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基本は船便で、例外中の例外で飛行機を使用する
ーそもそもの話になるのですが、なぜロミーさんは化粧品を始めたのでしょうか?
もともとニールズヤードの名前は、「ニールズヤード アポセカリー」だったんです。
ー薬局だったんですね。
だから、一人でも多くの人に健康と美容について知ってもらって、なるべく環境に負荷が掛からず、人に優しいものを作りたい。そこでエッセンシャルオイルを使用し、一番生活に身近なバス&ボディ、さらにスキンケアアイテムを作ることになった。加えてハーブや自然に由来する書籍も一緒に売ることで、体の内側、マインドからも整えられるということです。
ーニールズヤードにはアロマスクールなどもありますよね。
そういった環境に負荷が掛からない取り組みで大事なことの一つに、教育があります。そのためにお店にプロフェッショナルのハーバリストやセラピストを雇い、そういう人たちがいる自然薬局を作りました。それが40年前です。日本でも今、ハーブやサプリ、食品などに関する専門のスタッフが多く働いていますし、アロマを含む自然療法のスクールも運営しています。
ーすごく点の話になるとおもうのですが、製品の輸入に飛行機を使いますよね。排気ガスの問題はどうでしょうか?今、コロナの影響で物流にも遅れが出ていますが。
輸入は原則可能な限り飛行機は使わず船を使っています。ただ、今の状況のような、完全にサプライチェーンが崩れた緊急のときだけ、社内で会議を開いて飛行機を使用することもありますが、それは本当に例外中の例外です。弊社は富士山の麓に自社の倉庫があり製品在庫管理がきちんとできているので、輸入品であっても在庫調整ができています。
ーコロナが蔓延しビューティ業界も大きな打撃を受けました。そういった中で、御社の業績は好調に見えます。
これまで創業からほぼ前年の売上を落とさず緩やかな右肩上がりで来ています。コロナ禍の2021年8月期は前期比15%増で着地し、今期も好調に推移しています。前期は既存の顧客の方々が、外出ができなかったのでオンラインで購入していただくことが多かったと思います。そういう意味でも、ロイヤルカスタマーに支えられているという証明になりました。オンラインの売上シェアは、コロナ前の18%から、今では30%まで高まっています。メイクアップ製品を持っていないということが好調だった要因の一つだと思います。その中で、日ごろから健康になれる、あるいは維持できる製品群が人気でした。
富士山の麓に倉庫を構え在庫管理を徹底する
ーマスク生活でメイクブランドが苦戦する一方で、スキンケアブランドは店頭での説明や試供品などでのお試しがないと新客の獲得は難しいのではないでしょうか?
難しいと思います。ただ弊社は社員がインスタグラムでのライブ配信などを積極的に行ったことが奏功しました。インスタライブでスタッフが話すだけではなく、顧客の方々がコメントで製品の良さを語ってくれました。こういった使った方の言葉が「#ニールズヤード」で広がることで新しいお客さまへの導線ができていると思います。
ー現在の店舗数は?増やす意向でしょうか?
日本の店舗数は現在30店舗です。年に1店舗か2店舗しか増やしてない。これも全てはサステナブルに、静かにロングセラー、ロングビジネスになるように考えた結果です。
ーここ数年で急にサステナビリティが言葉として浸透してきました。そういう背景から、ニールズヤードを選ばれているお客さまも多いと思います。
こういった時代に、きちんと環境や人に優しい製品であるか?といったことや、オーガニック、サステナブルという言葉で調べて調べて、ニールズヤードにたどり着いていただくお客さまも多いと思います。お母さまからお子さんにという方もいらっしゃいますし、また、昔一度は使ったことがあるお客さまも多くて、そんな方がほかのオーガニックコスメを試されて、結局は戻ってきてくださる。「やっぱりニールズヤードよね」と言ってくださる方が多いんです。
「健康になりたいと思っている人」「コミュニケーションができる人」を採用する
ーサステナビリティを推進することを踏まえ、どういった人に働いてほしいですか?採用基準は?
