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【連載ふくびと】第3話 菊池武夫——型紙の服作りを習ったことがない

菊池武夫

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【連載ふくびと】第3話 菊池武夫——型紙の服作りを習ったことがない

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第2話からつづく——

 文化学院で芸術を学びながら、必然的にファッションの世界へと足を踏み入れた菊池武夫。卒業後は原のぶ子アカデミー(現・青山ファッションカレッジ)に進学し、立体裁断の技術をみっちり仕込まれた。実践型の教育は、就職先のアトリエでの注文服の仕事に役立っていく。しかし、1年で3回も職を変えるほど長続きせず、自分に合った仕事に巡り合うことはできなかった。——「タケオキクチ」のデザイナー菊池武夫が半生を振り返る、連載「ふくびと」第3話

学生グループで初のファッションショー

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 文化学院を卒業する頃には、ファッションに興味が向いていました。原のぶ子アカデミーに進学を決めたのは、創立者の原先生がピエール・カルダンと同級生でサンディカ(編集部注:パリ・ファッション・ウィークの主催団体)とも繋がりがあったので、フランス系ミッションスクールの暁星出身だった身として親しみを感じた、ということも理由のひとつです。

 原先生も不思議な人でしたね。入学して3ヶ月程しか経っていない頃、いきなり「自分たちだけでショーをやりなさい」と言うんです。「基本だけ学べばいい。実践としてショーのために服を作ることによって、自身の身になり表現になる」と。

 そこで6人のグループを作り、春夏と秋冬のショー、まさに実際のファッションカレンダーと同じ年2回のシーズン分けで、コレクション制作が始まりました。最初のショーの場所は、赤坂プリンスホテル内のフロア。6人それぞれ2点ずつ作品を披露する形式です。その時たまたま英字新聞「ジャパンタイムズ」が取材に来ていて、僕が制作したルックを写真付きで掲載してくれました。同じチームだった稲葉郁恵のルックも紙面に。これは自信につながりましたね。

今も基礎となる立体裁断の服作り

 スモールコレクションとはいえ、年に2回のショーに向けての制作は、かなりハードでした。素材の調達から全て学生のみで行うのです。繊維の会社を巡って生地を提供してもらい、同時にデザインを考える。ショーの準備も毎回大変でした。でも、それだけチャンスを与えてくれる学校だったということ。当時の日本の専門学校ではかなり珍しかったと思います。

 教育方針も然りで、僕は一度も型紙の服作りを習ったことがありません。トワルを使った立体裁断で、型紙よりも自由度が高く、人の体に沿ってくれる。自分が作りたいものを自由に作ることができる学校に在籍したことも、この後の自分の服作りの大きな糧になりました。

手探りの仕事 アトリエを転々と

 社会に出てから9年ほど、オートクチュールのアトリエを転々としました。どこも長続きしなかったのは、いろいろありましたが一番は納得のいく服を作ることができなかったからだと思います。特に最初の1年は、アトリエを3軒はしごすることになりました。

 卒業してすぐに就職したのは「ルリ・落合」。黒柳徹子さんの衣装を担当していた落合ルリさん(服飾デザイナー)のアトリエです。入っていきなり命ぜられたのが、女優の佐久間良子さんが出演する映画の衣装。まだ学生上がりの自分には荷が重すぎて、右も左もわからない。手探りの状態でしたが、とにかく作るしかない。それが精神的にキツかった。果たして責任を果たせたのかどうかわかりません。不安な気持ちだけが残り、辞めることになりました。

 次に門戸を叩いたのは「マダムミキ」。大手の輸入素材を使ったクチュリエで、顧客の要望を聞き、デザインに起こして仕立てていく仕事でした。しかしこちらも自分に合うと思えず、半年も続きませんでした。

 さてどうしようかと思っていた頃、原アカデミーの同級生が「ミモザ」を紹介してくれました。よく有名人が来店するお店で、大きな仕事を任され、経験を積むことができた。なのに結局、自分の中で納得いくものが作れたという実感はありませんでした。まだ若かったということもあるかもしれませんが、自信が湧かなかった。この転職経験を経て出した結論は「自分でアトリエを開く」ことでした。——第4話に続く

TAKEO KIKUCHI アーカイヴ集

タケオキクチ1980年代後半のデニムジャケット

スタンドカラーにバックポケットがユニークなデザイン

遊び心を感じさせる織りネーム

【毎日更新】第4話「伝説的ショップ『カプセル』に出品」は3月1日に公開します。

文:一井智香子 / 編集:小湊千恵美
企画・制作:FASHIONSNAP

【連載ふくびと】デザイナー 菊池武夫 全13話
第1話—大病と戦争 「生きる喜び」を知る
第2話—生涯の友と将来の道を見つけた場所
第3話—型紙の服作りを習ったことがない

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