Image by: FASHIONSNAP(Ippei Saito)
「ベッドフォード(BED j.w. FORD)」が「Rakuten Fashion Week TOKYO 2022 A/W」で新たに取り組んだのは、リアルとAR(拡張現実)の融合。「I am rooted, but I flow」をテーマに、フィジカルショーの新たな可能性を模索した。
デザイナーの山岸慎平は、ARを「未来」だと語る。スマホでコードを読み取るだけで画面の中に本来存在しないものが映る。SFのようだと少年心をくすぐられ、山岸は今回のフィジカルショーにブランドとして初めてARを融合させた。「素敵なショーやかっこいいショーはたくさん見てきたし、いつでもできる。でも今大事なのは、時代にフィットするショーをすること」(山岸)。デジタルに疎く、ARとVR(仮想現実)の違いも分からなかったと話す山岸だが、AR技術のパイオニアであるクレッセント(CRESCENT)に協力を依頼し、ショーを実現させた。
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今回のショー会場は、天王洲の「WHAT CAFE」。ワンフロアで遮るものがない広々とした会場では、モデルのメイクや着替えがパーテーションなどがない状態で行われ、演者と観客が混在した和やかな空気が流れていた。会場に入ると、インビテーションと引き換えに複数のQRコードが印字されたオレンジ色の用紙が渡された。それぞれのコードの下には、モデルの名前が記載されており、コードをカメラで読み取ると画面の中にベッドフォードの新作を身にまとったモデルが現れる。画面の中のモデルの服装はフィジカルショーで着用するアイテムとリンクしており、どこにいてもモデルが目の前にいるような没入感で画面の中でランウェイを楽しむことができる仕組みだ。また、会場には装着するだけで目の前にモデルが現れるARゴーグルが用意されるなど、拡張現実を体験できる仕掛けを揃えた。
Image by: FASHIONSNAP(Ippei Saito)
ショーが始まると、それまでのAR体験での和やかな雰囲気とは打って変わって緊張感のある雰囲気の中、モデルたちがランウェイを闊歩。先刻まで拡張現実の世界に没頭していた観客は、リアルで開催するフィジカルショーならではの空気感を鮮烈に感じることになる。
新作コレクションでは、レッド、グリーンを使用した色鮮やかなボアコートやタイダイ柄のインナーとは対照的に、サーモンピンクやペールブルーなどの淡い色味のアイテムも発表した。また、ピースマークをあしらったアイテムも登場。ロシアウクライナ間の戦争との関連を問われたが、山岸は「『男の子』をテーマに服作りをしているので、男の子が守りたい愛と平和をデザインに落とし込んだ」と語り、直接的な意図はないとした。ショーのフィナーレでは、これまで登場したモデルがそれぞれのQRコードの前に並び、リアルとAR両方を一度に体験できる機会を提供した。
Image by: FASHIONSNAP(Koji Hirano)
東京でのショーを終え、山岸の視線はパリへと向かう。2020年秋冬コレクションでは、「メゾン ミハラヤスヒロ(Maison MIHARA YASUHIRO)」のパリでのショーの時間を借り受け、ゲリラ的にショーを開催。その後、新型コロナウイルスの感染が拡大し、再びパリでショーを開催するには至っていないが、パリへの想いはずっと胸に秘めているという。「デジタルで十分良さは伝わると言われても、やはり現地に行かないと伝わらないものがある」とし、6月に開催されるパリファッションウィークへの参加に意欲を見せた。
そして今回はARを取り入れたが、ベースにあるのはフィジカルショーへのこだわり。「I am rooted, but I flow」という今回のコレクションテーマが示唆するように、山岸は「新しいものは積極的に取り入れていきたいが、そこをメインにしてしまうと根幹の部分がぶれてしまう。ベースはあくまでもフィジカル」とリアルで服を見せることの重要性について言及した。
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