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アップサイクルファッションを「トヨタ流」に自動化せよ マルジェラ出身デザイナーが目指す服作りの未来

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アップサイクルファッションを「トヨタ流」に自動化せよ マルジェラ出身デザイナーが目指す服作りの未来

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 ウガンダを中心とした途上国に日々大量に届く“寄付“された中古衣料品。その多くは、実際には着られることなく「ゴミ」として廃棄されている。さらに、廃棄されずに流通する一部の中古衣料は破格で市場に出回っているため、地元の繊維産業発展が妨げられているという。

 そんな中、寄付の服をリメイクして「差出人に返す(RETURN TO SENDER)」プロジェクトに取り組み、新たなムーブメントを生み出しているウガンダ発のアパレルブランド「ブジガヒル(BUZIGAHILL)」がいま注目を集めている。手掛けるのは、ドイツの大学でファッションを学び、「メゾン マルジェラ(Maison Margiela)」と「バレンシアガ(BALENCIAGA)」のデザインチームに所属した経験を持つスーダン出身のデザイナー ボビー・コラド(Bobby Kolade)。極論「新しい服はもういらない」時代に、新しいファッションのビジネスモデルを生み出そうとする同氏の狙いを尋ねた。

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ボビー・コラド(Bobby Kolade)
スーダン出身で、ナイジェリア人の母とドイツ人の父を持つ。幼少期はカンパラとラゴスで過ごし、ベルリンのヴァイセンゼー芸術大学(Weissensee)でファッションデザインの修士号を取得した後、「メゾン マルジェラ」と「バレンシアガ」のデザインチームに所属した。独立後2022年にブジガヒルを立ち上げ、様々なプロジェクトを通して同国の衣料品のまつわる社会問題について発信を行っている。ピッティ・イマージネ・ウオモへの参加や高島屋とのコラボレーションなどでも注目を集める。

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サステナビリティはファッションになり得る

── ベルリンの大学でファッションを学び、バレンシアガやマルジェラでキャリアを積むなど、現在とは正反対な「グローバルノース*」のファッション産業にバックグラウンドがありますね。

 バレンシアガを辞めた後、ベルリンに戻って自分のブランドを立ち上げ、約3年間続けました。でも、有名メゾンで働いても、自分のブランドを作っても、ヨーロッパを中心とした「グローバルノース」のファッションシステムの中で服を作ることは、どうしても私のサステナビリティに対する考え方とはフィットしなくて。心の中では、どうしても満たされず、そういった服の製造が“正しくない”ことだという感覚もあったので続きませんでした。

グローバルノース:南半球に多く位置する新興国や発展途上国を指す「グローバルサウス」の対義語として、経済的に豊かな国々を意味する表現。

2025年春夏コレクション

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── ウガンダに拠点を移し、中古衣料品を使用したブランドを立ち上げたのはなぜ?

 厳格なサステナビリティの意識を持って服を作るためには、まずは服になるテキスタイルがどのように生産されているのか知る必要があると考えました。でもヨーロッパのテキスタイルはとても高価で現実的ではなくて。ルーツのあるアフリカの中でも、特に綿産業が盛んなウガンダの繊維産業のリサーチに取り組みました。

 でもそこで知った現実は、ウガンダにある2つ大きなテキスタイル工場は、いずれもTシャツや学校のユニフォームのような決まったものを作ることしかできず、コレクション制作に必要な多彩でハイクオリティなテキスタイルは国内で調達することができないということ。パリで服作りの壁にぶつかり、ベルリンで立ち上げたブランドも閉め、活動拠点を移した先のウガンダでは生地が生産できず、意気消沈としていた時に、ウガンダには大量に衣料品が余っていることに気がついたんです。

ウガンダを拠点にする理由を聞かれて、「ウガンダのパイナップルが大好きだから!」と即答するお茶目な一面も持つボビー。 

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── 「古着を再利用すること」が目的ではなく、服の材料を探す中で偶然古着に出会ったんですね。先進的なサステナビリティに加え、ファッションブランドとして魅力的なデザインを両立している点もファッション好きに刺さるポイントだと感じます。

 ありがとうございます! 簡潔に言えば、一番大事なのは「サステナビリティがかっこいいファッションになり得る」ということを表現したいんです。背景やストーリーありきではなく、何も知らないお客さまがお店で見かけてまず「超かわいい!」「かっこいい」と思う服を目指しています。

BUZIGAHILL 2025年春夏

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BUZIGAHILL 2025年春夏コレクション

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「クリエイション」のヒントは、ムードボードではなく材料の中にある

── どのような原材料の古着が手に入るか次第で、作るものが変わってくると思いますが、各シーズンのデザインはどのように決めているんですか?

 まずは古着が集まらないことにはクリエイションがスタートしないので、ベール(大量の古着をまとめて圧縮し、輸送しやすくしたもの)を開けてみないと何が作れるかわからないんです。なので、手に入れた素材を見てから、それをどのように発展させていくことができるか考えていきます。

 とはいえ、2025年春夏コレクションで9回目のコレクション製作になったので、現在に至るまでにある程度自分たちの中に定番のテクニックや得意なデザイン手法を確立しています。新しい素材を手に入れたら、私たちが持っているテクニックと照らし合わせながら素材の新しい発展の仕方を模索します。

複数の古着のコラージュしたトップスや、一度解体したものを再構築したジャケットなどは定番として展開。他のアイテムにもテクニックを活用している。

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── ビッグメゾンとはデザインフローから大きく異なりますね。

 最も大きな違いはコレクションの発端となる「レファレンス」がないことだと思います。通常はムードボードのようなものからコレクションやデザインの方向性を定めていくと思いますが、僕たちの場合は、「どんな古着が調達できるかどうか」から始まり、レファレンスになり得るのは自分たちが過去に発表したコレクションだけなんです。

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── マルジェラやバレンシアガでの経験が活きている瞬間はある?

