uka代表取締役CEO 渡邉弘幸氏
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SDG'sやサステナブルという言葉が急速に広り、環境に配慮した商品が続々と登場する中、ふと「このブランド、商品は何につながるのか?」と疑問を持ったことがある人も多いはず。トータルビューティカンパニーの「ウカ(uka)」が、この疑問に向き合い、さらには次世代に健やかで住みやすい地球をバトンタッチできるように、"サステナブルのその先"を見据えたプロジェクトをスタートさせた。その循環の一助を担うシリーズ「リジェネラティブ グッド(Regenerative Good)」をローンチし、第1弾としてヘアケア商品「ウカ イズ シャンプー(uka IZU Shampoo)」および「ウカ イズ コンディショナー(uka IZU Conditioner)」を7月17日に発売する。
このプロジェクトで、「髪が良くなって」そして「地球が良くなる」とはーー。uka代表取締役CEO 渡邉弘幸氏に、地球規模といった壮大なスケールに向き合うその想いを聞いた。
“土壌を整える”考えはウカ初のヘアケアから継承
ーーウカの創業は理美容室であり、ヘアケアには一層のこだわりがあると思います。最初に、ウカのヘアケアとして2013年に誕生したヘッドセラピーシリーズについて教えてください。
サロンを運営しながら日々お客さまの髪と長く向き合う中で、髪の美しさには頭皮が大きく関係すると分かりました。頭皮も肌と同様に、大体28日周期でターンオーバーがあるんです。ただ、外的ストレスや刺激が強いヘアカラー剤、不適切なケアなどによってターンオーバーが乱れると、乾燥してフケやカサつきが出てきたり、うねり毛が生えやすくなる。だから、美しい髪を育てるには、まず頭皮環境を整えなければいけない。そこでヘッドセラピーシリーズを作るときに、「頭皮クレンジング」「シャンプー」「コンディショナー」という3つのテーマを設定して、ケアしていこうと考えました。今でこそ頭皮環境や頭皮クレンジングの考え方は広く知られているけれど、当時サロン発信で発売する商品では珍しかったと思います。
ーーヘアケア開発当初から頭皮に注目されていたんですね。
お客さまがサロンに初めて来店してくれた時、頭皮にトラブルを抱えている場合が多いんです。そこから定期的に通ってくださると、頭皮の状態が徐々に良くなっていく。だから、より多くの方が健康的な頭皮を維持できるような商品を作りたいと考えるようになったんです。
ーー頭皮環境から、次は地球環境へも意識を向け、2021年にはヘッドセラピーシリーズの容器をバイオマス素材にフルリニューアルしました。その想いは?
趣味のサーフィンで、たびたび友人たちと近郊の島に行くんです。東京や付近のビーチは綺麗に清掃されて整備もされていますが、離島など人があまり多くない地域のビーチは、海は綺麗でも、ポイ捨てなどゴミがそのままになっていることも多くて…。そんな場所の近くをウミガメが泳いでいたりするんです。マイクロプラスチックと海洋生物の関係について勉強する機会があったこともあり、自分たちができる範囲だけでも「なんとかしなければ」と思ったんですよね。バイオマスプラスチックが流通し始めたばかりでコストがかかることも承知でしたが、どうにか環境負荷のリスクを減らしながら商品を開発できないかと試行錯誤して素材選びに力を注ぎました。
ーー日常生活で自然に触れ合うからこそ、目を向けることができたということですよね。
ここ最近、いろんな研究者の方々にお会いして、勉強させていただく機会が増えました。そこでよくお話しするのですが、都会にいるとどうしても地球や自然の循環から遮断されてしまう。生産と消費だけを考えていると、ついつい「循環」を忘れてしまって、自然に対する注意が薄れてしまっているのですよね。
ーー昨年は、新しく誕生させたヘナシリーズで、「ヘアカラーや白髪染めのルールを変える」という訴求に加えて、「人・地球・ハートにも優しい」と伝えているのが印象的でした。さらに意識がサステナブルに向いていますね。
