西武鉄道 30000系車両「スマイルトレイン」の優先席
Image by: 西武鉄道
西武池袋線と西武新宿線を走る鉄道の優先席のデザインをご存知だろうか?30000系車両 通称「スマイルトレイン」には背もたれの部分に3つの座席を繋げるように一筆書きでハートがデザインされており、2座席並ぶと微笑んでいる顔のようにも見える。また真ん中の座席を空けて左右に人が着席すると、ハートで結ばれているように見える工夫がなされている。
30000系車両の開発は、西武鉄道の上場廃止から1年経った2005年12月に同社の再起をかけて始動。当初は男性社員20人が各部署から集められた。しかし「会社の再起を託した本プロジェクトでは、女性社員もプロジェクトチームに入れるべきだ」という西武ホールディングス社長 後藤高志の一声でチーム編成を大幅に変更。11人の女性社員が参画することで、2006年2月に同プロジェクトは再スタートを切った。「30000系車両 スマイルトレインプロジェクト」は、元来現場一筋の男性社員が多い社風を大きく変える出来事だったという。ハートデザインの優先席をはじめ、座席の座り心地や、吊り革の使用感など、「たまご」をモチーフとした内外装デザインの多くは女性メンバーの意見、感性が反映されたもので、「人にやさしく、みんなの笑顔をつくりだす車両」というコンセプトのもと、当時の西武鉄道の"新しさ"を象徴する車両が完成した。
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同車両はプロジェクト発足から3年後の2008年4月にデビュー。ホームとの段差を最小限に納めた床面の高さや、荷物の上げ下ろしが容易になるように微調整された荷物棚などのユニバーサルデザインが評価され、2009年7月には同車両を製造した日立製作所と共に鉄道車両としては初となる第3回キッズデザイン賞を受賞した。
なお、西武鉄道の座席に用いられている「モケット生地」は、鉄道以外の公共交通機関でも数多く採用されている。化学繊維やウールのパイルを織り出して紡がれたモケット生地は、経緯に錦糸が織り込まれていることが多く耐久面でも秀でており、西武鉄道の一部車両では口腔内の治療や洗浄時に使われている消毒薬をベースにした抗菌成分を繊維表面に加工しているという。
運行から14年。「30000系車両 スマイルトレインプロジェクト」チームは解散となったが、ドラえもん50周年を記念したラッピング装飾を施した車両(現在運行中)が話題を集めるなど、30000系は今でも「スマイルトレイン」の愛称で乗客から親しまれている。
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