ザ・リラクス 2021年秋冬コレクション
Image by: THE RERACS
デザイナー 倉橋直実が手掛ける「ザ・リラクス(THE RERACS)」が3月15日、「Rakuten Fashion Week TOKYO 2021 A/W」で2021年秋冬コレクションを発表した。映像での配信となった今季は、ランウェイの両脇に等間隔でライト版を設置。現代アートのようにも見える規則的な明かりが、徐々に会場を照らし出すのを合図にショーがスタートした。
「ザ・リラクス」と言えば、テーラリングと上質な素材を引き立てる、最低限の色柄やシンプルなスタイリングが印象的だが、今季はそのイメージが大きく変化した。フラワープリントやチェック、格子など、バリエーション豊富な色や柄、素材のコントラスト、ゆったりとしたシルエットを組み合わせることで、気負わずに着られるアイテムがそろった。
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■ストイックさは控えめな、オールブラックのスタイル
前半は、男女ともにオールブラックのコーディネートが登場するが、ストイックな印象は控えめだ。モヘアのコートとウールのパンツを合わせるなど、同色でも濃淡や素材の質感を変えて、やわらかなイメージへと落とし込んだ。
さらにAラインのコートやドレープを贅沢に用いたドレスは、モデルが歩くたびに美しくなびく。裾にかけてのゆったりとしたディテールとは対極に、首元をスタンドカラーで引き締めることで、リラックス感と緊張感が混在する絶妙なバランスを生み出した。
■軽やかな素材にのせる花柄、チェック柄、格子柄
中盤には、花柄のロングドレスや、マルチカラーのチェックのスカートなどの柄物が続々と登場し、コレクションに華を添える。アイキャッチな柄は、透け感のある素材にのせることで、秋冬ながらも軽やかな印象だ。ドレスのカフスやベルトだけをウールで切り替えるなど、見た目の「重さ」のバランスにも工夫が光る。
後半にかけては、ホワイトを基調にコレクションを提案。レースのロングスカートとモッズコートなど、前半にオールブラックで登場したコーディネートが、色味を変えるだけで、異なるイメージに昇華されているのがおもしろい。
Kuuraを用いたウェア
また今回新たに、伊藤忠商事とメッツァ・グループのメッツァ・スプリングとの共同出資により開発したセルロースファイバーのテキスタイルブランド「クウラ(Kuura)」の生地を使用。フィンランドの自然の中で育った針葉樹を原材料にし、新特殊溶剤の使用により環境負荷を低減させたクウラのテキスタイルを、コートやシャツ、ボアベストに採用した。
アクセサリーのバリエーションも着々と広がっている。「ミリタリーミニマム」シリーズと名付けた、ボストンバッグやウォレットバッグに加えて、モデルの耳元には、キラキラとゆらめくジュエリーなども見られ、小物使いがコーディネートの幅を一層広げている。
全体として、ブラックから花柄、白のアイテム群へと移り変わるコレクションは、コロナ禍の混沌とした暗い世界に、一筋の光がさして、周囲までをも照らすというストーリーにも見えた。そんな未来へのポジティブなメッセージを、「ザ・リラクス」流のスマートなコレクションで表現した。(文責:村上杏理)
大学で日本美術史を専攻し、2009年にINFASパブリケーションズ入社。WWDジャパンやFashion Newsの編集・記者として、東京のファッション・ウイークやセレクトショップ、ファッションビル、販売員取材などを担当。16年からフリーランスで、ファッションを軸にライフスタイル、アートの記事執筆・カタログなどを手掛ける。
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