
誰もが知るあのブランドの歴史を「タグ」の変遷で紐解く連載。第3回はアメリカン・トラディショナル・スタイルを象徴するブランドとして知られる「ポロ ラルフ ローレン(Polo Ralph Lauren)」にフォーカス。ブランドの軸である「ポロ ラルフ ローレン」に加えて、現在までに10以上のサブレーベルが存在し、展開アイテムも桁違いに多いのが特徴。古着屋での取り扱いも多く、それだけに愛好家も多いです。今回は、ポロ ラルフ ローレンを含むラルフ ローレン社が手掛けてきた製品のタグの見分け方を紹介。ラルフ ローレンの製品を中心にアメリカンブランドを取り揃えるインポートショップ「SAFARI2号店」の藤岡秀太さんに細かな特徴を教えてもらいました。
目次
ADVERTISING
ラルフ ローレンの歴史をおさらい
ブランドの起源は1967年。創業者のラルフ・ルーベン・リフシッツ(Ralph Rueben Lifshitz)が、「POLO」としてニューヨークに設立したのが始まりでした。ブランド名の「POLO」は乗馬に似た競技「ポロ」に由来し、創業時はネックウェアラインを中心に展開。1つ1つハンドメイドで手掛けたアイテムが、ポロ競技を嗜んでいたイギリスの上流階級に憧れるアメリカ人に受け、知名度を獲得しました。
初めてメンズのフルコレクションを発表したのは1968年で、1970年にはアメリカの大手百貨店「ブルーミングデールズ」内に「Polo by Ralph Lauren」ショップをオープン。有名百貨店史上初となる1つのデザイナーのためのブティックだったそう。続く1971年には、初の路面店をカリフォルニア州 ビバリーヒルズに位置する高級ブティック街「ロデオドライブ」にオープンしました。同年にブランドのアイコン「Polo ポニー」のロゴが誕生し、1972年にはベストセラーであるポロシャツの販売を開始。その後もレーベルを増やし、商品を拡充することでスーツスタイルからカジュアルウェア、ホームアイテムに至るまで幅広いアイテムを揃え、世界的に知られるブランドへと成長していきました。
ラルフ ローレンの主なレーベル
- チャップス(CHAPS)
1978〜2000年頃
本場のアメリカンスタイルを当時のライフスタイルに合わせてアップデートしたクラシックなコレクションを提案。スポーツウェアやビジネススタイル、テーラードウェア、ドレスなどメンズ、ウィメンズ、キッズ、ホーム向けのさまざまなアイテムを展開した。 - ローレン ラルフ ローレン(LAUREN RALPH LAUREN)
1971〜現在
モダンでスタイリッシュなスタイルを好む女性に向けたレーベル。上質なファブリックを使用した洗練されたスタイルのウェアやアクセサリー、シューズを揃える。 - ポロ ウェスタン(Polo Western)
1978〜1979年
アメリカ西部の実用的な服からインスピレーションを得たデニム、アパレル、アクセサリーを展開していた。キャッチコピーは「made to be worn(着るために生まれた服)」。 - ポロ ユニバーシティ(POLO UNIVERSITY)
1978年〜1980年頃
名前の通り大学生向けのカジュアルウェアを展開していたライン。 - ポロ ダンガリー(POLO DUNGARESS)
1985~1989年
デニムと同じインディゴ染めの綾織り生地を指す「ダンガリー」系のアイテムを揃えていたライン - ポロ カントリー(POLO COUTRY)
1989〜1992年
RRLの前進となったレーベルで、ヴィンテージ風のデザインが特徴。 - ラルフ ローレン カントリー(RALPH LAUREN COUNTRY)
1989〜1992年
ポロ カントリーのウィメンズライン。 - ダブルアールエル(Double RL)
1993〜現在
コロラド州にあるラルフ・ローレン氏の牧場の名前に由来。アメリカ西部のオーセンティックで実用的な装いを落とし込んだヴィンテージスタイルのメンズライン。伝統的な染色技術や職人技を感じさせる高品質なアイテムを揃える。 - ポロ スポーツ(POLO SPORTS)
1993〜1998年
1992年にポロ ラルフ ローレンの初のスポーツ・フィットネス向けウェアとしてスタート。デザイナーのマイケル・タピア(Michael Tapia)が手掛け、1990年代のカルチャーを色濃く反映したアイテムが根強い人気を誇った。現在もコレクターから人気を集めている。発売以降はストリートカルチャーとの親和性も高く支持が厚かったが、徐々に規模を縮小し、2000年代に販売を休止した。 - ラルフ ローレン スポーツ(RALPH LAUREN SPORT)
1993〜1998年
ポロ スポーツのウィメンズライン。 - ラルフ ローレン(Ralph Lauren)
1980〜1990年代
スタンダードなウィメンズラインとして展開をスタート。※現在はさまざまなラインの総称として使用されている。 - ラルフ ローレン ホーム(RALPH LAUREN HOME)
1983〜現在
ラルフ・ローレン氏が市場にインテリア製品の選択肢が少ないことや、高品質なものが少ないことに対して不満を抱いたことをきっかけに立ち上がったライン。各アイテムにはブランドを代表する「サラブレット」「ニューイングランド」「ジャマイカ」 「ログキャビン」の4つのモチーフが取り入れられている。 - ラルフ ローレン パープルレーベル(Ralph Lauren Purple Label)
1994〜現在
ブランドのハイエンドライン。上質な仕立てでタイムレスなデザインのアイテムを揃えている。 - ラルフ ローレン ブラック レーベル(Ralph Lauren Black Label)
1994〜2015年
スリムでシャープなシルエットに仕上げたモダンなレーベル。細部まで配慮した仕立てで製作したタイムレスなスタイルを提案。2015年に終了し、メンズはラルフ ローレン パープル レーベル、ウィメンズはラルフ ローレン コレクションに統合された。 - ポロ ジーンズ(POLO JEANS)
1996〜2007年
ジーンズを中心にヤングカジュアルなスタイルを提案していたレーベル。 - アールエルエックス ラルフ ローレン(RLX RALPH LAUREN)
1998〜現在
1998年に誕生し、現在も展開を続けているゴルフウェアレーベル。高いパフォーマンス性に、現代的なエッセンスを加えることでコース上でもコース外でも対応できるアイテムを揃えている。 - ラルフ ローレン コレクション(RALPH LAUREN COLLECTION)
1994年〜現在
“シックで女性らしい魅力”をデザインに落とし込んだラルフ ローレン パープル レーベルのウィメンズ版。 - ラグビー(RUGBY)
2004〜2013年
メンズ・ウィメンズの若い世代に向けたカジュアルレーベル。ラルフ ローレンに根付く伝統やスピリットを踏襲しつつ、プレッピー要素を加えたアイテムを展開。 - デニム & サプライ ラルフ ローレン(DENIM & SUPPLY Ralph Lauren)
2011〜2016年
流行に敏感な若い世代に向け、“ラギッド(アメカジテイスト)でナチュラルかつ気取らない個性的なスタイル”を提案。日本にも店舗を展開していたが、2016年に終了し「ポロ」に集約された。
【年代順】のタグ変遷
ここからは、ブランド立ち上げ時の1970年代から2000年代の現行タグまで、各年代のタグの特徴を「SAFARI2号店」で取り扱われている商品の画像と合わせて紹介。それぞれの時代を象徴するラインや、藤岡さんが教えてくれた豆知識などの情報と合わせ、参考にしてみてください。
1970〜1980年代前半














