「ヴィクトリアズ・シークレット」の復活ショー
Image by: VICTORIA'S SECRET
ランジェリーブランド「ヴィクトリアズ・シークレット(VICTORIA'S SECRET、通称ヴィクシー)」が10月15日、6年ぶりにファッションショーを復活させた。会場はブルックリンの旗艦店。女性のみで構成されたパフォーマンスや多様性にこだわったキャスティングなど、生まれ変わったショーの内容を振り返る。
目次
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ヴィクシー批判への6年越しのアンサー
ヴィクトリアズ・シークレットは1995年から20年以上にわたり、大掛かりなショーを開催してきた。「エンジェル」と呼ばれるセクシーなモデルたちが広告塔となり、選ばれしエンジェルだけが着用できる宝石付きの「ファンタジーブラ」などが毎年注目を集めた。だが、2018年に最高幹部のエドワード・ラザーク(Edward Razek)がトランスジェンダーやプラスサイズのモデルをショーに起用しないと発言したことが物議を醸し、地上波での視聴率が低迷。さらに経営者による性的虐待の告発などを受け、#MeToo 運動の渦中である2019年にショーを中止した。その後、新たな経営陣のもとリブランディングし、6年ぶりにショーを復活させる流れとなった。
多様性を反映したモデルキャスティング
今回、「性差別主義的」「時代錯誤」「多様性の欠如」といった批判に向き合うため、ブランド側は多様な体型、人種、ジェンダーのモデルを起用。52人のモデルが25カ国から選ばれ、パリ出身で日本国籍を持つ美佳(Mika Schneider)も参加。アドリアナ・リマ(Adriana Lima)、キャンディス・スワンポール(Candice Swanepoel)といった歴代のエンジェルのほかに、トランスジェンダーのヴァレンティーナ・サンパイオ(Valentina Sampaio)とアレックス・コンサーニ(Alex Consani)、プラスサイズモデルのアシュリー・グラハム(Ashley Graham)とパロマ・エルセッサー(Paloma Elsesser)もランウェイを歩いた。後半にはエヴァ・ハーツィゴヴァ(Eva Herzigová)、元フランス大統領夫人のカーラ・ブルーニ(Carla Bruni)といったレジェンド級モデルも登場するなど、多くのサプライズが仕掛けられた。
アドリアナ・リマ
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母娘でのヴィクシーデビューや姉妹共演も
中でも話題を集めたのは、親子でヴィクシーショーへのデビューを果たしたケイト・モス(Kate Moss)と娘のライラ(Lila Moss)。また、人気モデルのジジ(Gigi Hadid)&ベラ・ハディッド(Bella Hadid)姉妹も久しぶりの共演となった。ベラはライム病の療養で2年ほどモデル活動を休止しており、今年9月の「サンローラン(SAINT LAURENT)」のショーで復帰を果たしたばかり。長いトレーンの赤いルックをまとったベラの登場はハイライトの一つとなり、会場から大きな拍手が送られた。
ケイト・モス
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黒人初のエンジェルがサプライズ出演
フィナーレでは、黒人女性初のエンジェルとして知られるタイラ・バンクス(Tyra Banks)が登場。1997年からブランドの顔となり、過去9回のショー出演歴を持つ彼女のカムバックはなんと19年ぶり。ピンクのコンフェッティが降る中、ベテランならではの堂々としたウォーキングを見せ、会場外では花火が打ち上げられるなど華やかなクロージングとなった。
3人のスペシャルゲストがパフォーマンス
モデルキャスティング以外で注目されたのは、ブランド初となる女性のみのライブパフォーマンス。ヴィクトリアズ・シークレットのショーでは毎年ブルーノ・マーズ(Bruno Mars)やハリー・スタイルズ(Harry Styles)など、様々なパフォーマーがゲスト出演をしてきたが、今回はBLACKPINKのリサ(Lisa)がオープニングアクトを務め、ヒット曲「Rockstar」を披露したほか、南アフリカ出身の歌手タイラ(Tyla)が登場。78歳の伝説的歌姫シェール(Cher)がヘッドライナーとして歌声を披露した。幅広い世代にアピールできる大物パフォーマーを揃え、女性のエンパワーメントを印象付ける狙いだ。
リサ
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クルエルティフリーの羽根飾りに賞賛
また、演出や衣装の部分でも、時代を反映した工夫が見られた。これまで恒例であった「ファンタジーブラ」や、出演モデルたちの食事制限やトレーニングを紹介する動画シリーズ「Train Like an Angel」は封印され、ヴィクシーらしいギミックといえば大掛かりな羽飾りのみ。だが、この羽飾りにリアルフェザーは使われておらず、動物の権利擁護団体である「PETA」は鳥のデザインのヴィーガンケーキをブランドに贈り、この取り組みに感謝したという。
ショーがマーケットに与えたインパクト
美の基準が変化する中、より包括的な方向性へとシフトした約45分間のショーは、ブランドの公式サイトや「アマゾン(Amazon)」のプライム・ビデオ、ソーシャルメディア・プラットフォームで配信された。「ショーが復活してうれしい」「ポリコレで面白くなくなった」など賛否両論あったが、「The Business of Fashion」の報道によると、同ブランドのマーケットシェアはショー翌日に7%近く上昇し、ソーシャルメディア上のメンションも前月から5000%増加したという。このリブートが、ブランドの低迷を抜け出す足掛かりとなるのは間違いなさそうだ。今後、タイラ・バンクスと同様にハイディ・クルム(Heidi Klum)やジゼル・ブンチェン(Gisele Bündchen)といった元祖エンジェルの復帰も見られるのか、期待が高まる。
ECサイトではすでに完売のアイテムも
なお、今回のショーはアマゾンと提携し、リアルタイムで商品を販売するSEE NOW BUY NOW形式で発表された。現在ヴィクトリアズ・シークレットの日本店舗はないが、公式サイトからの商品購入は可能。ショーに登場した5つのコレクションはもちろん、ファッションショー関連グッズとして、モデルたちがバックステージで着用していたロゴ入りのローブやTシャツなどを販売中。一部アイテムはすでに完売している。
◾️ヴィクトリアズ・シークレット:公式サイト
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