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「ミュグレー × H&M」発売前におさらい ミュグレーってどんなブランド?

 毎年、ファッション好きを熱狂させるH&Mのデザイナーズコラボレーション。今年は「ミュグレー(Mugler)」とタッグを組み、5月11日に発売される。FASHIONSNAPでは、同コラボがもっと欲しくなるミュグレーの基本知識と今回のコラボの経緯について、ニューヨークで行われたプレスカンファレンスの内容と共にお届けする。

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1980〜1990年代のファッションを牽引したティエリー・ミュグレー

 ミュグレーは、1973年フランスのデザイナー マンフレッド・ティエリー・ミュグレー(Manfred Thierry Mugler)によって設立。今でこそ知られている「ボディポジティブ」「ジェンダーフルイド」「トランスフォーメーション」「コンフィデンス」といった要素をいち早く取り入れ、革新的なブランドとして注目を集めた。肩幅を広く見せるパワーショルダーや、ウエストを絞ることで逆三角形のシルエットを生み出したアイテムは、1970年代から1980年代のファッションをリード。身体の美しい曲線を強調するデザインは、彼がクラシックバレエのダンサーだったことを思い出させる。既存の枠にとらわれない大胆なスタイルは、マドンナ、グレース・ジョーンズ、デヴィッド・ボウイ、ダイアナ・ロスなどが着用することで、人気に拍車をかけた。

 カンファレンスに登壇した、現在ミュグレーでクリエイティブディレクターとして指揮を取るケイシー・カドワラダーは「ミュグレーが表現したいのは自己の解放であり、ミュグレーに身を包めば、様々な自分になることができるということ」とブランドの真髄を表現。続けて、H&M クリエイティブアドバイザーのアンソフィー・ヨハンソンは「ミュグレーはメゾンとして時代を先取りしてきた」とし、「他のブランドよりもずっと前に、多様性、 ボディポジティブ、ジェンダーの流動性を受け入れていた。今ミュグレーのコレクションを見ても、人々の心を捉え、想像力を掻き立てるのも全く不思議ではない」と語った。

左)ケイシー・カドワラダー 中央)アンソフィー・ヨハンソン

ミュグレー氏の意思を継ぐ者たち

 ミュグレー氏の後にクリエイティブディレクターを継いだのは、日本人の母を持つニコラ・フォルミケッティ(現在はユニクロのファッションディレクター)。続いて、デヴィッド・コーマが手掛け、そして2018年にケイシー・カドワラダーがその役職に就いた。ケイシーは「マーク ジェイコブス(MARC JACOBS)」「ロエベ(LOEWE)」「アクネ ストゥディオズ(Acne Studios)」などで経験を積み、ファッションデザインの経験は17年にも及ぶ。

今なおファッションアイコン達を魅了するミュグレー

 ミュグレーは、1980年代から1990年代にかけてファッション業界の中心的な存在として知られているが、現代の若いファッションアイコンにも愛されている。ケイシーが「私にとってこのブランドのレガシーとは、インクルージョンだ」と語るように、エネルギッシュで自信に満ち溢れたブランドのコレクションは、デュア・リパやキム・カーダシアン、ビヨンセ、クロエ・セヴィニーなど、ファッションアイコンが着用することもしばしば。ケイシーは、ミュグレーの新しい世代を「進み続けること、そして大胆でユニークな自己を確立すること」だと定義した。

H&Mがミュグレーとコラボしたわけ

 今回、なぜミュグレーとのコラボを決めたのかという問いかけに対し、アンソフィーは、H&M社内にある「憧れのブランドやデザイナーに関するリスト」の存在を明かした。

「コラボするブランドは、デザインチームのディスカッションでリストアップされます。『いま、最も注目されているブランドで、コラボレーションして欲しいのはどこか』という議題に対して、満場一致でみんなが『ミュグレーとやりたい』と。ミュグレーが1980年から1990年代にかけて行ったことが、後進の若手デザイナーや若い人たちにも響くと考えました」(H&M クリエイティブアドバイザーのアンソフィー・ヨハンソン)

