ラグタグ原宿店
Image by: ラグタグ
コロナ禍での失速があったものの、その後円安などを背景に伸び続けているインバウンド消費。2024年3月には三越伊勢丹ホールディングスが、国内百貨店のインバウンド売上高が1000億円を突破したことを発表するなど、ファッション消費にも強い影響を与えている。
日本政府観光局(JNTO)が2024年9月18日に発表した訪日外客数の国別ランキングは韓国を筆頭に、中国、台湾、香港、アメリカ、ベトナム、オーストラリア、カナダ、フィリピン、タイがトップテン。以下イタリア、フランス、イギリス、シンガポールが続いている。
近隣の東アジア諸国を筆頭に、欧米、東南アジアの国々が中心だが、これだけ出身国が違う人々のファッションの好みを「インバウンド客」という言葉で一括りにできるとは考えにくい。それぞれの国によって、人気のファッションブランドや、好みのデザインの傾向があるのではないだろうか。
今回はデザイナーズやラグジュアリーなど、様々なブランド古着を扱う「ラグタグ(RAGTAG)」の売り上げデータから、インバウンド客の国別の売れ筋ブランドや人気アイテム、平均客単価をピックアップ。また、ラグタグ各店に聞いた、インバウンド客との接客を通じて得られた国別のファッションの好みも紹介する。
目次
ADVERTISING
インバウンド客の全体的な傾向
まず最初に、ラグタグにおけるインバウンド客の全体的な傾向について触れておきたい。ラグタグの関西エリアを統括する吉岡龍介氏によると、インバウンド客のファッションの好みは、出身国によっておおまかに以下の3つにカテゴライズできるという。
1. 中国、香港、台湾
ラグジュアリーブランドのなかでもトレンド性の高いブランドが人気で、最近はブランドのロゴが入ったキャッチーなデザインのアイテムよりも、質が高いものが好まれる傾向があるといい、具体的なブランドとしてエルメスを挙げている。
2. タイ、シンガポール、フィリピン
中国や香港、台湾と同様にラグジュアリーブランドが人気だが、同3ヶ国とは違ってわかりやすいロゴが入ったアイテムや、派手なデザインのものが支持されており、ルイ・ヴィトンやフェンディのモノグラムのアイテムは古い商品でもよく売れるという。
3. アメリカ、イギリス、オーストラリア
ラルフ ローレンの古着のシャツなどのカジュアルなアイテムや、モードブランドのデザインアイテムが人気で、綺麗な色目、シルエットを重視する傾向があるという。
国別人気ブランド&アイテムランキング
以下、訪日客数が多い国から順に、人気のブランドとアイテムのランキング、平均客単価、ファッションの好みの特徴を列挙する。
※集計対象期間:2023年4月〜2024年1月
※ベトナムはデータが得られなかったため除外
※5000円未満の商品は免税の対象にならないためランキングには反映されていない
韓国
人気ブランド
- グッチ
- ディオール
- コム デ ギャルソン
- オーラリー
- エンフォルド
- シュプリーム
- マックスマーラ
人気アイテム
- ブルゾン
- ジャケット
- ニット
- コート
- 靴
平均客単価
約5万円
好みの特徴
- Y2K、テック系、ビッグシルエットなどのトレンドのスタイル
- ディーゼルに代表される今人気のブランド
中国
人気ブランド
- ジル サンダー
- アンダーカバー
- ジェイ ダブリュー アンダーソン
- キス
- スノーピーク
- アラン ミクリ
人気アイテム
- パンツ
- Tシャツ
- 靴
- アクセサリー
平均客単価
約4万円
好みの特徴
- ルイ・ヴィトン、エルメス、グッチなどの人気ラグジュアリーブランドのロゴ入りアイテムや派手なデザインのウェア
台湾
人気ブランド
- ジョルジオ アルマーニ
- ランバン
- グッチ
- ロエベ
- メゾン マルジェラ
- グレンフェル
人気アイテム
- シャツ
- 靴
- スカート
- Tシャツ
- ネクタイ
平均客単価
約4万円
好みの特徴
- 中国とほぼ同じで、人気ラグジュアリーブランドのロゴ入りアイテムや派手なデザインのウェア
香港
人気ブランド
- サカイ
- シャネル
- ゴヤール
- ディオール
- セリーヌ
- コム デ ギャルソン
- ソフネット
- ホワイトマウンテニアリング
人気アイテム
- ブルゾン
- ニット
- シャツ
- バッグ
平均客単価
約3万5000円
好みの特徴
- コム デ ギャルソン、サカイなどのデザイン性が高いブランド
- ソフネット、ダブルタップス、ネイバーフッド、フラグメントデザインなどの裏原系ブランド(メンズ)
- モンクレールのアウター(ウィメンズ)
アメリカ
人気ブランド
- グッチ
- エルメス
- コム デ ギャルソン
- メゾン マルジェラ
- プラダ
- ルイ・ヴィトン
- シャネル
- ボッテガ・ヴェネタ
人気アイテム
- 靴
- コート
- バッグ
- パンツ
- ニット
- ブルゾン
平均客単価
約4万円
好みの特徴
- ショートパンツやタンクトップなどの、露出多めのデザインやタイトなシルエットで比較的安価なカジュアルアイテム
- サルエルパンツのようなモードなデザインのアイテム
フィリピン
人気ブランド
- エルメス
- サンローラン
- コム デ ギャルソン
- セオリー
- アクネ ストゥディオズ
- バレンシアガ
- ドリス ヴァン ノッテン
人気アイテム
- パンツ
- シャツ
- 靴
- ジャケット
- ニット
平均客単価
約3万円
好みの特徴
