パリで開催された「イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)」2023年春夏コレクションのランウェイショーは、三宅一生のポートレートを会場に映し出す演出からスタートした。集まった多くの観客から自然と拍手が沸き起こり、8月に亡くなった偉大なデザイナーを偲ぶ温かいムードに包まれた。
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客席に置かれていたのは白い紙。これは残反を混ぜた新しい再生紙で、現デザイナー近藤悟史とデザインチームからのメッセージが記されていた。
私たちにとって、デザインは、好奇心に導かれる、突き詰めた探求に基づいたプロセスであり、人々の生活に喜び、驚き、希望をもたらす、もちろん遊び心も欠かさずに。
デザイナー近藤悟史とデザインチーム、三宅一生を偲んで
彫刻から服を作るアプローチ
2023年春夏コレクションのテーマは「A Form That Breathes —呼吸するかたち—」。形の概念を解き放ち、生命を感じるような自由で新しいフォルムを探求したという。
近藤率いるデザインチームは今回、土を使って彫刻を作り、それを布に置き換えて創作されたフォルムを服に表現するという実験的なアプローチでコレクションを制作。その彫刻の一部を拡大したモニュメントが、フロアの中央に設置されていた。
呼吸するドレス
冒頭のパートの「TORSO」シリーズはモノクロームで構成。身体上に彫刻を作るように、一枚の布で立体的なシルエットを作り上げた。
Image by: ISSEY MIYAKE
後半の無縫製ニットシリーズ「LINKAGE」はリサイクルポリエステルを使用し、一部が突出するなどユニークなシェイプが特徴。同じく無縫製ニットの「ASSEMBLAGE」シリーズは透け感が軽やかで、モデルが歩くたびにドレスやスカートが上下に弾む様子が、呼吸しているように感じさせた。
Image by: ISSEY MIYAKE
Image by: ISSEY MIYAKE
Image by: ISSEY MIYAKE
Image by: ISSEY MIYAKE
Image by: ISSEY MIYAKE
Image by: ISSEY MIYAKE
素材にも新しさを取り入れ、100%植物由来の原料によるポリエステル繊維を用いてセットアップを制作。東レとの提携により、原料に石油を使わないことを実現した開発段階の素材で、今後量産化を予定しているという。
希望に満ちたフィナーレ
ショーの終盤は、様々なスキントーンのコレクションピースを着用したモデルたちが、自由な動きでダンス。最後は夜明けが訪れたかのようにフロアが温かい光に包まれ、笑顔のモデルたちが飛んだり跳ねたり、希望に満ちたフィナーレとなった。
ショーを終えた近藤はバックステージで、大きな存在だったという三宅一生について触れ、「ここまで育ててくれた一生さんのフィロソフィーはこれからも大切にしたい。でも、一生さんが作っていたものをそのまま作っていたのでは怒られてしまう。自分らしく表現していこうと思っています」とコメント。また、会場全体を包んでいたポジティブなムードは、冒頭の三宅一生のポートレートに添えられていた生前の言葉とも通ずるものを感じさせた。
I believe there is hope in design. Design evokes surprise and joy in people.(デザインには希望があると信じています。人々に驚きと喜びを与えるのです)三宅一生
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