映画から周辺カルチャーを知ることに喜びを感じたり、ファッションのインスピレーションを刺激されたりする人もきっと少なくないはず。しかし、そうした重要作品ほど、なぜかNetflixやAmazon Prime、Huluといった現在主流の定額制動画配信サービスに見当たらないということも......。そんな時は初心に帰る気持ちでDVDを探してみましょう。埋もれるには惜しい名作にたくさん出会えますよ。
目次
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“見放題”にないからと言って諦めてはいけない名作がある
Netflixに始まりAmazon Prime、Disney+、U-NEXT、UPLINK CloudやMUBIやHuluもつまみ食いしながら、気付けばこの1年で筆者が観た映画とドラマの数は約300本(!)。コロナ禍の影響からかはじめは思考停止できるようなスペクタクル映画に没頭し、次第に興味はカルトムービーや懐かしの名作へと向き、挙げ句の果てには、
「定額制動画配信サービスにない作品こそ今観るべきなんじゃないか?」
という、謎の使命感にかられる始末。それからというものの、DVDパッケージを散財し続ける日々を送っています。定額見放題のVOD(ビデオ・オン・デマンド)にない映画というと、あまり需要のないマニアックな作品なのでは?!と思う方もいるかもしれませんが、実は様々な事情(権利関係の問題や、監督や配給会社の意向など)でサブスク以前の世界に取り残されてしまっている歴史的名作と呼べるほどのタイトルがこの世にはたくさんあるのです。
そこで今回は、ここ最近アマゾンで見つけた映画DVDの中から、ファッション好き、音楽好きの人たちに響きそうなタイトルをピックアック。懐かしの名作から隠れた傑作まで、どれもインスピレーションを刺激してくれる内容だと思います。
早速チェックしていきましょう。
90sムード満載 ハーモニー・コリン関連作品
1990年代のニューヨークのスケーターファッションだけでなく、「ストリート」というひとつのスタイルを定義付けた歴史的名作「KIDS/キッズ」。ガス・ヴァン・サントが製作総指揮、ラリー・クラークが監督、今や「グッチ(GUCCI)」のキャンペーンヴィジュアルを撮影しているハーモニー・コリンが脚本、クロエ・セヴィニーも出演しているなどトピック満載ですが、内容の過激さからかカルト映画扱いされています。
DVDパッケージにも使われている、ウサギの帽子を被った少年の写真があまりにもアイコニックな「ガンモ」。先述の「KIDS/キッズ」の脚本を務めたハーモニー・コリンが監督し、当時彼の恋人だったクロエ・セヴェニーがこちらにも出演。あまり語られませんが、チョイ役で登場している天才スケーター、マーク・ゴンザレスのスタイルが最高にオシャレでカッコいいです。
ファッションにも注目したい青春ムービー
1980年代のメンズファッションの絶対的アイコンの1人、マット・ディロンの出世作「アウトサイダー」。本作がアイドル俳優から脱皮するるきっかけに。フランシス・フォード・コッポラ監督作にも関わらず、現在鑑賞しづらい状況にあるというのが不思議ですが、文句なしの珠玉のヤング・アダルト作品です。ちなみにマット・ディロンの作品で「ランブルフィッシュ」や「ドラッグストア・カウボーイ」などは割と簡単に観られるのでこちらもおすすめ。
邦題「バッド・チューニング」よりも、原題「Dazed and Confused」の方が絶対にファッション好き、音楽好きに刺さるはず!と思い続けている名作青春映画。1976年のテキサスを舞台に、当時のやんちゃな少年たちのスタイルが魅力的に描かれています。監督を務めたのは「ビフォア・サンライズ」シリーズや「スクール・オブ・ロック」などを手掛けたリチャード・リンクレイター。若き日のマシュー・マコノヒーやベン・アフレックも出演しています。
HIPHOPカルチャーに触れる
1983年に公開され、ニューヨークのサウスブロンクスから世界に向けてグラフィティアート、ラップ、DJ、ブレイクダンスといった「HIPHOPカルチャー」を発信した重要作「ワイルド・スタイル」。長らくDVDも入手困難になっていましたが、30周年を迎えた2013年にめでたく再発売されました。新たに行われた関係者インタビューも特典映像として観ることができます。
1996年に惜しくもこの世を去った伝説のラッパー、2パックが俳優として出演している映画「ジュース」。上述した「KIDS/キッズ」を1990年代ニューヨークのスケーターファッションの記録とするなら、こちらは同時期のHIPHOPファッションのお手本。類似したテーマを扱った必見作「ポケットいっぱいの涙」や「ボーイズ'ン・ザ・フッド」などのシリアスな作品に比べると内容もポップです。
音楽ドキュメンタリー
音楽をはじめとするカルチャー全般における実験と進化の中心となっていた1980年代のニューヨーク。そのシーンの象徴だった天才ミュージシャン、アーサー・ラッセルのドキュメンタリー映画です。ファッションとは直接関係があるわけではないですが、アンディ・ウォーホルやジャン=ミシェル・バスキアがそうであったように、彼の影響力もまたジャンルを軽々と横断してしまうのです。
1977年にジャマイカで撮影された「ロッカーズ」は、当時全盛だったルーツ・レゲエという音楽、そこに紐づくファッション、そしてラスタファリズムという思想を世界中に広める原動力のひとつとなりました。ジェイコブ・ミラーやリー・ペリーといった伝説的ミュージシャンが本人役で出演している点も見どころです。
実はあの人気作も!まだある「未配信」映画
一昨年惜しくもこの世を去ったフランスを代表する女優、アンナ・ カリーナの輝きを目に焼き付けるならやはり「はなればなれに」は外せません。あのココ・シャネルが芸名の名付け親になったなんていう逸話を置いたとしても、彼女はやはりファッション的なインスピレーションを与えてくれる存在。ジャン=リュック・ゴダール監督の作品は“見放題”と縁遠いのが悩みどころです。
全作品を通じた秀逸なサウンドトラックによって音楽ファンの心を掴み、「パルプ・フィクション」や「レザボア・ドッグス」などのクールなキャラクター描写でファッション好きにも絶大な影響を与えるクエンティン・タランティーノ監督。彼の他作品は比較的サブスクにも登場するのですが、なぜか「キル・ビル」だけは一向に解禁されていません。
今回のラインナップの中では異色ですが、全盛期の内田裕也はやはり絶対的なアイコンだったと思います。「コミック雑誌なんかいらない!」ももちろん名作ですが、同じく彼が主演し、レゲエを大胆に取り入れた怪作『餌食』はDVD化すらされておらず、機会があればこちらも併せてチェックして欲しい作品です。
今回の選者は...
ワタナベ ヨウスケ
ファッションカルチャー誌でエディターとして働いた後、現在はデジタルコンテンツを中心としたデザインスタジオ「IN FOCUS」に所属。クリエイティブプロデュース、コピーライティング、プロダクション業務など幅広く活動中。
@yohsuke_watanabe
https://www.in-focus.co.jp
※動画配信の有無は、2021年1月時点の情報です。表示価格は全て各サイトにおける販売価格を反映しています。
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