当時、お客さまの頭皮環境についてサロンマネージャーと話してると、ケミカルなヘアカラー剤やパーマ剤が頭皮に沁みてしまう方や、頭皮環境が荒れている方が増えているように感じて、「なんとかしないと」と思ったんです。好きなヘアスタイルを楽しみたいというのは当たり前で、それを健やかな頭皮に整えながら実現できないかと。サロンでは元々刺激が少ないノンジアミンのヘアカラーを扱ったり、髪や頭皮に残留したケミカル成分を除去できるようなスパを考案したり、カラー剤の塗布の仕方を見直したり、さまざまに取り組みながら、もっと本格的に悩みにアプローチできるものを作らなければと思うようになりました。
またこの商品の開発にはもう1つの理由があって。ご存知の通り、コロナ禍はサロンを休業しなければならず、お客さまの笑顔を生きがいと感じていたスタッフたちは意気消沈して元気がなかった…。だからこそ、お客さまの笑顔を引き出しながら、その笑顔を見てスタッフの気持ちも“復活”できるような商品を作らなければと意気込んでいました。
ーーヘナといえばインドが有名ですが、沖縄に目を向けたのはなぜですか?
お客さまの悩みに寄り添うためには、ヘナが最適だと思っていた時にヘアスタイリストのshucoさんからヘナをおすすめされました。コロナ禍でインドへ行けない…どう開発を進めるか悩んでいたこともありました。そんな時、ミッドタウンの「ウカフェ(ukafe)」のイベントで知り合った方から、石垣でヘナが生産されていると聞いて。タイミング良く、石垣産のヘナを卸そうと考えている農園の方とお会いすることができたんです。
実際、石垣の主な農業はサトウキビなんですが、ヘナの方が価格競争力が高く、われわれが継続的に仕入れ活用しヘナが循環することで地域経済の活性化につながるのではないかと。また植物成分であるヘナを使うことで、水に流れても環境を汚染しない。髪にも人にも地球にも優しい“ウカ・ヘナ”が誕生しました。
自然の恵みで髪と地球環境を“回復”へ 山・海・人の“うれしい循環”のはじまり
ーーサロンを通じた顧客との密なコミュニケーションが、ヘナシリーズ、リジェネラティブ グッドシリーズにつながります。これらを開発するにあたり、最近の髪や頭皮の悩みをどう分析していますか?
全体的に、アレルギー体質の方や刺激に弱い方が増えたように思います。これは現代の食生活や生活習慣の影響もあるでしょうし、森林に囲まれた日本は花粉が多いというのも背景にあると思います。頭皮のかゆみや赤み、髪のごわつき、きしみなどの悩みはサロンマネージャーとのミーティングでよく聞きます。でも、それでもヘアデザインを楽しみたいお客さまはたくさんいらっしゃいます。われわれはそうした方々に、オルタナティブなものをきちんと提案することが使命だと思いました。
ーーではリジェネラティブ グッドシリーズから新発売するウカ イズについてですが、“現代の頭皮悩み”に注目して、キー成分として取り入れたのが「クロモジ」です。どんな力を秘めているのでしょうか?
クロモジは髪や頭皮を清潔に保つ主成分のリナロールを豊富に含み、高い抗菌力や抗酸化力を持っています。妻の季穂(ウカ代表、トップネイリストの渡邉季穂氏)からもお墨付きで、ウカのヘアケアに取り入れようと考えたんです。商品としては以前から「ウカ シャンプー アンチイッチ」に取り入れていて、今回新たに商品を考えるにあたり、改めて産地を検討していたんです。
ーー今回のウカ イズ シャンプーで使用しているクロモジは伊豆半島の下田で採れるものを採用していますね。
ウカの、かかと用ソックス「ヒールモイスチャー メアリー」で鎌倉のウェットスーツブランドのzeroさんとご一緒しているのですが、zeroの川南さんから下田でクロモジを栽培している方がいると教えていただきました。なんでも、元プロサーファーの海洋学者と言うので、一体どんな方なんだ(笑)と興味津々でお会いしにお伺いして。そこに現れたのが、今回ご一緒している佐藤延男先生。佐藤先生が下田で取り組んでいる海と山の保護活動をお聞きして、大変感銘を受けたんです。
ーー佐藤先生とはどんなお話をされたのですか?
