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進化続けるヨウヘイオオノ、目指した先はロジカルとエモーショナルの間

ブランド初のシューズも

YOHEI OHNO 2023年秋冬コレクション

Image by: FASHIONSNAP

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進化続けるヨウヘイオオノ、目指した先はロジカルとエモーショナルの間

ブランド初のシューズも

YOHEI OHNO 2023年秋冬コレクション

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 ファッションを探求や研究の対象として捉える「ヨウヘイオオノ(YOHEI OHNO)」のデザイナー大野陽平にとって、生み出す表現全てが実験的である。その実、これまで肩周りの構築的なシルエットとシャープなウエスト周りが特徴的なジャケットなど、実用性を備えた新しいフォルムを追求してきたが、2023年秋冬シーズンは「国立科学博物館で発表した先シーズンのコレクションは『造形に対する熱量』を純粋に形にしようと試みたが、今回のコレクションは少し俯瞰した自分自身の生活観や人生観を軸に制作しようと試みた」とコレクションノートにあるように、研究の対象を自身にまで引き上げ、「着用者と服」「自分と他者」「モノと服」など、間にある"関係性"にじっくり向き合った。

 2018年秋冬コレクション然り、プレゼンテーション形式での発表に定評のあるヨウヘイオオノは今回、自身のアトリエの棚の上に並んだアーティストの作品やグッズ、デザインプロダクト、海外のお土産などの「コレクション」に着目したという。プレゼンテーションは、猫や馬の置物や骨などが並べられた澁澤龍彦のアトリエを少しイメージしたという会場で、新作を着たモデルが登場するというもの。価値が認められるものからガラクタのようなものまでをフラットに陳列させた背景には、「単なる洗練されたラグジュアリーファッションを目指すのではなく、素朴でどこか愛おしいものやチープで馬鹿馬鹿しいもの、何か自分でも得体の知れないものなどが含まれているべき」という考えがあるからだとしている。これについて大野は、パリコレをはじめとしたラグジュアリーファッションに対する興味の薄れもあると付け加えているが、工業製品などの人工物から着想を得てプロダクトデザイン的な発想でデザインに取り組んできた同氏は今、値打ちあるものとガラクタといったそれぞれコンテクストを持たない物質を並べることで生まれる関係性(ファッション)に興味があるのだろう。これまで彼の表現の軸には「選ぶ」「創る」があったと思うが、そこに「並べる」が加わったことでファッション表現の可能性はさらに広がりを見せる。押し並べて世の中は相対的であるが、フラット化した世界の中で(フラットに並べたオブジェの中で)、関係性から生まれる新たな価値に対峙しようとする意思が、今回のプレゼンテーションの根底にあるのではないか。

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 アイテムは、「平凡だがどこか愛おしいもの」から連想して、どこにでもありそうな古着を題材に製作したという。だからといって、偏屈なデザイナーの性分故、古着をそのままトレースするというありふれたアプローチは採用しない。あくまで古着はデザインのきっかけであり、見て、触れ、感じた印象、イメージを、彼がこれまで更新し続けてきたクリエイションで捉え直す。バンドTから着想を得たオリジナルグラッフィックのトートバッグはその最たるものだ。また、ビショップ・スリーブでコーデュロイの襟がついたコートに裾が花びらのように広がるシースルーパンツの組み合わせといったフォルムの斬新さは健在で、目のバッジを付けたジャケットでコレクションに違和感を与え、人の足を描いたトロンプ=ルイユ効果のあるラグの前にモデルを立たせたルックは、大野の遊び心を存分に反映させている。

FASHIONSNAP(Koji Hirano)

 また、ヨウヘイオオノ初となるシューズを3型を発表。デザイン、製作を東京発のシューズブランド「セレナテラ(Sellenatela)」 のデザイナー榎本郁栄が担当し、装飾性だけではなく実用性にも配慮したデザインに仕上げた。なお、コラボレーションとしてではなく、ヨウヘイオオノのインラインのアイテムとして展開される。

FASHIONSNAP(Koji Hirano)

 個人的に職人気質の大野が「愛おしい」という言葉を発したことに新鮮さを覚えたが、これもまた関係性に着目するようになったからだろう。大野が得意とするロジカルなプロダクトデザイン的思考と愛着という感覚的思考は一見距離があるように思えてしまうが、彼が新たに目指したのはそこの言語化困難な抽象部分における調和なのではないかと感じさせる。

 パリコレをはじめとしたラグジュアリーメゾンと距離をとることは、マーケットが異なる日本・東京でモノづくりを行う上でしばしば起こりうることだ。ただ自覚あってのことか定かではないが、「並べる」という行為は、ディレクションという観点からラグジュアリーメゾンのクリエイティブディレクター宛ら。もちろん矛盾をつきたいわけではない。以前から展示会やインスタレーションでその片鱗を見せていたが、大野陽平という才覚ある作り手はデザイナーとしてよりも、クリエイティブディレクターとしての振る舞いの方が性に合っているのではないかと改めて思ったほどだ。

 何がトリガーになり、心境の変化があったかは分かりかねるが、2015年にブランドを立ち上げて8年、円熟味を増してきたかに思えた大野のクリエイションはまだまだ進化を続ける。

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