 ないですね。在籍していたのもかなり前ですし、正直学校で学んだことやメゾンブランドで学んだことと今向き合っているものは、同じファッションでもコンテクストが全く違っています。作りながら、一から新しく学び直していっている感覚です。マルジェラも古着を再構築した服作りをしていましたが、考え方や目指すものが大きく異なるのでやはり別物という感覚が強いですね。

── 表面的なサステナビリティに取り組む企業も多いですが、現在のファッション業界にとって最も必要なサステナビリティの考え方はなんだと思いますか?

 難しい質問ですが、極論を言うなら、「すべての生産を止める」必要があります。サステナビリティは“トレンドワード”ではありません。世間ではややその言葉を軽薄に使い過ぎていますが、もう少し深刻な現状に対して深く考えるべきだと思っています。

── 2025年春夏の新作では、ウガンダの難民キャンプの女性たちが南スーダンの伝統的な手刺繍の作品を販売している「ミライヤプロジェクト(The Milaya Project)」*とのコラボレーションを発表しました。

 2017年に「ナショナルジオグラフィック(National Geographic)」の記事を読んでミライヤプロジェクトの存在を知り、自分でオファーを送りました。

 彼女たちは南スーダンからウガンダへ、スーツケースの代わりに南スーダンの伝統的な手刺繍が施されたベッドシーツに最低限の荷物だけを包んで逃れてきています。ブジガヒルも刺繍やパッチワークのテクニックを活用しているので親和性があるし、中古衣料品の問題以外にも、ウガンダやグローバルサウスの様々な問題をブランドを通して発信していきます。

ミライヤプロジェクト:ナショナルジオグラフィック専属フォトグラファーのノラ・ロレク(Nora Lorek)と、ライターのニーナ・ストロクリッチ(Nina Strochlic)が立ち上げた非営利団体。ウガンダの世界最大規模の難民キャンプ「ビディビディ」の女性たちが手掛ける伝統的な手刺繍を施した作品を販売。売上の100%が同団体の活動に還元される。

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── 全てのアイテムにつけられた「RETURN TO SENDER」というメッセージがとても印象深いです。ブランドの発信で目指すものは?

 「ファッションとして魅力的なアイテムを作りたい」という想いと同時に、南北問題に対する問題提起を行うことが服作りの一番の目的です。これはグローバル・ノースだけではなく、ファッション産業全体、そしてその他の製造業に対しても伝えていきたいし、変化を期待しています。

アップサイクルファッションの「トヨタ流カイゼン」を目指して

── 今後のブランドの展望を教えてください。

 ハイテクな工場施設を立ち上げ、アップサイクルをもっと高度な技術で「ジドウカ(自動化)」したいです。今は手作業のアナログな部分が多いので、指示出しや制作をする各個人の能力にとても依存してしまうのが課題です。今掲げているテーマは「自動化」ですが、以前は「カイゼン(改善)」でした。

── 日本語の「自動化」と「改善」?

 事業をスケールアップさせてハイクオリティな仕組みを作っていく方法を勉強するにあたり、“ジャパニーズスタンダード”な「トヨタ流カイゼン」*から強く影響を受けています。現在は採用も強化していてメンバーもどんどん増えているので「カイゼン」しないといけないことが山積みで…。チームでミーティングする際も必ず見える位置に「カイゼン」と書いて置いていました。カイゼンってちょっとドイツ語みたいで気に入っているんです(笑)。

トヨタ流カイゼン:「問題解決」を強みとするトヨタ社が提唱する、製造業の生産現場で、従業員たちが意見を出し合いながら行うボトムアップ型改善活動。業務効率化による生産性向上、製品やサービスの質向上、従業員のモチベーション向上を目的に実践される。

── 「アップサイクル」には、なぜか「手仕事」のイメージが浸透していますよね。

 高い技術で作られたものを提供していきたいのはもちろん、ありがたいことにたくさんオーダーを頂いても、現在の仕組みでは生産が追いつかないんです。アップサイクルというビジネスモデルをスケールアップしていくためには、オートマティックにハイクオリティなものを作ることができる仕組み作りは不可欠です。

 セカンドハンドの原材料を使用したアップサイクルというビジネスモデルは前例がないため、レファレンスのない状態で手探りで進めています。これがもっと個人に依存しない成長の可能性があるビジネスモデルだったら、他の人が真似することもできるし、教えてあげることもできますしね。

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── アップサイクルの「自動化」が進めば、追随する他社が現れて、サステナブルファッションがもっと加速するかもしれません。

 そういう世界になるべきだと思っています。自分たちだけで仕組みを独占しようという考えは持っていません。日本でも高島屋さんのような大きな企業とコラボレーションさせていただけることはとても革新的。“早い”取り組みだと思うので、もしこういった機会をきっかけにいいなと思ってくれた方がいたら、ぜひコピーしてください。みんなでアップサイクルを事業として可能性のあるビジネスモデルに成長していけたらと願います。

(聞き手:橋本知佳子)

◾️ブジガヒル
公式サイト

FASHIONSNAP 編集記者

橋本知佳子

Chikako Hashimoto

東京都出身。映画「下妻物語」、雑誌「装苑」「Zipper」の影響でファッションやものづくりに関心を持ち、美術大学でテキスタイルを専攻。大手印刷会社の企画職を経て、2023年に株式会社レコオーランドに入社。若手クリエイターの発掘、トレンド発信などのコンテンツ制作に携わる。

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