ストライプインターナショナル 立花隆央社長
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ウィズコロナ時代の経営の展望を聞く連載「トップに聞く 2021」第5回はストライプインターナショナルの立花隆央社長。2020年は新型コロナウイルスの流行で未曾有の危機に直面しただけではなく、創業者の石川康晴氏の突然の退任に伴い突如ストライプインターナショナルを率いることになるなど、「予測困難な年だった」と振り返る。未だコロナの収束の兆しが見えないが、今年はどんな一年にしていくのか?立花社長が語る2021年の展望。
■立花隆央
2002年にストライプインターナショナルに入社。2005年に同社取締役、2015年にグループ会社のキャン代表取締役社長に着任(2020年4月に会長就任)。2020年に創業者の石川康晴氏の後任としてストライプインターナショナル代表取締役社長に就任した。
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―2020年はどんな一年でしたか?
新型コロナウイルスで大変というか、激動というか......予測困難な年となった。売上利益の予算を達成させるぞというよりも、破綻せず何とか乗り切ることがテーマになった。
―創業者の石川氏の突然の社長退任に伴うトップ交代も大きな出来事だったと思います。
緊張感は当然あった。このタイミングで自分が社長に就き、一番思ったことは「会社を潰しちゃいけない」と。
―石川氏は社長退任後もストライプの株式を保有していますが、どのようなコミュニケーションを?
定期的に状況報告をする程度で、石川自身は経営に全く関わっていない。
―店頭販売の足元の状況は?
3〜5月は各社同じだと思うが厳しい状況が続いた。6月から徐々に巻き返して、6〜11月で前年同期の90%まで戻ってきたが、12月に入ってからコロナの拡大傾向の影響が始まって、12月末〜1月の年始の状況はかなり厳しいものになっている。昨対比で75%くらいまで落ち込んだ。
―今期業績の着地見込みは?
現在緊急事態宣言が出ており、最終着地の数字はまだ開示できない。期初予想より大幅に下方修正したが、昨春の緊急事態宣言後に見込んだ数値よりは良化する予定だ。
―EC売上は?
前年比130%前後で推移している。ただもともとEC化率が低く、コロナ以前は7%だった。今期の着地は10%強になると予想している。
―EC化率は他社と比べるとかなり低水準です。
これは一番の課題。なので来期はEC化率15%を目指してサイトの見直しなど施策を打つ予定。
―「ストライプデパートメント」の業績はいかがでしょうか?
今期は売上目標に対して少し届かなかったが、営業利益に関しては目標値をクリアしている。ストライプデパートメントはずっと投資し続けなくてはいけない業態だが、コロナの影響で資金を残すためにPR・販促費を必要最低限に絞った。来期は積極的に投資していく。
―コロナ禍で好調だったブランドは?
「アメリカンホリック(AMERICAN HOLIC)」とEC事業は良かったと思う。
―アメリカンホリックは以前から好調を維持していますね。
時代に合っているというのもあるが、弊社が持っているブランドの中でマーケティングが一番できているのが強い。また、ブランドマネージャーを中心にチームワークが良く、生産体制がしっかりしていることも効いている。取引先との関係性も良好だ。
―一方で苦戦しているブランドは?
「アース ミュージック&エコロジー(earth music&ecology、以下 アース)」が若干苦戦したかなと。来期はリブランディングに近い規模で価格帯とMDを大幅に見直す。
―いまも3500円〜と手に取りやすい価格帯ですが、さらに引き下げる形となります。その狙いは何でしょうか。
消費者が年々、低価格をどんどん求めるようになっているので、今のニーズに価格帯を合わせるといったところまで思い切って踏み込もうと。今後は「適正価格」で値引きせずに売り切っていく。
―値引き販売が恒常化していたという認識?
アースが特に値引き販売していたわけではないが、世の中の市場がそれに慣れていたというのはあると思う。価格の見直しはあくまでプロパー率を高めるための施策だ。
―MDの見直しではどのような施策を考えていますか?
