コスメティックブランド「シロ(SHIRO)」を運営するシロが、4月28日に新たな拠点「みんなの工場」を北海道砂川市にオープンしました。新工場をメインに、ものづくり・環境・観光をテーマにした付帯施設で、カフェやラウンジ、キッズスペース、ショップを併設。雄大な自然の中で、素材を大切にするシロの思いに触れながら、ものづくりの現場を見学することができます。砂川市民やプロジェクトに賛同したさまざまな人たちと“みんなで作った”という工場の内部を紹介します。
ものづくりの裏側を誰でも見られる 「開かれた工場」に
ADVERTISING
シロはこれまでも創業の地である砂川市で「ものづくり学校」(2005年)や、職業体験のお祭り「すながわジャリボリー」(2010~2019年)といった地域活性の取り組みを推進。今回オープンしたみんなの工場は、砂川市の活性化を目的に、市民と子どもたちが主役となって未来へとつなげるための「みんなのすながわプロジェクト」の一環として2021年6月に始動しました。大きな施設が建つことに対し、当初は地域住民からの厳しい声もあったと社長の福永敬弘氏は言います。「地域の方々の声を一つひとつ拾い上げて地道に取り組みました。これで終わりではなくこれからがスタートです。皆さまに喜んでいただける施設へとまだまだ成長し続けていきます」。「グランドオープン」とは言わず、常に市民やスタッフからの意見を吸収してより良い形にアップデートしていくそう。
みんなの工場限定のスタッフジャケット
施設のメインとなる工場は、「マーケティングに捉われず、自分たちが本当に欲しいものだけを作る」というシロの理念に欠かせない研究開発室をはじめ、素材処理室や調合室、充填室、梱包室の5つの部屋で構成。ガラス張りのオープンなデザインで、子どもたちがものづくりの現場を楽しみながら見学できるようになっています。この「工場を開く」設計は、アリイイリエ・アーキテクツが手がけたもので、プロジェクト始動時から何度も議論を重ねて完成したと言います。
研究開発室
キッズスペースは素材処理室の前にジャングルネットを張り、天井部分まで登れるような設計。天井の一部には素材処理室とつなげた空気孔があり、製造途中の素材の香りがほのかに広がります。また、片方の壁はチョークで自由に絵を描ける巨大な黒板を設置。子どもたちの創造性や行動力を掻き立てるような仕掛けで飽きさせません。
充填室と包装室の手前にはラウンジとライブラリーを用意。ライブラリーの本棚には同社のスタッフが選書した約1300冊の本が並び、一部の作品は選者のコメント付きで紹介しています。本棚の前には階段型のベンチがあり、ゆったりと読書できる空間に。また、シロの前身である、「ローレル(LAUREL)」時代のアーカイヴも展示し、創業当時から自然の素材を生かした商品を手がけてきたことがたどれます。
ラウンジ(通常は木製のテーブルのみ設置)
ローレル時代の製品の展示
地元食材を生かした料理をピンネシリの山々の絶景とともに
カフェスペース「SHIRO CAFE」では、札幌市のイタリアンレストラン「TAKAO」の高尾僚将シェフが協力。生産者を直接訪ねて見つけた自然素材や、シロの製品に使われている素材を使用し、素材の美味しさを引き出すメニューが提供されます。窯で焼き上げるピザや、パスタ、パンケーキなど、季節の旬の食材を使った料理を大きな窓から望むピンネシリの山々の景色を眺めながら。
ショップは限定商品発売 オリジナルの香りが作れるブレンダーラボも
ショップにはシロの製品が勢揃い。スキンケアに使っている素材や加工品を厳選した、食のセレクト「SHIRO LIFE」もラインナップ。同店限定のフレグランス「フルーツブーケ」もあり、オードパルファン(税込4180円)、ヘアバーム(同3410円)、フレグランスディフューザー リキッド(同5720円)が販売されています。新しいスタートを祝うような華やかでポジティブなムードの香りで、シロでは初となる鮮やかなイエローのボトルデザインを採用したのも特徴です。
ショップ中央には自分だけの香りが作れるブレンダーラボを併設。「サボン」や「ホワイト リリー」などシロを代表する6つの香りと、季節限定の「ポピー」と「ヴァーベナ」の2つの香りから、容量に応じて好きな香りを数種類選びます。どの香りを主役にしたいかによって香料の量をブレンド。アルコールを加えてフタを締め、ラベルを貼ったら完成です。
ブレンダーラボでの香りづくりのシート
現在と未来の子どもたちのことを考え抜いたみんなの工場では、人と環境に配慮し、森、水、食の観点から循環型の施設を目指します。施設の外壁はすべて間伐材で、床には廃材木材を活用。料理の際の火にも間伐材の薪を使っています。木を積極的に活用することで林業従事者の雇用機会の創出にも貢献。カフェでの食材は道内の材料にこだわり、コンポストで生ゴミを堆肥に再利用。化粧品の製造過程で生じた工場排水は浄化してトイレ用水として使い、カフェの排水と合流させた後に再度浄化します。さらに、浄化池で微生物などの働きで排水をきれいにしてから石狩川に流す仕組みも導入しています。
シロが100年後、200年後の未来へと残す工場への思い
シロ代表取締役会長の今井浩恵氏はオープニングレセプションで、「私たちシロが100年後の未来に残せるもの、残したいものは何かを考えてたどり着いたのは、モノを作る風景でした。それが、100年後、200年後の未来にシロが自信を持って残せるものだと確信しています。私たちがモノを作る景色を残し、工場を開くことで、それが子どもたちの原体験となって10年後、20年後のものづくりへとつながっていく。工場を訪れた大人たちも何かの気づきを持ち帰っていただき、結果的により良い社会になっていく。そんなことを願って、ここまでオープンにした工場ができました」と思いを語りました。
続けて、「この施設は皆さまがいなければ始まりもしなかったし、たくさんのご意見、ご協力がなければ今日まで来ることはできませんでした」と涙ぐみながら感謝を述べた。今後については、「みんなの工場はこれで完成ではありません。ここを拠点に、砂川市や北海道をさらに盛り上げるプロジェクトをおこしたいと考えています。さらに言うと、日本各地で地域復興に奮闘している方々とコミュニケーションをとって、モノづくりのすばらしさを伝えていきたいです」とコメントしました。
ADVERTISING
RELATED ARTICLE
関連記事
READ ALSO
あわせて読みたい
RANKING TOP 10
アクセスランキング
銀行やメディアとのもたれ合いが元凶? 鹿児島「山形屋」再生計画が苦境