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インフルエンサーコスメやクリーンビューティに柔軟に参入 40代の若さでBCLカンパニーのトップに抜擢された新社長のヴィジョンは?

(左上)大村和重 (スタイリングライフ・ホールディングス BCL カンパニー カンパニーエグゼクティブプレジデント)

Image by: スタイリングライフ・ホールディングス BCLカンパニー

(左上)大村和重 (スタイリングライフ・ホールディングス BCL カンパニー カンパニーエグゼクティブプレジデント)

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インフルエンサーコスメやクリーンビューティに柔軟に参入 40代の若さでBCLカンパニーのトップに抜擢された新社長のヴィジョンは?

(左上)大村和重 (スタイリングライフ・ホールディングス BCL カンパニー カンパニーエグゼクティブプレジデント)

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 スタイリングライフ・ホールディングス BCLカンパニー(以下、BCLカンパニー)の新たなトップに今年6月に就任した大村和重氏。これまで同社のトップは創業時のソニー・クリエイティブプロダクツ出身者が務めてきたが、大村氏は化粧品企業3社を渡り歩き、BCLカンパニーでは10年以上経験を積んだ人物だ。2019年からカンパニーエグゼクティブ兼国内事業部部長として事業を統括し、48歳という若さで社長に昇格した。コロナという未曾有の事態を経験し、従来の強みに捉われない商品開発、組織のあり方を見直したという。トップ就任の意気込みと、今後のヴィジョンとは。

大村和重:スタイリングライフ・ホールディングス BCL カンパニー カンパニーエグゼクティブプレジデント、スタイリングライフ・ホールディングス 執行役員

2007年のBCLカンパニーの前身であるB&Cラボラトリーズ入社。2018年にBCL カンパニーの国内事業部の部長に就任。2019年からカンパニーエグゼクティブを兼任し、2021年6月に社長(カンパニーエグゼクティブプレジデント)に昇格した。同時にスタイリングライフ・ホールディングスの執行役員も務める。

ーBCLカンパニー以前のキャリアと、入社後に携わった業務は?

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 まずは老舗化粧品メーカーに入社し、営業とマーケティングを経験した。その後、新規で化粧品会社立ち上げにも関わり、B&Cラボラトリーズ(現BCLカンパニー)に入社したのは2007年。国内事業の営業とマーケティングに携わった後、2019年からは宣伝部も見るようになった。

ー社長昇格にあたり、どんなミッションを与えられたのか。

 長らく化粧品業界は不況でも比較的安定した売り上げを誇ってきたと思う。しかしながら、コロナ禍のダメージは凄まじく、ブランディング、商品企画、宣伝手法、販路と今までのやり方を大きく変える必要が生まれた。そうした中でスピード感を持って対応することと、10年先を見据えた組織づくりが私に求められていることで、既存の強みを活かしつつ、そこに固執しすぎずに広い視野で挑戦したいと考えている。

ーBCLカンパニーの強みとは?

 トレンドを取り入れた商品開発と、店頭販促を掛け合わせてヒットを作ることが我々のセオリー。グループ内に「プラザ(PLAZA)」があることから、流行の発信地である店舗でのプロモーションと抱き合わせで売ることが当たり前で強みになっていた。

ーその強みを変えていく考えか。

 顧客のニーズも多様化してきて、我々が従来生み出してきた大ヒットを同じように作るのは難しい。昔は広告で露出を増やし購買意欲を促進する方法が中心だったが、SNSやインフルエンサーの台頭に見るように、購買が人起点の発信に紐づいている。売れ方が変わっているのであれば、作り方も変える必要がある。社員には全てまっさらにするのではなく、成功体験に囚われずに広い視野でフレキシブルに挑戦して欲しいと伝えている。

ー成長のために戦略の立て直しが必要とはいえ、長年培ってきたものを変えることに異論はなかったか。

 もちろん、長く会社に貢献してくれているメンバーから様々なご意見をいただく。ただ「変わらなければならない」と頭ごなしに言うのではなく、部署ごとに具体的にどこをどう変えていくのか、そこを丁寧に伝えるようにしている。

ー具体的に改革を考えている点は?

 売り上げや商品開発だけではなく、社内システムや日々の業務においても改善点があると考えている。メンバーからヒアリングの上、より良い形を模索して変更しているが、時には強制的に切り替え・導入する決断も必要。ただ、コロナという争い難い状況だからこそ、変革の必要性の理解を得やすいと考えていて、1年以内に社全体を体質ごと改変したい。

ーコロナの影響もあり業界全体でデジタル強化やOMOの考えが急速に進んでいるが、BCLカンパニーでの展望は。

 ドラッグストアやバラエティショップなど店頭が圧倒的に強みだったことから、正直デジタル領域に関しては遅れをとっている。国内はまずはECの運営に注力し、ライブ配信などユーザーとのオンラインの接点創出にも着手する。これまで手をつけられていなかった購買データの活用も、消費者ニーズに対応していくために本格的に取り組む必要がある。

ー実際に進めた取り組みは?