Image by: FASHIONSNAP

 アンソフィーは、今回のコラボが、2022年1月にマンフレッド・ティエリー・ミュグレーが亡くなる前から始まっていたと続ける。

「コラボが決まった時、すぐにマンフレッド・ティエリー・ミュグレーに会いに行き、『ミュグレーが創設し、ケイシーが生まれ変わらせた“ミュグレーの軌跡”に敬意を払いたい』と伝えました」(H&M クリエイティブアドバイザーのアンソフィー・ヨハンソン)

 ミュグレー氏が亡くなった後、ケイシーが引き受けることで今回のコラボは実現。アンソフィーは「H&Mの歴史で、2人のクリエイターと一緒に働くのは初めてのことだった」と話し、「今回のコレクションは、実質マンフレッド・ティエリー・ミュグレーの最後の作品。大変誇りに思う」と振り返った。

ニューヨークの地下鉄に掲出されていた、ブルックリン美術館で開催中のミュグレー展のポスター

 アンソフィーの話を受けて、ケイシーは「アイテムをデザインするときに一番考えることは『どんな人が、どんなふうに使ってくれるのか』」と話し、「今回に関していえば、最大のメリットは誰もが手に取りやすい価格帯ということ。それを踏まえて『私たちの存在を知らない人たちに、何を見せたいのか』を考えた」と今回のコラボの意義について語った。

「ファッションは楽しむもので、幸せを生み出すべきだと考えています。だから『ファッションが、ある種排他的であるべき』という考えはもう古い。今回のコラボでは、ラグジュアリーでエクスクルーシブなものを作ろうとしたし、それらが欲しいと思う若い人たちが手に取りやすい価格帯である必要がありました。H&Mとコラボすることで、全ての人に届くようになればと思っているし、特に若い人たちに楽しんでもらえるかなと思っています」(ミュグレー クリエイティブディレクター ケイシー・カドワラダー)

 今回のコレクションは、ケイシー・カドワラダーが手掛けた近年のコレクションから生まれたヒットアイテムから、創業者マンフレッド・ティエリー・ミュグレーが生み出した作品の限定リメイクまで、一目で「ミュグレーだ」とわかるアイテムを手頃な価格で手に入れられるチャンスとなっている。特に、スポーツウェアのようなライトなアイテムは「ファッションは、一部の選ばれた人だけのものではあってはならない」というケイシーの価値観のもと製作したという。

 スパイラルデニムや星型のイヤリング、コルセットジャケットなど、ミュグレーのシグニチャーアイテムが展開されたことについて、ケイシーは「デザインをする時に、過去にみんなが欲しがったミュグレーのアイテムを、より大衆向けに落とし込むことにモチベーションが上がった」と振り返る。ケイシーのデザイン精神は、ミュグレーとして初めてのメンズコレクションや、スカーフ、トートバッグの展開に繋がった。

「ミュグレーで挑戦してこなかったメンズコレクションを作ることを提案してくれて、とても興奮しました。H&Mの通常のメンズコレクションより幅を持たせられたのも面白みだと思っています。また、スカーフやトートバッグを作ったことがありませんでしたし、ミュグレーにとって初めてのことを模索する時間となりました」(ミュグレー クリエイティブディレクター ケイシー・カドワラダー)

ケイシーとアンソニーのおすすめアイテム

 好きなアイテムについて、アンソニーは「好きなものがありすぎて絞るのが難しい」とした上で、レザーブレザー、デニム、星型のイヤリングをチョイス。「長く愛用できるものが素敵」と話した。アンソニーの話を受けてケイシーはデニムについて「カッティングをクチュール風にしたのがこだわり」とし「今回のコラボのコアと言える」と言及した。一方ケイシーは、インラインでも登場し人気を集めたグリーンのレザートレンチをピックアップ。「あまりレザーは扱ったことがなかったが、H&Mが用意してくれたレザーの完成度に驚き、『あれも、これもレザーで!』とどんどんレザーアイテムが増えていった」と明かした。

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