Image by: FASHIONSNAP
まずは、テーラードのカテゴリーが徐々に増えてきた1970年代のタグの解説からスタートします。1970年代「Polo」に並列されている大文字の「RALPH LAUREN」が特徴。大文字のタグはほかの形もあるそうですが、古着市場では長方形が多く見られるとのこと。古着ではジャケットが多く、シャツやパンツなどは稀。1980年代初期には台形になった通称「三角タグ」が登場します。こちらもジャケットに多く用いられたタグで、主にスイングトップで見られるそうです。同時期に従来の長方形のタグも流通していましたが、ブランド名が記載されたタグの下に素材表記や製造場所が書かれているタグが付いているのが特徴。アメリカ製の表記が多いため「USA製タグ」と呼ばれることもあります。
初期に登場したデニムとアパレルのライン「ポロ ウェスタン(Polo Western)」や、ウィメンズライン「ローレン ラルフ ローレン(LAUREN RALPH LAUREN)」も未だに古着市場で存在するそう。特に、ポロ ウェスタンは現行ラインでもある「ダブルアールエル(Double RL)」の前身として知らていますが、展開期間は1978年から1979年までの1年ほど。ウェスタンやネイティヴアメリカンの要素を持つアイテムを中心に展開していたラインで、ダブルアールエルの人気が高い分、このシリーズは高値で売買されているそうです。