いま、駅ビル・ファッションビル・郊外・準郊外と店舗を持っているので、それぞれの立地にあわせた商品を投入していく。
―昨年は複数の事業終了を発表しましたが、なかでも基幹ブランドの「イーハイフンワールドギャラリー(以下、イーハイフン)」は話題を集めました。
イーハイフンに関してはコロナに関係なく、以前から決定していた事項。
■昨年発表した事業終了
・セブンデイズ サンデイ
・ニコロン
・スマービー(ストライプクラブ内に移管)
・イーハイフンワールドギャラリー
―立花社長は以前、イーハイフンの立て直しに貢献しました。再び立て直すことなく終了を決断した背景は?
もともとイーハイフンは、奇抜でロックというテイストの差別化が効いて成功したブランドだったが、そのニーズがいまの時代に合わなくなってきている。思い入れはものすごくあったが、MDのテコ入れが難しかったのが一番大きかった。
―リブランディングという手もあったと思いますが。
そうするとイーハイフンではなくなってしまう。それならイーハイフンでなくてもいいのではと思い、終了を決めた。
―昨年は中国市場からも撤退しました。
なかなか利益化できず厳しかった。好調な企業がないわけではないと思うが、どの企業も苦戦して撤退している。その中では長いこと頑張った方かなと。
―コロナの感染拡大を受けて、仕入れ発注量の削減はされたのでしょうか。
コロナによって期初予算から若干修正が入ったが、そこからさらに引き下げるようなことはしていない。来期に関しては、2019年対比で90%強ぐらいの予算を立てている。
―2021年以降の出店計画について教えてください。
不採算店舗の退店は数店舗あると思うが、大きな規模で退店していくようなことはない。
―EC化率を踏まえるとリアル店舗は引き続き重要なチャネルとなりそうですが、試着専門店のような業態への興味はありますか?
現状は考えていない。コロナの影響がまだ続いているどころか、むしろ拡大しているので、まずは既存店舗の地盤固めに取り組む。あとは接客教育をリモートを通じて細かく行っていく方針で、iPadの導入も合わせて独自で工夫検討している。
―ウィズコロナ、アフターコロナも対面接客は重要という考えですね。
それが"THE 小売"ですから。
―今後注力していくブランドは?
やはりアメリカンホリック。100億円を超えるブランドに成長したが、今後3~4年で300億円は達成したいと思っており、出店も積極的にしていく。あとはD2C事業。今年2月にはEC限定の新ブランド「スラー(SLURR)」のデビューを控えている。
―石川氏は以前より東証上場を目指していました。立花社長も同様の目標を掲げていますか?
石川とはずっと一緒にこの会社を動かしてきたので、目標は同じだと思ってもらえれば。
―石川氏は上場の目処について「2020年後半」と宣言していました。
3月のトップ交代のタイミングでコロナの感染拡大がすでに始まりつつあったので、延期を決めた。
―現時点で上場時期の目処は決めていますか?
具体的には決めていない。いい加減なこと喋ると問題になってしまうので(笑)。まずは業績をしっかり上げてからタイミングを見ていく。
―2021年のアパレル業界はどうなっていくと考えていますか?
私が思うに、売上規模の大きいマス向けのブランドと、こだわりがあって差別化できているブランドの両極が残るのでは。中間価格帯で芽があるブランドは大きいところが買収していくようになると考えている。
―「こだわりがあるブランド」とは?
一般的には高価格のブランドになってしまうだろう。一方で売上規模の大きい方は、言い方に語弊があるかもしれないが「低価格ブランド」にはなるのではないか。高価格かつ、それなりのスケール感が伴うというのは歴史がないと成り得ない。
―御社はどちらの軸で戦っていきますか?
両軸で戦っていく。いろいろやりたい。
―2021年はどんな一年にしていきたいですか?
今期はコロナ禍で販管費を見直し、無駄を見つけて削っていった。これで2021年に向けての下準備ができたので、来期はそこが効いてくるのではないかと考えている。そしてECを強化し、企業としての健全経営を目指す。
―立花氏は来期で社長就任2年目に突入します。目指す企業像は?
アパレル事業では「ユニクロ(UNIQLO)」に次いで日本を代表する"国民服"を呼ばれるような存在を目指しつつ、衣食住のポートフォリオのバランスがとれた会社にしていきたい。コロナ禍でアパレル事業以外は苦しい状況下にはあるが、これを乗り越えたら再び強化していきたいと思っている。
(聞き手:伊藤真帆)
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