サンローラン 2025年ウィンターメンズコレクション
Image by: SAINT LAURENT
約1年前の2024年ウィンターメンズコレクションでは、創業者イヴ・サンローラン(Yves Saint-Laurent)自身の姿を投影したテーラードスタイルを打ち出した、アンソニー・ヴァカレロ(Anthony Vaccarello)による「サンローラン(SAINT LAURENT)」。続く2025年春夏はルックブック形式での発表だったが、今回の2025年ウィンターコレクションでランウェイにカムバックした。
コレクションはパリ・メンズ・ファッション・ウィークではなく、パリ・オートクチュール・ウィーク中のオフスケジュールとして発表された。会場は、サンローランの親会社であるケリングの創業者フランソワ・ピノー(François Pinault)が設立した私設美術館「ブルス・ドゥ・コメルス(Bourse de Commerce)」。2024年秋冬コレクションでも同じ会場が使われたが、今回は年季を感じさせる寄木細工の床が敷かれ、中央には巨大なクリスタルのシャンデリアが鎮座し、暗い空間を煌々と照らしていた。このセットデザインは、1975年から2001年にイヴ・サンローランがオートクチュール・コレクションの発表に使用していたインターコンチネンタルホテルのボールルームを着想源としているそうだ。
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ここ数シーズン、アンソニーが追求してきたダンディズムは、今回のコレクションでも継続している。端正で非の打ちどころのないテーラーリングは、低いゴージライン、控えめなパワーショルダー、ボクシーなシルエットを持つ。首元はネクタイでしっかりと締め上げられ、モデルはトラウザーズのポケットに両手を入れて歩く。そしてルックに力強さを加えているのは、レザーのニーハイブーツだ。完璧なスーツと合わせられるこの意外な組み合わせは、今回アンソニーが執着した二元性の象徴でもある。
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テーラリングには、クレープジョーゼットやサテンなどウィメンズでよく見る流動性のある生地が使われた前回に比べ、よりマニッシュな素材が使用されている。レジメンタルタイ、ガンクラブチェックのオーバーコート、タータンチェックのジャケット、くすんだ色合いのニットウエアなど、英国やスコットランドのスタイルへの言及も見られた。
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スーツの上に羽織るレザージャケットは、先シーズンのウィメンズコレクションと呼応する。レザーの使用はフェティッシュなムードを醸し出しているが、インスピレーションの一つとして挙げられていたニューヨークの写真家 ロバート・メイプルソープ(Robert Mapplethorpe)に関係しているのだろう。ショー後半に登場した非対称なフェザーは、それまでシンメトリーで構成されていたコレクションに、一筋の揺らぎを生み出した。
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コレクションは色気に満ちていたが、それが肌の露出やフェミニンな素材使いによって達成されたのではないことが、今回の大きなポイントだろう。そしてその色気は、成熟ではなく、若さからくる色気だ。厳格で堂々としたマスキュリニティは、若さゆえの一種の危うさも帯びており、これもまた二元性の魅力となっている。バリエーションという点では単調なコレクションだったが、しつこいほどに要素を反復することで、より強いメッセージを発していた。今後のサンローランが進む道が、より一貫した形で提示された一夜だった。
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