男女のジーンズのポケットを比較してみたら
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では実際に、女性のジーンズのポケットは、そんなに「使えない」のだろうか。NY発のデジタルパブリケーション『The Pudding』のビジュアルエッセイ「かつて賢人がポケットは女性に許可されていないと言った」(2018年)に興味深いデータが掲載されている。アメリカで人気の20のデニムブランドを測定した結果だ。32インチのスキニー/ストレートの計80本のデータを集め、男女のポケットサイズを比較している。
「アバクロンビー&フィッチ(Abercrombie & Fitch)」や「カルバン・クライン(Calvin Klein)」などのデニムを測定すると、平均して女性のジーンズのポケットは男性のそれよりも48%短く、6.5%狭いことが分かった。さらに同記事では、男女別のポケットに様々な日用品が収まるかどうかも検証している。iPhone Xの場合、100%の男性のポケットに収まるが、40%の女性のポケットしか収めることができない。平均的な女性の手がポケットに収まる確率もたった10%だった。
ファッションの歴史を紐解いてみると…?
『The Pudding』では、中世の洋服について男性も女性もポケットがあったことに触れている。それは衣服の下に隠された、装飾付きのウエストポーチのような形状だった。17世紀に入っても、女性はその中に香水や小さなクシなどを入れていたと伝えられている。それが変化したのは18世紀の終わり頃。女性服のウエストの位置が上がり、シルエットがスリムに絞られたことで、ポケットが省略されていったようだ。
今回の「女性服のポケット問題」で浮かび上がったのは、これまでの女性服に対する固定観念だ。「女性服はあまり機能性を重視しない」「素材が繊細だからポケットをつけるのが困難」「シルエットへの影響を考えて、ポケットを省略しがち」……。そういった認識により、実際の女性たちの需要が軽視されていたようにも捉えられる。
しかし、「シャネル(CHANEL)」の創設者ガブリエル・シャネルが1950年代に発表したツイードジャケットはポケットをはじめとする実用的な工夫が施され、活動的な女性たちに支持されてきた。また、8月5日に惜しまれながらもこの世を去ったデザイナーの三宅一生も着やすさにこだわり、ほとんどの服にポケットをつけている。永遠の課題とも言えるデザインと機能性の両立に、真っ向から取り組んでいるデザイナーたちがいるのもまた事実だ。
また、「エッツィー(Etsy)」のようにポケットの有無をフィルタリングできるECサイトも増えてきている。「女性服のポケット問題」は国内だけに限らず、世界中の女性たちの悩み。より快適な衣服について、男女問わず見直されるきっかけとなりそうだ。
■The Pudding:Someone clever once said Women were not allowed POCKETS
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