藤岡さん
大文字タグはテーラードやツイードのハンチングジャケットなら見たことがありますね。古着で流通しているものがあれば割とレアですが、このタグがついているからといって価格がとても高くなるこということはありません。流通が少なく、相場がないためです。
1980〜1990年代前半





























Image by: FASHIONSNAP
1980年代後半〜1990年代にかけてはポロのボーイズラインの目印として背景色が緑色の通称「緑タグ」が登場。また、通常のネイビーのタグは色が濃くなりました。アメリカ以外の製造拠点での生産も本格化し、タグの下に配されたUSAの表記は減っていきますが、タグのデザインに大きな変化はありません。
主にデニムやシャンブレーなどを展開し、現在でもコレクターから人気を集める「ポロ ダンガリー(POLO DUNGARESS)」は、1985年から1989年まで展開。数種類のタグがあるようですが、展開当初のものは背景の白いタグです。あまり長い期間ではなかったため、その後のものは詳細な年代分けは難しいものの、こちらもあまり出回らないレアアイテムの1つ。
この時代の特徴はアメリカ製が多いということ。ラルフ ローレンは1980年代後半から香港、シンガポールなどアジアに工場を分散しています。アイテムによって分かれており、ジャケット系はアメリカ、トレンチコートはシンガポール、ニットは香港製のものをよく見ますね。

藤岡さん
1990年代

Image by: FASHIONSNAP
1990年代は多くのラインが登場し、「Polo」タグはフィリピンや東南アジアでの生産が多くなり、濃いネイビーが青っぽい色味に変化しました。
以下では、当時ブランドの人気を牽引した2つのライン「ダブルアールエル」と「ポロ スポーツ(POLO SPORTS)」について解説します。
ダブルアールエル
ポロ カントリーとポロ ウェスタンを踏襲したラインとして1993年に誕生し、現在でもファンが多い同ライン。タグのデザインに大きな違いがないため初心者が年代を認識するのは難しそうですが、藤岡さん曰く「シンボルマークの上にあしらわれた星が3つならば1990年代のもので確定」とのこと。








Image by: FASHIONSNAP

藤岡さん
ダブルアールエルは2001年に一度ブランドを終了したものの、当時日本での人気がとても高かったため日本規格で復刻。2007年まで継続し、その期間によく用いられていた背景が白い「白タグ」は希少価値が高いです。

Image by: FASHIONSNAP
ポロ スポーツ

Image by: FASHIONSNAP
現在は自身の名前を冠したブランドを展開するデザイナーのマイケル・タピア(Michael Tapia)が手掛け、ナイロン素材を用いたスポーツ色の強いアイテムでストリート系の若者を中心に人気を集めている同ライン。当時は車高の低い形状に改造したカスタム自動車を運転する「ローライダー」に受けたのだとか。「シュプリーム(Supreme)」が流行る前にはストリートの主流がこのシリーズだったため、コアなファンも多くラルフ ローレンのラインの中でも高額で取引されているそうです。

藤岡さん
ポロ スポーツで押さえておきたいのが、1992年バルセロナオリンピックの際に登場したコレクションですね。ラルフ ローレンは今もアメリカ選手団のユニフォームを手掛けていますが、それが始まったのが1992年。ブランドにとって大きな役割を果たしたラインです。1998年に終了しましたが、2018年のラルフローレンの50周年を記念して復刻。こちらは復刻前のオリジナルですが、復刻コレクションも市場価値が高いです。

Image by: FASHIONSNAP
豆知識 ① ラルフ ローレン特有のサイズ表記について








Image by: FASHIONSNAP
ラルフ ローレンの公式サイトを見ると、「クラシックフィット」「スリムフィット」「カスタムフィット」「テーラードフィット」といったサイズ表記で展開されている商品が存在します。これらは各アイテムの型を表すもので、年代によってはタグと並列されていることもあるため、この情報からも年代を推測することができます。しかし、このような型は細かいものも含めると100ほどは存在しているため、型ごとに年代を分けることはできないそう。ただ、これらのサイズ表記がタグについているのは1990年代初めからなので、サイズ表記があったらその年代以降のものだと思っていいとのこと。

藤岡さん
1990年代には、このようなモデル名が多く存在します。代表的なのは「ブレア(BLAIRE)」と「ブレイク(BLAKE)」ですね。また、オーバーサイズのモデルも存在し、「BIG SHIRT」や「THE BIG OXFORD」といったシリーズのオーバーシャツもよく見ます。当時のストリート系の方が着ていたもので、ポニーが胸ではなく裾についているのが目印。「テーラードフィット」もその頃からあり、こちらは袖口にポニーがついていることが多いです。タグに記載されている場合はモデルごとに形が若干違うのですが、ものすごい数が存在していて僕も未だに見たことがないものが出てくることも(笑)。
1990年代後半〜2000年代前半