- フェンディ、ルイ・ヴィトン、コーチ、グッチなどブランドバッグ全般
- ブランドがわかりやすいデザイン
タイ
人気ブランド
- シャネル
- アクネ ストゥディオズ
- ポール・スミス
- シュプリーム
- プラダ
人気アイテム
- パンツ
- シャツ
- Tシャツ
- アクセサリー
- 靴
平均客単価
約3万円
好みの特徴
- 柄ものや派手なカラーのアイテム
- シュプリーム、グッチ、ロエベなどの人気ブランドのロゴ入りアイテム
オーストラリア
人気ブランド
- マルニ
- ディオール
- ルイ・ヴィトン
- コム デ ギャルソン
- マーガレット・ハウエル
- シュプリーム
- ロエベ
- アー・ペー・セー
- グッチ
- ヨウジヤマモト
人気アイテム
- 靴
- ニット
- バッグ
- Tシャツ
- ブルゾン
- シャツ
- パンツ
平均客単価
約3万円
好みの特徴
- Y2Kやテック系、ワイドパンツなどの日本でも人気のスタイルやアイテム
- ラルフ ローレンのシャツも単価は低いが売れ筋の一つに
カナダ
人気ブランド
- サンローラン
- コム デ ギャルソン
- グッチ
- ユリウス
- ルイ・ヴィトン
- クロエ
- ヨウジヤマモト
- ザ・ノース・フェイス
人気アイテム
- 靴
- ブルゾン
- ジャケット
- コート
- ニット
- パンツ
- シャツ
平均客単価
約4万円
好みの特徴
未回答
フランス
人気ブランド
- ヨウジヤマモト
- コム デ ギャルソン
- ザ・ノース・フェイス
- アニエスベー
- ジュリアン デイヴィッド
- マーガレット・ハウエル
人気アイテム
- ジャケット
- Tシャツ
- 靴
- ブルゾン
- シャツ
- ニット
平均客単価
約2万5000円
好みの特徴
- シンプルでベーシックなデザイン
- スタイリッシュなシルエット
- ラグジュアリーブランドの靴
イギリス
人気ブランド
- ゴヤール
- サンローラン
- コム デ ギャルソン
- マーガレット・ハウエル
- オーラリー
- バレンシアガ
人気アイテム
- コート
- バッグ
- ブルゾン
- パンツ
- ニット
平均客単価
約4万5000円
好みの特徴
- トム・フォード、ブルネロ・クチネリなどの上質なブランド
- コム デ ギャルソン、メゾン マルジェラなどのモード系ブランド
- デザイン性は高め、サイズはジャスト
シンガポール
人気ブランド
- コム デ ギャルソン
- ジュンヤ ワタナベ
- ミキモト
- ショーメ
- フォーティファイブ・アール
- ドリス ヴァン ノッテン
人気アイテム
- ニット
- シャツ
- ワンピース
- Tシャツ
- アクセサリー
- コート
平均客単価
約3万円
好みの特徴
未回答
総合ランキング
今回ピックアップした12ヶ国の中で、人気ブランドと人気アイテムの総合ランキングのトップ5と、国順の平均客単価を算出した。
人気ブランドトップ5
- コム デ ギャルソン:9ヶ国
- グッチ:5ヶ国
- サンローラン、ルイ・ヴィトン、シャネル:3ヶ国
日本を代表するデザイナーズブランド、コム デ ギャルソンが圧倒的な支持を集めた。2位以下はラグジュアリーブランドが並んだが、その中でもグッチは頭ひとつ抜けた結果となった。
人気アイテムトップ5
- 靴:9ヶ国
- ニット:8ヶ国
- ブルゾン、シャツ、パンツ:7ヶ国
最も人気となったアイテムは靴。サイズ選びがシビアで基本的に試着が必須のアイテムだけに、意外な結果となった。
平均客単価ランキング
- 韓国:5万円
- イギリス:4万5000円
- 中国、台湾、アメリカ、カナダ:4万円
- 香港:3万5000円
- フィリピン、タイ、オーストラリア:3万円
- フランス:2万5000円
アジア諸国の中でも比較的ファッション感度が高いとされる韓国がトップ。2位のイギリスは最も人気を集めたアイテムであるコートが単価の高さに反映されたと見られる。
まとめ
今回はブランドにフォーカスしたランキングとなったが、吉岡氏によると、インドやインドネシア、タイなどの若者には、買いやすい価格のセレクトショップのオリジナルアイテムが人気だそうだ。また、日本人の間で人気が高いアメリカ製のヴィンテージ古着に興味を持っているインバウンド客はほとんどおらず、「レギュラー」と呼ばれる比較的低価格な古着はヨーロッパ圏の客によく売れるという。なお、現在の制度では5000円以上の商品が免税の対象となるため、低価格商品が多いブランドは今回のランキングに反映されづらくなっている。
ピックアップした12ヶ国のなかで、9ヶ国のランキングにコム デ ギャルソンが登場していることも特筆すべきだろう。その独自のデザインや世界観が支持されているだけではなく、ギャルソンのアイテムは日本製のものが中心で、海外では割高になることが多いので、日本で古着を購入できるのはインバウンド客からするとかなりお買い得感が高いことが人気の理由だと思われる。
ランキングに現れているように、出身国によってブランドやデザインの好みは大きく異なっている。それぞれの好みにマッチした提案ができれば、インバウンドの旺盛な購買力がより活きるのではないだろうか。
ADVERTISING
RELATED ARTICLE
関連記事
READ ALSO
あわせて読みたい
RANKING TOP 10
アクセスランキング
sacai Men's 2025 SS & Women's 2025 Spring Collection
【2024年下半期占い】12星座別「日曜日22時占い」特別編