自分の健康に興味がある人ですね。ニールズヤードは健康をテーマにしていますから、社員は、会社の、ブランドのアンバサダーであるべきだと思います。その人が健康に見えるということはとても大事だと思います。その意味は、ジムに行って体を作って、サプリをたくさん飲んでいる、とういうことではなく、まずは健康になりたいと思っている人ですね。
ーニールズヤードが大好きで働いている人が多い印象です。
本当に勤続年数は長い方が多いです。10年は普通で、20年とか。結婚して子どもを産んで一度、離れた方でも戻ってくる方もいます。あと、ニールズヤードの店舗で接客を受けて好きになって、入社したいと志望してきてくださる方も多いです。
ーコロナ感染拡大もあり、求める人材は変わりましたか?
コロナにより、直接対面での接客が減ってオンラインやメールなどへと接客の形も変わりました。そういった中で、求めるのはコミュニケーション能力がある人です。知識よりも大事だと思います。また、既存の考えに捉われない新しいことを工夫して始められるか。それが大きく成功に繋がるかは別で、やってみたいという気持ちがあるかどうか。その気持ちがあれば多くのことはできると思います。私自身、ブランドを始めた時は、本当のところは分かっていなかったし、全てのことは学びから習得しました。
ーコミュニケーション能力を持てるか、それは簡単ではないですよね。
一番は「笑顔」だと思います。笑顔の人は、周りの人が助けてくれます。笑顔って意外と自然なものというよりは、自分で作れるものですよ。だからそういう姿勢はすごく大事だと思います。
社長の役目は、社員が右肩上がりの気持ちでいられるか
ーサステナビリティを含め社員教育はどのようはことを行っていますか?
頻繁に環境セミナーへの出席を促していますし、また“社長10ミニッツブレイク”といった社員に向けた動画を配信しています。YouTubeなんですが、10分間、自分がこれまで行ってきたことや、思っていることを発信しています。社員から質問を受け答えたり、「梶原建二の考え方」というか、これまでやってきて良かったこと、失敗だったことをみんなと同じ目線で話すようにしています。
人間の脳は、ネガティブなことが残っていて。怒りや悲しみ、妬みなどは過去に起こったことで形成される気持ちであって、本来、将来とは関係のないことなんです。その過去のことを頭の中で将来も起きるって思うから、自分の言動がそこに繋がってきてしまう。「どうせああなっちゃうよね」って。
ーではどうすれば良いのですか?
たとえば、単純に会社に行く道を変えるとか。そうすると必ず違うことが分かる。みんなちょっと変えてみようかなという気分になる。10分間でそういう話をすると、ある意味、売上が下がってどうしよう?と思っていても、別にいちいち損とか考えなくていいんだ、と思える。私からは売上を上げろとは言ったことがない。だから社員が自分たちで目標を決めます。自分たちが達成したい数字だから頑張れる。経営者としてできることは、達成に向けたみんなの気持ちを盛り上げること、気持ちの良いオフィスを整備するなどの環境整備をすること。あとはちゃんと給料を出し、賞与を出す、心のリズムを安定させる!そういうことだと思います。
ー今期の目標も売上ではない?
売上は結果なので。それより社員が右肩上がりの気持ちでいられるかが大事だと思っています。
ただ2022年もデジタル強化は推進しています。デジタル部門を作り外部の方と提携するなど、製品だけではなくブランドフィロソフィーを発信していきたいと考えています。
ー最後に社長が行っているサステナビリティについて教えてください。
飲食店でストローなどを受け取らない、洋服は長く着られるモノを購入するなど基本的なことはずっと続けています。自宅は再生可能エネルギーですし、車はEV、週3日は自転車通勤しています。そして会社を安心でき能力を活かせる場所だと感じられるようにすることでしょうか!
若い人が簡単にできるサステナブルな選択は、健康にいいと思うものを積極的に生活に取り入れることです。健康と環境は直接は結びつかないワードと思われがちですが、違います。食べ物もときどきビーガンになるとか、日々買う食品の裏のラベルを見て人工甘味料とか合成物の入っていないモノにするなど、選択を変えるといった人が増えると企業もそういうモノを作らなくなるのではないでしょうか。車での移動を電車にすれば、少しは歩くでしょうし、気分転換にもなります。健康になろうとする気持ちが、大きく私たちをとりまく環境を変えることの一歩になります。それは実は一挙両得なことです。
(聞き手:福崎明子、平原麻菜実)
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