Video by: FASHIONSNAP
今年のスニーカー市場を振り返って
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F:今年のスニーカー市場を振り返って頂きたいと思います。今年良かったブランドは?
国井:圧倒的にナイキというのは例年と変わらないんですが、ニューバランスも台頭してきているので、ナイキとニューバランスの2強という感じですかね。
F:ナイキだと先ほどもあったようにエア フォース 1が一番売れましたか?
国井:そうですね。年始はコロナの影響によって商品が入ってこなくて、白×白のカラーは即完売する状況が続いて。ようやく最近は落ち着きましたが、まだまだ売れ続けています。定番のカラーが圧倒的な支持を得ると、他のシーズナルのカラーは本来だと動きが良くないという事例が多いんですが、周年で注目されているということもあって、シーズナルのカラーも凄くよく売れた1年でしたね。あとはダンクやエア ジョーダン 1も好調でしたので、やはりコート系が強かったです。
F:エア マックスシリーズはどうでしたか?
国井:メンズに関してはあまりでしたかね。エア マックスはスマホのアプリのアップデートみたいなバージョンアップ的なモデルが多いのが難しいポイントだと思います。僕らの世代は1990年代からエア マックスの進化を追えていて、年代毎に成長する姿を見れていますが、ジェネレーションZと呼ばれる世代の人たちはエア マックスが完成した姿から入っている。2018年に登場したエア マックス 270が初めてライフスタイル向けに開発されたモデルで、以降はライフスタイルモデルとして開発されています。ただ、スポーツブランドとしてエア マックスが良いとわかってもらうためには、本来のパフォーマンスのフィールドに戻り、世界的なスポーツの大会で活躍するようなエア マックスが出てくれば、若い人たちの見方も変わってくるのではないかなと思います。
F:ニューバランスで今年人気だったモデルは?
国井:900番台も人気でしたが、アジア製が凄く売れています。2002や90/60、1906など2000年代ランニングモデルがようやく日本の市場にもハマったかなと。韓国など他のアジアの国では、2000年代を代表するような白×シルバーのカラーリングを履く人が数年前からいました。韓国の流行に敏感なのは女性が多かったので、髪型や化粧を参考にするという流れが最近あったかと思いますが、今年に入って韓国のスタイルを取り入れる男性も増えてきて、白×シルバーのスニーカーを履く人が目立った印象です。白×シルバーのスニーカーは少し前はセールになって、靴好きかファッション好きな人が安いから買うという感じでしたが、今はプロパーでも色々な人が買っていきます。
F:今年はアディダスも調子が良さそうな印象でした。
国井:良くなりましたね。ミタスニーカーズで言うと起点は「ASK(お尋ねください)」で販売したフォーラムで、お客さんや他のブランドの人からも反響があって。それをきっかけにアディダスのジャパンSMUのヴィジュアル制作をミタスニーカーズが携わる形になったんですが、スタンスミスやキャンパスのジャパンSMUがかなり売れています。あとは、ABCマートさんの専売で出している厚タンのスーパースターがかなり売れているみたいです。
F:アディダスが盛り返した理由は?
国井:ボリューム感の話でスーパースターやスタンスミスの方が、今の市場で支持されているバスケットボールのコート系よりも良いという若い人が結構いて。加えて、流行っていると履きたくないという層が一定層いますが、ナイキとニューバランスが人気なので次のモデルを探す際にアディダスは選びやすいんだと思います。
他にもファッション好きの人には白色ソールの「THE スニーカー」というモデルよりも色付きのソールが好まれていて、ガムソールだったり、黒ソール、少し黄ばんだようなソールのモデルが人気なので、それこそサンバだったりが支持されています。先ほど話したABCマートさん専売のスーパースターも色付きのソールですし。ヨーロッパのシューズのルーツを辿ると革靴の影響が大きくて、スニーカーも革靴に寄せてデザインしているので、ブラックやブラウンなど色付きのソールって元々はヨーロッパのブランドに多いんです。実際に色付きのソールのスニーカーを着用している人の話を聞くと次に欲しい靴はローファーだと答えることが多いですし、そういった背景からではないでしょうか。
F:フォーラムの話に戻りますが、ASKの売り方は手応えとして成功でしたか?
かなり成功でした。一番嬉しかったのは、ご用意できたお客さんにだけ金額を伝えて販売しているんですが、金額が漏れていないということ。イベントで友達が買えたという人に話かけてもらったんですが、「友達に聞いてもASKとしか言わないんです」と言っていて。多くの人がASKの企画に徹して協力くれたことがありがたいですし、買い物の枠を超えた楽しみ方を提案できたかなと思います。
F:今年はアウトドアが人気でしたが、トレイルシューズの動きはよかったですか?
国井:アウトドアブームで、キャンプギアや服は売れたかもしれませんが、靴にまではあまり降りて来なかったように思います。ただ、動きが良くなってはきていますね。ミタスニーカーズでは来年から満を辞して展開予定の「サロモン(SALOMON)」は根強い人気があってアウトドアフィールドのベンチマークとして、各社のヨーロッパチームからも話に上がりますし、「ホカ(HOKA)」や「オン(On)」もランニングカテゴリーだけじゃなくトレイルモデルでも注目され始めています。
F:コロナによる入国制限が緩和され、インバウンドも一部戻ってきましたが、変化はありましたか?