佐藤先生が地元漁師の方々とお話をしたら、皆さん「最近海が痩せてきている」と仰っていたそうです。そこでご自身の研究知見を元に調査をしてみたら、下田の山が植林が盛んなものの間伐が行き届かず、“暗黒の森”が出来てしまっていた。木が育ちすぎると、地面に光が届かずに草花が育たない。それによって腐葉土が発達せず、ミネラル不足になり土や根が弱ってしまう。これが常態化すると、鉄砲雨や大雨なんかですぐに土砂崩れが起きてしまって、それが川に雪崩れ込んで周辺地域の生活にも影響を及ぼし、海をも塞ぐことになってしまうんです。佐藤先生はご自身で山の間伐を進め、下田の山と海を守っているんです。間伐を続けるうちに徐々に山が整ってきて、あるとき小さくて青々としたクロモジが生えてきたんだというお話を聞かせてくれました。
渡邉弘幸、佐藤延男
伊豆・下田の森林
ーー山と海の環境は密接につながっているんですね。
適度な間伐によって地面に光が届き、木々の成長を助ける抗菌作用を持つクロモジが育つということは、周囲の自然環境にとってとても大切なんです。そして強い樹木と植物が育てば土壌が改善し、豊富なミネラルが河川に染み出し、海にたどり着き、プランクトンが活性化して海藻が育ち、魚が戻ってくる。この話を聞いて、クロモジの力については元々知っていましたから、われわれが安定的に下田のクロモジを生産・購入するサイクルが構築できれば、山が綺麗になり、海が綺麗になることにもつながるのではないかと。そして、人の頭皮も土壌のようなもので、健やかな状態に回復すれば、自ずと美しく強い髪が生えてくる。髪が良くなることと、下田の山や海が良くなることも、大きな“循環”ですよね。
ーー商品のローンチに向け、下田にはかなり頻繁に通われたと聞きました。
勉強や調査と言って伺いながら、しっかりサーフィンも楽しんでいるんですけどね(笑)。やっぱりあの美しい海、豊かな緑の山を見ると、正しい状態に回復させて、これからもこの美しさが続いていってほしいと思います。都会の生活だけでは、どうしても自然と隣り合わせの地方の暮らしや、現地の環境、循環から思考が切り離されてしまって、自分たちが何ができるのか・すべきなのかを考える機会が減ってしまっている…。佐藤先生からもさまざまなことを勉強させていただきました。僕らの取り組みによって一気に現状が解決するなんて思っていなくて、できることから始めて、長期的な目線で必ず回復させたいという気持ちで動いています。
ーー新商品のヘアケアには、クロモジ以外にもフノリやヘナ、ツバキ、コメ発酵液といった自然の恵みから得たキー成分を採用していますが、どれも国産のものを厳選していますね。
こういう原料や素材選びは僕たちだけの力ではなく、サプライヤーの方々の協力が大きい。ここ2年くらいは各地に出向いて勉強させていただくことが本当に多かった。率直に、日本国内にこんなにも多様な原料があるのかと驚かされるともに、可能性を感じました。自然由来のものを使っているのは、その方が環境負荷を減らせるし、産地の経済活動の活性化にもつながるという意義もありますが、まず第一に素材自体の力がわれわれが求めているものにマッチしたから。この5つの成分以外にも、ヴィーガン処方の20種類のアミノ酸も配合しています。
ーー具体的にクロモジ以外のキー成分にはどんな力があるのでしょうか?