Image by: FASHIONSNAP
1990年代後半から2000年代にかけて、「Polo」のアイテムはほぼ中国製になっていきます。また、スポーツラインはポロ スポーツの終了後、「アールエルエックス ラルフ ローレン(RLX RALPH LAUREN)」や「ポロ ゴルフ(POLO GOLF)」に引き継がれ、デザイン重視のものからパフォーマンス重視のものに変わっていきました。若い世代に向けた「ラグビー(RUGBY)」や「デニム & サプライ ラルフ ローレン(DENIM & SUPPLY Ralph Lauren)」もラルフ ローレン独自の加工やカラーリングがあり、人気を集めたラインです。
豆知識 ② ラルフ ローレン好きなら知っておきたい「チャップス(CHAPS)」について





Image by: FASHIONSNAP
チャップスは、1970年代のブランド初期に低価格の若者向けのライン「CHAPS Ralph Lauren」として登場。展開後しばらくして経営に問題があるとして一度解体され、ラルフ ローレンとはラインセンス契約に。この時期から日本規格も登場し、主にオンワード樫山と日登美の2社が製作していました。そのため両者のどちらかや、「インパクト21」と記されていた場合はライセンス契約中に日本で製作されていたアイテムとのこと。

藤岡さん
チャップスはラルフ ローレンの中でも数奇な変遷を辿ってきたラインです。ラルフ ローレンから離れた後も単独のブランドとしてしばらく展開を続けていたので、その期間のタグには「Ralph Lauren」がなく「CHAPS」のみが記載されています。
豆知識 ③ ウィメンズアイテムはここが面白い








Image by: FASHIONSNAP
ラルフ ローレンはメンズからスタートしたアイテムだけあって古着でもメンズの方がフォーカスされがちですが、ウィメンズも1970年代に立ち上げられた「ローレン ラルフ ローレン(LAUREN RALPH LAUREN)」に始まり、「ラルフ ローレン カントリー(RALPH LAUREN COUNTRY)」、「ラルフ ローレン スポーツ(RALPH LAUREN SPORT)」「ラルフ ローレン コレクション(RALPH LAUREN COLLECTION)」などライン分けされていないものも含めてかなりの数の古着が存在します。

藤岡さん
ウィメンズはタグのデザインが多様ではない分、ライン名だけですぐに年代を判断できる明瞭さがありますね。とはいえ、やはりメンズを中心に買い付けているところが多いため、見つけにくいのも現実...。ローレン ラルフ ローレンくらい古いものになるとかなりレアですね。ウィメンズはメンズでは見られない個性的なテキスタイルが多く、いい意味でラルフ ローレンらしくないデザインの多様性を楽しめるのが魅力だと思っています。
現行タグ

Image by: FASHIONSNAP
現行タグは2015年から採用されています。同年に「ポロ バイ ラルフ ローレン」表記だったメンズ&キッズのラインと、「ブルー レーベル」のウィメンズラインだった「ラルフ ローレン」が「ポロ ラルフ ローレン」に集約されましたが、アイテムによっては「RALPH LAUREN」のタグが採用されています。また、「ポロ ラルフ ローレン」のタグも同じ色味に変更されました。
現在まで続くアールエルエックス ラルフ ローレンやダブルアールエル、ローレン ラルフ ローレンのほか、ライフスタイル系の「ラルフズ コーヒー(Ralph's Coffee)」「ラルフ ローレン ホーム(RALPH LAUREN HOME)」などのタグはこれまでのデザインを踏襲しつつ、アイテムによって変化を持たせているので、現行のものでもさまざまなタグのデザインを楽しめます。

藤岡さん
ラルフ ローレンの古着を見ていると、アメリカの企業ならではビジネスの広げ方を如実に感じられます。さまざまなラインを展開して大胆にビジネスを展開してきたからこそ、一つのブランドの中にさまざまなジャンルが生まれ、今でも見たことないアイテムに出会うことができるんですね。特にテーラードのアイテムはシルエットや生地、細かいパーツに至るまでとにかく仕立てが良いので、初心者の方は色々なアイテムに触れてブランドの魅力を感じてほしいと思います。











SAFARI2号店の店内
Image by: FASHIONSNAP
ADVERTISING
PAST ARTICLES
【タグで紐解くブランドの歴史】の過去記事
F/STORE
新着アイテム
1 / 5