最も歴史のある百貨店がリニューアルしたので行ってみた
・vol.10:海外進出のヒント?インドネシアで寿司を食べてみた
・vol.11:ECで稼ぐならインドネシア?
【最新話はこちら】
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【ジャラン ジャラン アジア】の過去記事
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