ツバキはキューティクルを補修してくれるので、ツヤやまとまり、うるおいのある髪に導いてくれます。アンチポリューション効果もあると言われていて、現代のダメージのひとつである大気汚染などから髪を守ってくれるんです。フノリは、商品開発担当からシリコンの代替として使えると聞いて、「あの海苔のフノリ?」と驚いたんですが、使ってみると代替品なんて言い方が失礼なくらいに指通りがよく、軽やかな仕上がり、コンディショニング力が素晴らしかった。ヘナはもちろんヘナシリーズで使用した石垣産のもの。 ボリュームやハリやコシのあるツヤ髪に仕上げてくれます。そしてコメ発酵エキスは、山形県の庄内平野で栽培された米から摂れたものです。庄内平野で400年続く酒造で、乳酸菌を使わずに酵母だけで時間をかけて発酵させたお酒が造られているんですが、とてもまろやかな味わいになるんだそうです。そこで、保湿力に優れたコメ発酵液についてお聞きし取り入れてみたところ、その保湿力は素晴らしいものでした。
【自然の恵みから得た、キー成分の力】
ツバキ:うるおい・しなやかさ・バリア機能
伊豆の利島村で栽培されたツバキから抽出。ツバキ種子油は、髪への吸収性が高く、柔軟性や弾力性を与えるオレイン酸を豊富に含み、乾燥から守る。
フノリ:ツヤ・コシ・まとまり
伊豆の海で育ったフノリを採用。主成分のフノランは天然のシリコンとも呼ばれ、皮膜効果が高く、キューティクルを整える。
コメ発酵液:保湿効果・還元力
寒暖差が大きく、稲作に適した山形県庄内平野で栽培された米を発酵してできたもの。生酛造りで、髪の主成分のケラチンを構成するアミノ酸をたっぷりと含んでいる。
ヘナ:ボリューム・ハリ・コシ
石垣の照り付ける太陽のもとで育ったヘナの枝は、大自然の恵みを取り込み、タンパク質にからみ、ハリコシを与えるタンニンをたっぷりと含んでいる。
ツバキ
Image by: uka
ーー独自の視点でこだわりぬいた成分を多様に取り入れていますが、商品開発で困難もあったのではないでしょうか。
日本全国から探し抜いた原料・成分は、化粧品に初めて配合するものも多かったので、われわれが化粧品登録をするところから始めるものもあり、そこは調整が必要だった。ただ、今回のプロジェクトはサプライヤーをはじめ、OEM企業や役所の方々も「面白いね」と意義を認めてくれて、激励・協力してくださいました。難しい依頼をしているにも関わらず、「やりましょうよ!」と快く一緒に挑戦してくれた。商品の構想からは約3年を費やしましたが、そうした協力がなければ商品化は叶わなかったと思います。
ーーサプライヤーやOEM企業も、環境に対して同様の課題意識を持っていたのでしょうか。
そうだと思います。今回のプロジェクトを通じて、サプライヤーの方々にお会いする機会がたくさんあり、お話を聞いてみると自分たちができることはないかと常々考えていらっしゃったと。例えばボトルの紙巻きは、蒸留して残ったクロモジを活用できないかと相談したところ、やってみましょうと快諾してくださって形になったんです。
気になるラインナップ、注目は?