 デジタルも絡めた新たな取り組みとして、7月に新ブランド「マイロインク(myroink)」を立ち上げた。インフルエンサーのきりまるさんをプロデューサーに迎えたいわゆるP2Cブランド(Person to Consumer)で、人を立てた商品を本人の発信チャネルを通じて売るというもの。これまで店頭プロモーションありきでヒット商品を生み出してきた我々にとって全く新しい経験だった。

「マイロインク」ヴィジュアル

ーどんなところが新しい経験だったのか。

 マイロインクでは、まずはきりまるさんのファンの方々に認知いただき、それが話題化されることで幅広い一般層に商品が届くという流れ。店舗起点ではなく人起点で拡散させる新たな事例となり、学ぶ点が多かった。ブランドデビューから間もないが初速は非常に良い。第2弾として、女優の莉子さんがプロデュースするライフスタイルブランド「ウトリ(utori)」も立ち上げるが、こうした新しい事例にも積極的に取り組みたい。

ー10年前から展開してる海外事業についてはどうか。

 海外事業は中国や韓国、台湾、香港など29の国と地域で展開している。コロナの打撃もあるが、海外事業は両国の政治的な関係がビジネスに大きく関わるところも難しいところだ。韓国はこれまで海外事業の売上上位だったが、現在は売上が全くない状態。来期から現地の販売代理店を変え、新たに売り出していく。実はOMOは海外で先行して進めようと考えていて、インドネシアやマレーシアなど東南アジアの市場においてOMOビジネスが進んでいるため、どういう導線で商品を届けられるのか、オンラインとオフラインの使い方を学んでいる最中だ。

ー中国をはじめ、アジアに進出する日本ブランドは多い。そのほかの戦略地域についての考えは?

 中国は法改正によってインバウンドの成長に歯止めがかかったが、大きな市場ということに変わりはなく、しっかり売上を取りたいと考えている。今狙っているのはインドやトルコのような中東。ここも美容感度が高いユーザーが多く、近年成長が著しいため注視している。実は今好調なのがロシアで、積極的に売っていきたい地域だ。

ーロシアでの好調は意外だった。どんな商品が人気なのか。またなぜ売れているのか?

 市場では韓国コスメのシートマスクなどが既に売れている状態で、アジアブランドの興味関心が高まっていることが後押ししている。ジャパンビューティが全体的に広まりつつあり、我々もその流れに乗りブランドを訴求できた。メイクよりもスキンケアの反応がよく「サボリーノ(Saborino)」や「ももぷり(momopuri)」が売れている。

ー海外事業全体で今後の目標は。

 海外事業の売上シェアは、インバウンド全盛期は全体の20%まであったが、今は全体の10%程度。2030年までの中長期ヴィジョンでは25%まで上げると掲げている。中国は今の倍に成長させ、東南アジアや中東の地域でも結果を出したい。アメリカは現状ハワイのみの展開だが、本土への進出も視野に入れている。

ー11月からアメリカのオーガニックブランド「エルバビーバ(erbaviva)」の総代理店として国内販売を手掛けるなど、輸入ブランド事業もある。海外ブランドの選定基準は?

 現状では、海外の方がオーガニックやSDGsの考えが広まっていて、高品質な製品が多い。日本で同様な商品を作ろうとすると資材調達や製造面でままならないことがある。そのため、日本にはまだないような、ユニークで良いものがあれば取り入れたいという考えだ。地域としてはこれまで欧州がメインだったが中国・アジア諸国も探っている最中で、美容だけではなく食やインナービューティなど将来的にはライフスタイル全体で選定したい。

ー依然として続いているコロナの影響からどう脱却する?

 我々が他の化粧品メーカーと大きく異なる点として、TBSホールディングス(持株比率51%)とJ.フロントリテイリング(持株比率49%)の資本を得ているというのがある。今までこれらの企業のアセットを活用した事業展開はなかったが、それぞれの強みをもってシナジーを生むことが大きな可能性であり今後の肝になるだろう。2社との直接的な協業以外にも、ネットワークを通じてさらなる異業種と繋がることもあるだろう。2030年までに現状の売り上げを2倍にまで引き上げる計画で、こうした協業先のバリエーションの多さを活用しない手はない。

ーこれまで協業がなかった理由は?