国井:あまり動きがよくなかったようなモデルも動き出したり、売れるモデルの幅が広くなりました。顕著に表れているのは、上野って元々男性が多いんですが、インバウンドが戻ってきたことによってウィメンズモデルの動きがよくなったり、問い合わせが増えましたね。ただ、中国の人があまり来れていないので、コロナ前の規模にはまだまだという感じです。
あと気になるのは、海外の友人が来日して「東京よりも大阪の方が面白い」という話をよく聞きます。東京は綺麗になって大きな建物もあって最初は感動するそうですが、ビルに入ればどこにでもあるお店が並んでいて。大阪の心斎橋辺りは個店が多くガチャガチャとした雰囲気が良いみたいです。僕も関西に行った際に見ましたが、心斎橋は昔のアメ横のように活気がありましたし、インバウンド客の数も大阪の方が多いのでは、と思いました。古い部分というかアイデンティティを残しつつ、デジタル看板など最新技術で進化しているハイブリット感が良かったです。
今後のスニーカー市場はどうなるか?
F:2023年のスニーカー市場に話を移したいと思います。
国井:2023年は少し反動がある年になりそうな気がします。サンバなどが人気になったように、チャンキーなシルエットからロープロファイルなモデルへという流れは色々なカテゴリーで求められるようになって、今はカップソールのモデルの方が人気なので「コンバース(CONVERSE)」や「ヴァンズ(VANS)」のバルカナイズドソールのモデルへの需要が高まったり。下駄箱が同じような靴ばかりになるので、ワードローブを広げるためにも、今はポピュラーじゃない靴に注目が集まっていくと思います。そうなるとスニーカーを買うという選択が減ってしまいそうで怖いですが......。
F:ミタスニーカーズとしてはどういった提案をしていきますか?
国井:これまでは「スニーカー屋なので」と他の履物は取り扱いませんという考えでしたが、最近はスニーカー以外のアイテムも増やしています。スニーカーは色々なカルチャーにフックアップされる形で成長していったと思っているんですが、スニーカーが一つのカルチャーとして扱われるようになってきたので、僕らが思うスニーカーのカルチャーと関わりがある物を展開していきます。例えば「コール ハーン(Cole Haan)」のスニーカーをテクノロジーを組み込んだ革靴など。「ビルケンシュトック(BIRKENSTOCK)」「クロックス(CROCS)」「ティンバーランド(TIMBERLAND)」といったブランドの取り扱いを始めたのもそういった背景があります。
F:2023年、注目しているモデルは?
国井:ホカのゴアテックスを搭載した「トー ウルトラ」というアウトドアフィールドのモデルは注目しています。ミタスニーカーズとしては、トレッキングシューズのトー ウルトラと、ティンバーランドの6インチのようなワークブーツの相反する物の提案を増やしていきたいなと考えていて。もっと範囲を狭めれば、最新技術を搭載したハイテクシューズと、数十年前は革新的だったクラシックなモデルといった感じです。今の若い人たちが物を選ぶ感覚は、同じようなコンセプトのモデルからどちらにしようかと悩むわけではなく、極端な話だとスニーカーと革靴で悩むような人が多いように感じます。そうした中でランニングやコート、トレッキング、ワークといったカテゴリーの枠を超えた物を同時に提案できたほうが面白いし、時代にマッチしているのではないかと思います。
F:肌感として、ハイプなモデルよりもブランドの定番モデルを好む傾向が強くなっているように感じます。
国井:そうですね。ここ数年はハイプで派手なモデルをエンターテインメント的に楽しんでいたけれど、ブランドの本質に触れていこうという物の選び方になっているのは僕らとしても嬉しいです。スポーツブランドは競技の数だけシューズを作っているので、あまり知られていないような歴史のあるモデルがあって、そういったモデルへの提案へも繋げられますし。小売として、ハイプなモデルは商品を用意できるかの勝負になってしまいますが、どういった提案ができるかの勝負は一番の腕の見せ所です。
F:最後に来年の目標を教えてください。
国井:コロナの影響でここ数年、コラボやリミテッドだけでなく、インラインモデルの入荷すらスケジュール通りに販売できないことがほとんどでした。予定調和じゃない世の中のほうが面白いとは思いますが、楽しむ余裕がないほどにタイムラインがめちゃくちゃなのが実情です。v6のように発売が1年遅れるモデルもあれば、販売時期がずれ込みすぎて季節感に合っていないもの、他にもクオリティ面の問題も色々あって。ただ、スニーカー市場はコロナ禍でも拡大は続けているので、需要と供給のバランスが合わないという状況です。コラボなどスポットのアイテムは、インラインモデルのインフラが整ってから発売することに意味があると考えているので、ここ数年は積極的には作っていなかったんですが、2023年からはようやくインフラが整ってくると思うのでコラボアイテムを少しずつ展開していく予定ですし、グローバルのプロジェクトも再び動き出すと思うのでしっかりと向き合って存在感をアピールしていきたいです。
あとはもう少し海外への行き来が自由にできるようになれば、色々な国の友達との協業をしていきたいと思っています。コロナや戦争などの影響から「いつか一緒にやろうね」というテンションではなく、「やれるうちにやろう」という考えが強くなっています。“いつか”という考えで後回しにすることを辞めて、常に今できるベストを尽くし続けることが目標です。
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