ーー新商品は、ウカ イズ シャンプー&コンディショナーを中心に、オールヘアタイプやダメージ・エイジングケアタイプ、頭皮ケアアイテムといった多彩なバリエーションが登場しますね。
頭皮に悩みを抱える人や、自分が使うもので自然の回復に貢献したい人など、いろんな人が自由に選べるものを作りたいと考えました。サロン担当からも、お客さまはどんな物が欲しいかというのもヒアリングして、要望に答えられるものをラインナップしました。
ーーウカの商品は香りも評判ですが、今回はどんな香りを作ろうと思ったのでしょうか。
クロモジが生息する下田の山に入って、感動した時の感覚や、森、土、雨、海とのつながりを感じられるようなものにしたかった。そして僕は、佐藤先生が長年取り組んでいる仕事は、何よりも「品のある仕事」だと思っているんです。山で土にまみれながら作業する姿とは正反対に思うかもしれませんが、その意義と熱意、自然を愛しむ姿は品位にあふれてる。そこで、長年ウカの商品を担当してくださっている調香師さんに下田の山で感じた、山、森、雨、土、そしてグレイスフルである香りを作りたいとオーダーをしたんですけど、天然香料のローズやクロモジ、ヒノキ、パチョリをブレンドしたウッディローズの香りを生み出してくれました。
ウカのヘアケアの香りがお好きだと言ってくださるお客さまは多いので、サロン担当からお客さまの香りの好みも聞いてみて、ウッディローズ以外にもいくつか種類を揃えました。暑い日やスポーツ後もすっきりと使えるペパーミント系の香りや、爽やかでセンシュアルなムードの香り、うっとりするような甘さの香りなどです。どれも泡立てた瞬間にふわっとバスルームに香りが広がり、バスタイムを心地良く演出してくれるように調整しています。
ーー商品を実際に試すため、渡邉社長自身も髪の毛を伸ばしていたと聞きました。特に気に入っている商品はありますか?
商品開発の会議で、季穂に「髪が短いのにヘアケアの悩みが分かるのか?」と言われ、確かになと思い伸ばし始めたんです(笑)。それから2年くらい伸ばして、お客さまと同じようにパーマやカラーなどをしながら実際に商品を使い続けました。日本は特に湿気が多く、長い髪を美しく保つのが難しい環境だというのが身にしみて分かりました。結果的に自分が実験体になって試した経験は、商品開発にもとても役に立ちました。
僕自身はダメージヘアタイプがお気に入りです。色々とデザインヘアをして髪に負担をかけてきましたが、これを使い続けてきて、コンディションがとてもいい。今回の商品開発が落ち着いたから今度バッサリ切る予定なんです(笑)。
■商品ラインナップ(一部)
<デザインヘアや外的ストレスのダメージ&エイジングの悩みにアプローチ!......ダメージケアタイプ>
髪がまとまらない、デザインヘアによる傷みが気になる、指通りが悪い、乾燥して固いなどの悩みを抱える人向けのダメージケアタイプ。ツヤと保湿でエイジングサインやクセにも◎。
uka イズ シャンプー フォー ダメージヘア:ダメージヘアやエイジングヘアでお悩みの方へ。ウッディローズの香り(400mL 税込4950円)
<敏感な頭皮にも使えるフケ・かゆみを抑えてくれる......頭皮用マスクが初登場!全身使えるタイプも>
uka イズ マスク フォー スカルプ&ヘア アンチイッチ:敏感な頭皮の方でも使えるフケ・かゆみを抑える、ウカ初の頭皮用マスク。クロモジウォーターの配合率がシリーズ過去最高。ミント、ローズマリー、シダーウッドをブレンドした清涼感の中に少しの甘さを忍ばせて(200mL 同6050円)
ーー“ウカ イズ(ウカ is/ウカ 伊豆)”シャンプーというネーミングは洒落が効いていて、ウカらしいですね。
この商品を通じて、髪と頭皮の回復、環境の回復っていう循環を知ってもらいたいという想いがあります。それをコピーライターさんに相談したら、「ウカ イズ」っていうのはどうですかと。ちょうど僕らの創業背景の理美容室、これまで手がけてきたサロンを考えても、ウカといえばシャンプーやコンディショナーだよね、と思いました。そして今回のプロジェクトに欠かせない「伊豆」への思いも込められている。そんなダブルミーニングを込めて、「ウカ イズ シャンプー」と名付けました。
