羽根田卓也
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激流への挑戦 東京五輪から得たものは
18歳で世界に出て、2008年の北京オリンピック初出場、ロンドンを経て、成果はリオで実を結んだ。当時29歳、カヌー競技者として経験値と体力が噛み合い、脂の乗った時期だ。
「リオ五輪で銅メダルを取った時は、生きてきて何よりも幸せだと思いました。20年間やってきた結果ですから。いくら努力しても、必ずしも実を結ぶわけではないんです。それでも諦めず妥協せず、厳しい道を選んできたから、神様が表彰台に挙げてくれたのでしょう」
すでに次のオリンピック開催地は東京に決まり、自国開催で盛り上がる周囲の見方もずいぶんと変わったという。
「メダルをきっかけに応援してくれる人が増え、当然プレッシャーもありながら、張り合いがありました。カヌーについてより多くの人に知ってもらう活動と、競技者としてさらにレベルアップしていくことは、相反したりどちらかがネガティブなこととは考えなかったし、むしろそれが僕の競技人生。やはり自分にしかできないことであり、やらなければならないこと。カヌーへの意識を変えたいという、18歳で日本を飛び出した理由と同じです」
だが東京オリンピックは世界的な未曾有の事態により、1年の延期という思ってもみない開催になった。そんな中で得たものとは何だったのだろう。目を閉じ、深く考え、ゆっくりと答える。
時には練習時間を割いたり集中できないこともあったが、トレーニングは欠かさずに続け、いつも自分自身の芯となる部分は見失わないように心がけた。それもまた「水の流れを読む」ように。
「様々なハプニングや逆風が吹きましたが、今回のオリンピックはやはり意味があったと思うんです。誰もが大変な状況で、それでも前向きにならなければいけない中、カヌー競技者として見せることのできた姿や、そこから感じ取ってもらったこともあったと思います。大会を通じて得たのは、応援してくれた方や見てくれた方との絆であり、それはコロナ禍だからこそ生まれたものです」
そして、競技者としての大きな気づきもあった、と言葉を続ける。
「開催も危ぶまれていた状況の中、スポーツの価値や意義について、自分は競技者として取り戻せたのではないかと思っています。必ずしも記録や競技会ありきではなく、スポーツや選手に求められているもの、それはその姿や生き方、生き様にこそ意味があるのではないか。感動を与えるのは競技成績だけじゃない。このことを改めて強く感じました」
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