 これまではお互いの事業が好調だったことが大きい。コロナによりメディア業は広告出稿が減少し、百貨店や商業施設はインバウンドが減速。一気に厳しい局面に立たされたことで、互いの強みを見直し株主含めて全体的に業績を回復させようというムードになり、ここ2年で急速に協業の考えが広まった。我々としてもチャンスだと捉え、新規事業に対してフレキシブルに取り組む。

ースタイリングライフ・ホールディングス内での協業もあり得るのか。

 グループ会社は、メーカー機能を持つBCL、小売のプラザスタイル、カタログ通販のライトアップ、サロン専売事業のCPコスメティクスの4社があり、いずれも業態が全く異なるため協業可能性を秘めていると思う。構想ベースだが、例えばプラザのプライベートブランド作りをBCLがサポートしたり、ボリュームゾーンがオーバー65歳のライトアップとBCLで組んで、通販で美容分野を開拓したりなどが考えられる。2030年までに各企業でどのようにシナジーを生み出せるのか、取り組みに向けて動き出したところだ。

スタイリングライフ・ホールディングスの企業一覧
・BCLカンパニー(化粧品メーカー)
・プラザスタイル カンパニー(バラエティストア「PLAZA」運営)
・ライトアップショッピングクラブ(カタログ通販事業を運営)
・CPコスメティクス(サロン専売コスメの製造販売)

ー業界全体で広まるサステナビリティについて、現在進めていることは?

 化粧品業界では、春夏・秋冬で商材を入れ替えて、在庫は返品して廃棄するのが当たり前だった。昨年から返品物を検品した上でロハコ(LOHACO)のアウトレット販売ページ「Goエシカル」に商品を卸していて、顧客からも良い反応をいただいている。生産量の面では、そもそも当社は過剰在庫になるよりは欠品を都度補充するという考えで、廃棄にならないように努めているし、物流を含めた資材の削減には常に注意を払っている。5月からプラザ4店舗にサボリーノの容器回収ボックスを設置し、ユーザー参加プログラムにも着手した。直近の課題としては、多少コストが上がったとしても、地球環境に配慮したものを採用するという根本的な考えを、社内でさらに浸透させなければならないと思っている。

サボリーノの容器回収ボックス

ー8月にはBCL初のオリジナルのクリーンビューティブランド「タヴィア(Taviea)」がデビューした。

 タヴィアは私が国内事業部担当だった頃から走り出したブランドだ。これまでヒット商品を短期で育てることがセオリーだった当社としては、長い目で成長させるという点で新しい視点でのブランド。また、ECを中心に販売するのも我々としては新しく、オンラインでの接点創出や発信の仕方など新しい方法を検証していく。

ーではタヴィアをどのように売っていく?

 どのように話題を提供し続けられるか、まさに試行錯誤をしながら成長させていくブランドで明確な勝ち筋のもと動かしているわけではない。クリーンビューティは業界のトレンドではあるが当社のヒットの法則通りには売りにくいカテゴリーで、競合他社の社長からも「難しいカテゴリーに参入しましたね」というお言葉をいただいたほどだが、立ち向かっていきたい。

ーそれでもタヴィアを立ち上げた理由は。

 タヴィア製品のスリーブにFSC認証紙を使ったり、買い替えによるゴミを減らすために大容量を採用したりと、大企業と比べれば小さなことだが、我々としてできるところからサステナビリティに真摯に取り組んでいるブランドだ。確かにすぐに成長するカテゴリーではないが、社内外にクリーンビューティを啓発する観点でも非常に意味がある。来年春から一部の既存ブランドを対象に、成分や資材についてクリーンなものに徐々に切り替える計画も進行中だ。「環境への影響も含めてより良いものを作る」という考えは、化粧品業界に携わるものとして持っていなくてはならないと思う。

ー「より良いものを作る」はタヴィア以外の商品にも反映していくのか。

 化粧品で綺麗になることは当たり前で、それだけではなく使った人が笑顔になったり、「商品を使うことでこんないいことがあった」とプラスに感じられるものに価値があると思うし、その考えはこれまでも、これからも引き継ぐ。一般から寄せられた意見で、介護施設でサボリーノの朝用・夜用のシートマスクを起床・就寝に合わせて使い分けることで、認知症の方が香りの違いで時間を認識できたというのがあり、非常に嬉しかった。こういったサボリーノの経験や、これからのタヴィアでのノウハウを活かして、さらに「環境にもより良い」をプラスした商品を作っていけたらと思う。

(聞き手:平原麻菜実)

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