コロナ禍は売上よりもキャッシュ確保
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―2021年3月期の売上高は851億円。前年比では24.2%減 となりました。
正直、売り上げよりもいかにキャッシュを確保するかという意識の方が強かったですね。次の成長に進むためにいかにキャッシュを確保して次につなげられるか、ということを常に念頭に置いていました。
―カテゴリー別の売上構成比は?
アパレルが50%、飲食、生活雑貨、服飾雑貨がそれぞれ18%ずつくらいで、この比率はコロナ以前から同様です。
―仕入れ消化率についてはいかがですか?
もちろんブランドによって異なるんですけど、プロパーでの消化率はざっくり7割強、成績の良いところは消化率8割以上を出してます。SDGs的な観点から、ブランドすべてにおいてプロパー消化率を上げて廃棄を少なくしていくことは、小売をやっている以上、実現していくことは大事だと考えていますね。
―秋冬商戦の進捗は?
10月〜12月は想定よりも良かったです。アパレル関係、服飾雑貨の「アガット(agete)」等含めたジュエリー関係も好調でしたし、飲食も2年前の実績には戻っていないですが、想定以上の売り上げがありましたね。この3ヶ月は収益面で非常に大きなインパクトがある月なので、上期のダメージを補うことができました。
―今期の着地の見通しは?
具体的な数字は公表していないのですが、感覚値で言うと上期は緊急事態宣言とまん延防止等重点措置のいずれかが必ず出ている状況でしたから、非常に苦戦しました。そして今またローラーコースターのように第6波がやってきて......(笑)。第4四半期は多少厳しくなるのではと捉えています。
創業50周年 好調のアコメヤでは新体制に移行
―2022年は創業50周年を迎えますね。
この50年で、創業者の鈴木(陸三氏)の「半歩先のライフスタイルを提案していきたい」というミッションを実現しようとさまざまな切り口でアプローチをかけていきました。その過程では海外のブランドと提携したり、1度上場したり、上場をやめたり、そういう歴史はあるものの、これまでやってきたこと、これからやらなくちゃいけないことの根幹的な部分は変わらないんだろうなと。
―2022年は「ウィズコロナ」「アフターコロナ」どちらの想定で事業に取り組んでいきますか?
希望はアフターコロナですが、残念ながらウィズコロナが前提になるでしょうね。インバウンドの回復も2023年か24年まではかかると思いますし。とはいえ、臨機応変に対応できる体制を準備しておくつもりです。
―今年は何に重点を置きますか?
サステナビリティ、DX、新規事業の3つですね。まずはSDGsやサステナビリティに関しての知識の情報共有を強化します。一緒に働く仲間たちの理解度を上げ、最終的に各事業会社やブランドで目標を明確に設定していこうと思います。DXではただEC比率を伸ばすということではなく、店舗業務の効率化であったり、データ活用による販促であったり、それぞれのブランドで狙いが異なるのでそこを整理していきます。新規事業に関しては、これまで顧客主軸のビジネスからまた違った分野で“半歩先”を提案できないか、といったことも考えています。
―これからのライフスタイルを見据えて、ゴルフやキャンプなど新しい領域に挑戦する企業も増えています。
我々の場合は「いま流行っているから」という理由ではなく、ブランド独自の世界観がきちんとあって、我々が共感できるかどうかが大事です。シェイク シャックもハンバーガーブームだから展開を始めたわけではありません。あのハンバーガーを自分が美味しいと思った。それだけではなく店舗デザインやサービスも良くて、それを日本の皆さんに味わってもらって実際に価値として認められるという可能性を感じたから手を組むことを決めたんですよ。海外のブランドだけではなく、「アコメヤ トウキョウ(AKOMEYA TOKYO)」や「アルティーダ ウード(ARTIDA OUD)」といった自社ブランドの立ち上げにおいても同様の考えです。
―市場自体の成長性はあまり意識していないんですね。
マクロ的に見た時に成長の余地がない市場があったとしても、我々がそのマーケットの中でどれくらいを目指していくかとい指標を持つことが重要。我々が持つブランドは、かつて手掛けていたスターバックスのような規模ではないですから、30〜50億円規模であればマーケット自体のポテンシャルというよりもブランド自体のポテンシャルで十分な場合もありますので。
―サザビーリーグでも創業初期から展開してきたバッグブランド「サザビー」と雑貨ブランド「コクーニスト」をコロナ禍に終了。今後もブランドの淘汰が続きそうですが。
我々も各ブランド事業で常に見直しをかけていて、必要性や差別化、成長性などいろんな角度から撤退判断をしています。ですから、撤退した2ブランドはコロナだけが終了の理由ではありません。
―ブランドが「生き残る」ために必要なことは?
商品だけではなく、店舗空間や販売促進など細部にわたって、そのブランドらしさを表現し、磨き続けることでしょうね。これだけブランドが溢れるほどある今、ブランドの存在自体がその事業を説明できるような状態でないと差別化できなくなってきていますから。
―出店についてはどのように考えていますか?
ブランドによって異なりますね。一つずつ慎重に検討させていただいている状況です。
―アコメヤ トウキョウは今年から新体制に移行します。その経緯は?
今年4月1日付で丸の内キャピタルに参加いただいて一緒に事業を展開していくという形になりました。正直、我々は食物販の事業領域に関してはあまり得意分野ではなかったものの、想定以上にお客さまからの支持があるんです。ブランドのポテンシャルはまだあるけれども、ある程度の規模に達しないと成立しないビジネスモデルですから、それだけの資本が必要になる。丸の内キャピタルに打診したところ我々の考えに賛同いただけて、増資を受けることになりました。
※新体制の概要
アコメヤ トウキョウ事業を新会社AKOMEYA TOKYOに4月1日付で継承予定。出資比率は丸の内キャピタルが51%、サザビーリーグが49%。代表はサザビーリーグ執行役員の山本浩丈氏が務める。
―アコメヤ トウキョウは好調なんですね。
売上高は開示していないんですが順調です。若干値が張ったとしても、美味しいものや身体にいいものを選びたいというニーズが高まっていると思います。
―丸の内キャピタル傘下に事業が移管されましたが、事業内容で変わることはありますか?
この約3ヶ月間ほど、お互いに時間を使って方向性について議論を重ねてきましたが、やることは何も変わりません。
―角田社長は今どんな人材を求めていますか?
僕が定期的にお願いさせていただいているのが、プロアクティブであってほしいということ。指示を待つのではなく、仕事でもプライベートでもいろんなことに興味を持って何かを達成しようとアクションに起こす人と仕事がしたいですね。
―この50年でライフスタイルが大きく変化しましたが、「今の半歩先」とは?
それは内緒です(笑)。「サザビーリーグっていつも新しいこと提案しているよね」と皆さんから言っていただけていますが、それがブランディングだと僕は思っていますから、それを10年後も20年後も同様に感じてもらえる会社でありたいですね。
(聞き手:伊藤真帆、福崎明子)
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