ダンサーの柿崎麻莉子
Image by: FASHIONSNAP
「ディオール」のランウェイで踊った経験
ADVERTISING
バットシェバに入るきっかけとなった作品「MAX マックス」には、その後ダンサーとして出演。夢が叶った瞬間だった。「でもカンパニーに憧れすぎていて、ダンサーとして色々な経験をできたことに満足してしまったのかもしれません」。その後バットシェバを離れ、2015年にシャロン・エイアール(Sharon Eyal)率いるL-E-Vダンスカンパニー(L-E-V Dance Company)に移る。「シャロンはもともとバットシェバのダンサーとしてキャリアを積み、独立した振付家。一緒にお仕事をしたこともあって、彼女の世界観をもっと体験したいと思ったんです」。
その後、L-E-Vの一員として「ディオール(DIOR)」の2019年春夏コレクションのショーにも出演。テーマは「身体の解放」。花弁が舞い落ちる中、躍動感あふれるパフォーマンスを披露した。「あれはディオールのマリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)とシャロンという、自分を突き詰めていった二人によるコラボレーション。一過性のものではなく、その後のL-E-Vの作品もディオールが衣装を作ったりと、良い関係性が続いていますね」。
衣装は作品の意図をよりクリアにする仕掛け
普段の柿崎はいたってピュアで自然体。あまり着飾ることを好まない。だが、創作における衣装選びは重要だと語る。「衣装を着るといつも、リハーサルの時よりも作品の狙いがクリアになると感じます。衣装や音楽が加わることでヴィジョンの幅が狭まり、その作品の世界観が徐々に構築されていくんですね。だから自分の作品で衣装を決める時は毎回すごく悩みます」。
「私はダンサーの体がすごく好きだから、あまりヒラヒラがついていない衣装が一番! やっぱり面白いのは体だから。だけどその設定をズラすのも面白いと思っています。あえて大きめのシャツを着たり。今は色々なブランドの服を着せてもらう機会があって、強いこだわりを持って作られた服には特に影響を受けます。作り手の意志が、服と一緒に自分の体についてくるような気がするから」。
出産は私が今までした何よりもダンスだった
2021年に出産を経験。その時の感動を柿崎はこう語る。「この身体の中に命を運ぶことができるなんて『人間ってやっぱり魔法を使えるんだ!』って思いましたね。体の動きも、骨の軋みも、声も、内部で起こる痛みの感覚でさえ、同じ目的のために限界を超えていく。意外と思考は冷静で、それもすごくダンス的。『こんなに自分が動物だと思える瞬間がまだ残っているんだ!』と思ったし、あれは私が今までした何よりもダンスでした」。
1歳の子どもと暮らしながら今、彼女が新しく学んでいるのは「バカなダンス」。「パンツを見せたり、お尻を振ったり、毎日子どもと踊っているんです(笑)これまで真剣にダンサーとして仕事してきて、人前で踊る時の緊張もあったから、そういうバカな踊りをできるとは思っていなかった。子どもは私が何をやっても一緒に楽しんでくれるし『私、こんな踊りができたんだ!』って嬉しくて(笑)だから今後の作品でそれを生かしていこうと思っています」。
芸術や文化を気取らず楽しめるように
「私の身体は魔法が生まれる場所」と柿崎は語る。それを実感するのは、出産の時だけではない。「もともと身体は宇宙や自然のように、人間よりもずっと大きく豊かな存在。まだ解明されていない、奥深い存在というイメージがあります。実際、身体を動かすことで感情が生まれたり、その人の世界が変わったりすることってあるんですよね。私たちの生きている世界なんて、自分がどういうふうに世界を感じているか次第だから。身体を動かすことで世界を変えることができるんだったら、それは魔法だと思います」。
2021年にはパートナーの地元である熊本に、カルチャーセンター「beq.Inc」をローンチ。「熊本には、素晴らしい自然があります。自分も田舎育ちだし『こういう場所で生きたいな』と思ったから、そこに『場』を作ることにしました。劇場やライブハウスに対して、敷居が高く感じる人も多いので、みんなが自然体で楽しめる場を作りたくて。もう『東京に来なきゃ何もできない』という時代じゃないし、ダンスに限らず面白いものを作って、若いアーティストがどんどん誕生するような場所になったらいいな」。
柿崎麻莉子(Mariko Kakizaki)
香川県生まれ。幼少期は新体操に励む。筑波大学入学後コンテンポラリーダンスと出会う。 2011年、韓国国際ダンスフェスティバル(KIMDC)にて金賞受賞。2012年、イスラエルのダンスカンパニー「Batsheva Dance Company ensemble」に入団。2013年、香川県文化芸術新人賞受賞。KAGAWAアンバサダー。2014年、Jerusalem Dance week competitonにて振付作品が受賞。2015年、「L-E-V Sharon Eyal | Gai Behar」に入団。2020年、第14回日本ダンスフォーラム賞受賞。2021年、第15回日本ダンスフォーラム賞受賞。2022年、熊本にカルチャーセンター”beq.Inc"をオープン。
<今後の公演スケジュール>
【出演作品】
「パフォーミングアーツ・セレクション 2022」
9月8日 高知県立美術館ホール
10月7日 まつもと市民芸術館 実験劇場
10月15日 いわき芸術文化交流館アリオス 中劇場
10月30日 りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 劇場
11月1~2日 吉祥寺シアター
11月27日 熊本県立劇場 演劇ホール
12月11日 山口情報芸術センター スタジオA
【振付作品】
10月15~16日 アステールプラザコンテンポラリーダンス公演 TRY A DANCE vol.17 @JMSアステールプラザ 多目的スタジオ
11月5~6日 神楽坂 ダンスブリッジ2022 3つの未来 @神楽坂セッションハウス
12月2日 宮内麻衣子との共同創作 @beq.Inc(詳細は公式インスタグラムで後日発表)
柿崎麻莉子:公式サイト
赤の衣装:Long sleeve top ¥19,800、Socks ¥4,290 by babaco(SHOWROOM LINKS)、Camisole ¥27,500 by W/cashmere(SHOWROOM LINKS)、Shorts ¥3,850 by Sloggi(トリンプ・インターナショナル・ジャパン株式会社)・黒の衣装:Blouse ¥34,100 Disem By Silk(XANADU TOKYO)
SHOWROOM LINKS 03-3401-0842
トリンプ・インターナショナル・ジャパン株式会社 0120-104-256
XANADU TOKYO 03-6459-2826
stylist: Hiromi Nakamoto
hair&make-up: Takae Kamikawa(mod's hair)
photographer: Suguru Tanaka (FASHIONSNAP)
videographer: Hiroyuki Ozawa (FASHIONSNAP)
composition & text: Fuyuko Tsuji (FASHIONSNAP)
director: Chiemi Kominato (FASHIONSNAP)
ADVERTISING
PAST ARTICLES
【身体と装い】の過去記事
RELATED ARTICLE
関連記事
RANKING TOP 10
アクセスランキング
イケアが四国エリアに初出店 香川県にポップアップストアをオープン