ーー“洒落”といえば、ボトルの紙巻きにもちょっとした“遊び心”を取り入れていますね。
はい。アーティストのとんだ林蘭さんに、下田やクロモジにまつわるエッセイとイラストを書き下ろしてもらいました。僕は以前から彼女がインスタグラムに投稿しているエッセイが好きで、今回の取り組みで何か彼女の視点を入れてもらえないかとオファーしたところ、「自分はまだ下田やクロモジ、プロジェクトについて知らないから」ということで実際に下田に行ってくれて。そこで感じたこと、得たことを“下田紀行”みたいな形で書いてくれました。
ーーボトルの紙巻きは使用時は外してしまう物ですよね。なぜそこにもこだわったのでしょうか。
環境のことをいくら考えたものでも、商品として「欲しくなる」かどうかは大切ですよね。買って、使って楽しくなければ意味がないと思うんです。そして、今回の取り組みついて、ウカから一方的に発信するだけじゃなくて、いろんな人がどう感じて、どう発信してくれるか、意義を感じてくれるかというのが大事だと思う。とんだ林さんの文章とイラストでユーモラスに伝えてもらったことから、お客さまが何か感じてもらえたら嬉しいです。
ちなみに、ボトルデザインも一新して、容器を重厚に調整しました。バスルームに置いて、リフィルを詰め替えて使い続けたくなるようなものを作りたかったんです。
髪の回復と地球の回復 “リジェネラティブ グッド”で目指す未来
ーー今回の商品メッセージ「髪が良くなると、地球が良くなる」。改めてにはなりますが、これはどういう意味でしょうか?
さまざまな髪の悩みの根底にある、頭皮を整えて、髪を良くすることと、商品を通じて地球環境の循環に少しずつでも構わないから参加してもらう。そんな思いを込めています。
最近、20代のアーティストの方と話して、日頃のリアルな生活では高価なものよりも3000〜5000円台のものを買う機会が多いと聞きました。そういう手に取りやすい価格帯の商品であっても、サステナブルに貢献できるかどうかを基準に選ぶことは、もはや自分の人生のルーティーンのひとつだと言うんです。今の若い方々は環境のことも自分ごととして考えている方が多いですよね。もちろん、僕らの世代やもっと上の世代の方々だって考えている人はいると思います。ただ、ウカのように全部自分たちで決めて、動ける規模だからこそサステナブルについても納得のいく形で商品やサービスをお届けできる部分もある。きっともどかしく感じている先輩方もいらっしゃるんじゃないかな。そんなことを考えると、僕らは今回のプロジェクトのビジネスモデルをスケールしていく方法も模索していくべきだろうなと思っています。
ーービジネスがスケールすれば、それだけ伊豆の自然環境にも貢献できるということですか?
ウカ イズ シャンプーを発売することで、原料のクロモジに対価が支払われ、現地経済の活性化につながります。そこで得た資金によって森の再生活動が進み、森の多様性が回復し、山が整えば川と海が豊かになる。そんな正常なサーキュレーションエコノミーを構築するのが目標です。佐藤先生や伊豆行政の方々とは、すでにそのサイクルについて意見を交換しています。
ーー今後も、“リジェネラティブ グッド”を考えた商品を増やしていくのでしょうか。ヘアケアの次はどんな商品を構想していますか?
「リジェネラティブ」は再生や回復という意味で、自然の本来の力でもっとより良い環境へと再生し循環させることを目指しています。まずは第1弾としてウカ イズ シャンプーを皆さまにお届けできればと思っているので、すぐに次を計画しているわけではないのですが、自然の力で人が癒やされながら、自然も癒やししていくような“セット”を提供するのが目標です。今後約2年で形にできればと思っているのですが、石垣に3日〜1週間滞在して、現地の植物の力を取り入れたトリートメントやプログラムで心身を癒やすっていうリトリートの施設を作りたいですね。
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